1年生大会の4番・主将を務める済美・大西勇気捕手

四国地区最後の高校公式戦で煌めいた「ダイヤの原石たち」

 毎年11月23日、愛媛県松山市は野球一色に染まる。「愛媛県野球フェスティバル」が開催されているからだ。

 このフェスティバルは愛媛県野球連盟・四国地区大学野球連盟・愛媛県高等学校野球連盟・愛媛県中学校体育連盟・愛媛県軟式野球連盟が加盟する「愛媛県野球協議会」が主催。よって、その内容はバラエティに富んでいる。

 まずは社会人野球クラブチーム・松山フェニックスと愛媛大学野球部・松山大学野球部が小学生たちを指導する「少年野球教室」。中学2年生以下の地区軟式野球選抜チーム同士が対戦する「愛媛県中学野球交流戦」。小学5年生以下の学童地区選抜チーム同士が対戦する「愛媛県学童野球交流戦」。そして松山フェニックスと愛媛県大学野球選抜チームが激突する「愛媛県社会人・大学野球交流戦」(今年度は中止)。社会人から小学校まで垣根を超えた催しが坊っちゃんスタジアムとマドンナスタジアムで繰り広げられる。

 さらに昨年からは夏に開催される全日本中学野球練習県大会(ジャイアンツカップ)の出場選手を中心に構成される15U侍ジャパン、愛媛県松山市内の中学硬式野球選抜である松山市選抜に、15Uチャイニーズ・タイペイ代表、15U韓国代表の4チームが総当たりで頂点を争う「15Uアジアチャレンジマッチ」も同日から3日間開催されるようになり、「野球の街」松山は晩秋まで野球を思う存分楽しめるようになった。

 さて、そんな「愛媛県野球フェスティバル2013」の一環として開催されているのが四国地区における2013年公式戦最終戦ともなる「愛媛県高等学校野球連盟1年生交流戦」である。

  フェスティバル開催地の中予地区1年生大会優勝校と東予地区・南予地区同大会優勝校を交互に招いての交流戦。今年は決勝戦では松山商を2対1で下し8年ぶり3回目の優勝を果たした中予地区代表校・済美と、決勝戦では宇和島東に9対7と競り勝ち、1年生わずか10名で5年ぶり2回目の優勝を成し遂げた南宇和との間で開催された(東予地区は西条が5年ぶり2回目の優勝)。

強肩と俊足が光った南宇和1番・畑野洋季中堅手(1年)

 試合は済美のペースで進む。1回裏・先頭の濱岡 昂中堅手(右投右打・167センチ67キロ・盈進中<広島>卒業)が中学時代200m走24秒36の瞬足を駆りショート内野安打で出塁すると、一死二塁から夏の甲子園「16番」で唯一ベンチ入りを果たした3番・福島 弘樹二塁手(右投左打・169センチ61キロ・愛媛松山ボーイズ出身)がライトオーバー三塁打を放ち先制。続く今大会では主将の大西勇気捕手(右投左打・176センチ69キロ・愛媛松山ボーイズ出身)も二遊間へのタイムリー。3回には安打と盗塁で二塁に進んだ福島を二死から5番・兵頭祐貴左翼手(右投右打・179センチ77キロ・池田シニア<大阪府>出身)がレフト前タイムリーで返し、7回には打者12人を送り込み一挙8得点。

 1年生大会で指揮を執る田坂遼馬コーチは「いいところも悪いところもあった」と端的に試合を振り返った。が、丁寧に低めを付こうと試みる南宇和先発・嶋野来樹(右投右打・御荘中出身)に対し、徐々に振り幅を合わせ終盤コンパクトに振り抜き攻略する打線や、8回で7安打を浴びながら無失点に抑えた上田崇央(右投右打・185センチ68キロ・久谷中出身)や最終回を締めた中島義峰(右投右打・175センチ72キロ・久米中出身)が何事にも動ぜず淡々と投じる様は、先輩たちが受け継いできた「勝者のメンタリティ」が1年生たちにも浸透していることがうかがえるものだ。

 一方、結果は大敗に終わった南宇和だが、渡部宏文監督が「ダイヤの原石」と評したタレントたちは輝きを十分に放った。1番・畑野洋季中堅手(右投右打・津島中出身)は強肩と三塁で身体能力の高さを見せ付け、4番・小田原将之遊撃手(右投左打・御荘中出身)も俊足と強肩で済美・田坂コーチからも「いい選手ですね」と高い評価を得ている。

 こうして両者にとって収穫多き一戦となった四国地区最後の公式戦。済美、南宇和をはじめ、愛媛県・四国地区の全校はこれから3月21日の春季各県大会まで、さらなるレベルアップを図っていく。

(文=寺下 友徳)