目標が一つだけでは成功できない?

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 何かに向かって「夢」や「目標」を立てる時、ほとんどの人は「お金持ちになりたい」「3年後までに結婚したい」など、一つしか決めません。
 しかし、これでは「お金持ちになったけど体を壊してしまった」「結婚できたけどお金が全くない」など、目標を達成しても幸せになれないということが出てきてしまいます。そう、目標は一方面に立てるだけではうまくいかないのです。
 世界的自己啓発プログラムの販売世界記録を持つ三好比呂己さんは、目標を多方面に複数立てることによって仕事の成功と人生の幸せを両立させているといい、著書『マンモスを獲りに行く人、ネズミ捕りを仕掛けて待つ人』(ぱる出版/刊)で、その詳細を明かしています。目標を立て、それを追いかける秘訣とは?
 ご本人にお話を伺いました。

―三好さんの著書『マンモスを獲りに行く人、ネズミ捕りを仕掛けて待つ人』について、この本はどのようないきさつで書かれたのかをまず伺えればと思います。

三好「本業はSMIという自己啓発プログラムの販売です。そのプログラムを売るにあたって、まずは自分が実践しないとダメだろうということで試しているうちに、“自分がこんなことをしてこう変わった。”というような手紙をあちこちに送るようになったんです。それが評判になりまして、それなら本として出して、世の中の人の役に立てればというのが動機ですね」

―本書には人生を幸せなものにするための、三好さんの考え方が実体験を交えて書かれています。この本で三好さんがもっとも伝えたかったことはどのようなことですか?

三好「多くの人が自分の能力を過小評価していることです。私はそのプログラムに出会うまでは、子どものころからずっとだらしなくて、グータラで、仕事もまじめにやりませんでした。なぜかというと、自分のことをそういう人間だと思っていたんですよ。“どうせ俺はダメな人間だから”と諦めていたわけです。
でも、そのプログラムで“自分でダメだと思ってしまうから実際にそうなってしまうのであって、成功したいのならばまずは自分自身が成功できると思うこと。何があってもそれを変えるな”ということを教わりました。
その考えは当時の自分には衝撃的で、すぐにその日から“自分は成功するんだ”と思うようにしたら、考え方や見るもの、行動などさまざまなところが変わっていきました。自分は驚くほどいろいろなことができるとわかったんです。
例えば、私が経営する「揚州商人」というラーメン店も今32店舗ですが、コンセプトからメニュー、内外装、運営まで、すべて私が手がけたんです。こんな力が自分にあるとは思いませんでした。」

―本書では、生き方のたとえとして「マンモスを獲りに行く人」(リスクを冒して大きな夢を追う生き方)と「ネズミ捕りを仕掛けて待つ人」(リスクが少ない代わりに得るものも小さいという生き方)の2つを挙げています。今は安定志向の人が多いということで「ネズミ捕り型」の生き方をする人が増えているといわれていますが、この風潮について何かお考えはありますか?

三好「そういった風潮を悲しいと思うこともあって、この本を出したということもいえます。私自身は「マンモス型」の生き方をしていると思っていますが、マンモス型の生き方と言っても、決して大金持ちを目指すわけではなくて、つねに大きな目標を持って生きるということです。
ここのところ景気が上向いてきているということも言われていますし、安定志向の「ネズミ捕り型」の生き方をする人が多い現状は変わっていくのかなとは思っています。
ただ、今の若い人にしても、周りの人がみんな安定志向だから、そちらの方がかっこいいということで自分もそうしているというだけで、本心はどうかというと必ずしも安定志向
ではないはずです。同じような生き方をしていると思っていた友達のうち、3人くらいが突然、会社を立ち上げ大成功などしたら、考え方が変わると思いますよ」

―常に大きな目標を目指しながら生きるという「マンモス型」の生き方ですが、本書で特徴的なのはその目標の立て方の部分です。普通は目標というと「あの車を買いたい」といったことに終始しがちですが、三好さんは目標を6つの方向に持つことを勧めています。この理由を教えていただけますか。

三好「たとえば“あの人はなぜ成功したのか”ということを考える時、みんなその人が“何をやったのか”を見るんですよ。つまり、成功の要因はとなった行動です。
でも、調べてみると、その人が“何をやったか”ではなく“どんな人だったか”が重要なんです。
どんなに能力が高くても、社会性がなかったり健康を害していたりするとうまくいきません。だからこそ「精神面の目標」「家庭生活面の目標」「社会生活面の目標」「教養面の目標」「健康面の目標」「経済面の目標」と6分野に目標を立てて、能力だけでなく人格ごと磨いていこうということです。
それと、僕も経営者なので経営者同士のつながりがあったりするのですが、よく思うのが“お金持ち=幸せ”ではないということです。事業で成功してお金は持っているけど、家庭に不和があったり、体を壊してしまったり、という人が多い。お金持ちであることがいいことかどうかは別として、金銭的に豊かでありながら、家庭面をはじめ仕事以外の部分も幸せという人は本当に少ないんです。
お金があっても、幸せを感じられないなら意味がないじゃないですか。目標をお金に関することに限らず、さまざまな方向に立てるのは、目標を達成したのに幸せになれないということになるのを避ける意味もあります」

―とはいえ、目標を複数持つことで、たとえば仕事と子どもの運動会がバッティングして「経済面の目標」と「家庭生活面の目標」が両立できないという事態もありえます。このような場合はどうすればいいのでしょうか。

三好「その時は、自分なりに優先順位をつけてやるべきです。とにかく大事なのは、どんなことがあっても一度決めた目標を変えないこと。無理だと諦めずに6分野の目標を追っていけば、年を追うごとにそこに近づいていけるはずです。
ちなみに私の長男は26歳で「揚州商人」の経営の9割を任せています。しかも彼は非常に親孝行で、親子としても最高の関係です。しかし私は彼が子供の頃、授業参観に一度も行ったことがありません。これがいいことだとは思いませんが、当時、私が考えたのは、優先順位一番は創業者の後ろ姿を彼に見せることです。学校行事は出なくても、20歳を過ぎれば必ず私が身近になると信じ、優先順位一番を仕事としたのです。」
(後編につづく)