アスリートと扁平足 今回はアスリートを悩ませる扁平足(へんぺいそく)障害について西村氏が分かりやすく解説します。

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 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 先日は大雪が降り、グランドがまっ白になったところも多かったのではないでしょうか。雪の降る地方の学校であればさほど珍しいものではありませんが、雪になれていない都会の選手たちはビックリしたことと思います。まだまだ寒さ厳しい季節ですが、春のシーズンに向けてしっかりと練習を積んでいきましょう。さて今回はアスリートを悩ませる扁平足(へんぺいそく)障害についてお話をしたいと思います。

足底にある3つのアーチ

【扁平足とは】 足には縦アーチ(親指側、小指側)と横アーチという3つのアーチが存在し、バネのスプリングのように荷重ストレスを和らげる構造を持っています。アーチがあるおかげで足裏には土踏まずとよばれるいわゆる“地面につかない部分”が存在するのですが、これは歩行やランニング、ジャンプなどの着地時にクッションのような役割を果たします。またつま先が地面を蹴るときにはバランス良く重心を移動させるバネの役割もあります。

 ところがこのアーチを構成する靱帯や腱、筋肉などがうまく機能を果たさなくなると、足底のアーチが低下して土踏まずが消失する扁平足とよばれる状態になります。扁平足そのものがケガというわけではありませんが、こうした状態でスポーツを続けると足裏から足首、膝、腰などにかけて大きな荷重ストレスがかかり、痛みなどを伴うことがあります。長年スポーツを続けている人の中には、足底を支える筋肉群が発達し、見た目には扁平足のように土踏まずが存在しないという「疑似扁平足」とよばれる状態になることもあります。

【扁平足と上手に付き合う】 基本的には痛みや違和感がなければあまり気にする必要はありませんが、扁平足を持つ足は疲労が蓄積しやすいと言われています。運動量が多くなったときや、アスファルトや人工芝など路面の硬いところでランニングなどを繰り返したとき、足底周辺部の筋肉は疲労し柔軟性が低下します。足や膝、腰など荷重ストレスが直接かかる関節やその周辺部に大きな負担がかかりやすいため、運動前後のストレッチなどは入念に行うようにしましょう。また使用する靴についても足底を必ずチェックして、摩耗が激しい場合はクッション性のよい靴に買い換えるなど、ケガの予防に努めましょう。

【扁平足を改善するエクササイズ】 扁平足のままプレーを続けていると荷重ストレスによるケガのリスクが高まるため、足底のアーチを強化するためのエクササイズなども並行して行うようにしましょう。

タオルギャザートレーニングで足底の筋肉を鍛える

●タオルギャザートレーニング タオルを足指でたくし上げるトレーニングです。手と同じように足指を一本一本独立させ、足底の筋肉を鍛える効果があります。慣れてきたらタオルの上に本など少し重みのあるものを載せると、より負荷の強いトレーニングになります。左右とも3回〜5回程度繰り返すようにしましょう。

●足指ジャンケン 足指を使ってグー・チョキ・パーといった形を自由自在に出来るように動かします。

●つま先立ち(カーフレイズ) かかとを上げ下げしてふくらはぎの筋肉を鍛えます。柔軟性を改善するとともに足底の筋力強化にもつながります。平地でもトレーニングは出来ますが、階段などの段差をうまく利用するとかかとが地面の高さよりも低くなり、よりふくらはぎのストレッチ効果が高くなります。

●青竹踏み 100円均一ショップなどにある青竹踏みを使って、直接足底の筋肉をストレッチすることも疲労を取り除くのに効果的です。

 この他にも普段履いている靴下を5本指ソックスにすると、足の一本一本が独立するのでより足指を意識することが出来ます。アーチがなかなか改善しないという場合は、専門家などに相談しインソール(中敷き)を準備することも検討すると良いでしょう。たかが扁平足、されど扁平足。扁平足を改善することは地面をつかんで力強くプレーする把持力(はじりょく)を鍛えることにもつながります。扁平足で悩んでいる選手の皆さんはできることから試してみてくださいね。

【アスリートと扁平足】●足底には3つのアーチが存在し、荷重ストレスを和らげている●足底にある土踏まずが消失した状態を扁平足という●扁平足を持つ足は疲労が蓄積しやすい●扁平足障害予防のためにストレッチは欠かせない●足底を鍛えるエクササイズでアーチを強化する●扁平足の改善は地面をつかむ把持力の強化につながる

 (文=西村 典子)

次回、第87回公開は2月28日を予定しております。