「イラストでもあまちゃん」その2(木俣冬)

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連続テレビ小説「あまちゃん」、8月31日土曜132回の終わりのシーンが、2011年3月11日の14時過ぎ。3月12日に行われるアキ(能年玲奈)とGMT5のライブを観にユイ(橋本愛)が東京に向かおうとするところ。
しかも予告では「2011年の夏がはじまりました」とナレーションのバトンを受け取った春子(小泉今日子)が語り、たくさんの視聴者が祈るような気持ちになりました。
23週以降はどうなるの? 心臓のバクバクを抑えるためにも22週「おらとママの潮騒のメモリー」を振り返っておきましょう。

22週は展開が早く、アキの主演映画「潮騒のメモリー〜母娘の島〜」がいよいよクランクイン。鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)が私生活でも母娘のようでいようと、アキの家で暮らすことに(月曜127回)。鈴鹿の独特のペースに巻き込まれたり、初めてのキス(しかも「貪るようなキス」)をいけすかないパフォーマー(笑)に捧げることになりかけたり(火曜128回)と、紆余曲折ありながらも一ヶ月半かけてクランクアップ(木曜130回)、主題歌をアキが歌うことになってレコーディング。その場で春子(小泉今日子)と鈴鹿が過去を水に流します。そして映画も完成!(金曜131回) 2011年3月5日公開に合わせて、3月12日、アキが古巣EDOシアターでGMTのメンバーと共にライブを行うことになり、ユイにチケットを送ります(土曜132回)。

「私にとって嘘か本当かなんてどっちでもいい(中略)その代わり嘘は上手につかないとバレちゃうからね」(128回 鈴鹿ひろ美)
「向いてないけど続けるっていうのも才能よ」(130回 鈴鹿ひろ美)
「年とか関係ねえし アイドルが存在する限り追いかけるのが男でしょ」(132回 ヒビキ一郎)などなどグッとくるセリフもたくさんありました。

鈴鹿と春子と太巻(古田新太)の深い確執がついに修復したことや、鈴鹿の芝居に対する真摯な考えなど、振り返りたいことはたくさんあるのですが、ここは、あえて愉快なことに絞って振り返りたいと思います。
アキを巡る3人の男たち ミズタク、種市、前髪クネ男 についてです。

アキのファーストキスを奪いそうになる男・前髪クネ男。

アキのファーストキスの相手に伏兵登場。前髪クネ男ことTOSHIYAです。彼は「潮騒のメモリー」のアキの恋人役で登場し、たった1回の出番にも関わらず、22週の話題をかっさらいました。
前髪クネ男はアキがつけたあだ名で、まあ、このネーミングが人気の理由のひとつでしょう。
漫画キャラのような前髪。終始クネクネしている腰。勘違いしたナルシスティックな振る舞い。漢字が読めない。などなど、いいところがまるでない。人気スターの設定らしいのに。
演じているのは勝地涼。「八重の桜」では、八重の率いる鉄砲隊に参加して会津戦争を闘った山川健次郎という生真面目な好青年を演じていて、クネ男とのギャップに驚いた人も多いでしょう。
月9「SUMMER NUDE」の友だち思いで陽気な青年役は、健次郎とクネ男の間くらいの役ですね。
勝地はこれまでも宮藤官九郎作品のドラマ、映画、舞台とあらゆるジャンルに出演していて、彼の作品の中では常に愛すべきおバカキャラ担当です。
勝地は描写力の的確さがハンパなく、例えるなら、矢のように慧敏な俳優です。「あるある」感の的のど真ん中を射抜く気持ちよさが、キャラの救い用のないバカさ、気持ち悪さを救うのです。
また、昭和の日本男児顔で凛々しさあふれる顔立ちも毒消しに寄与しています。
前髪クネ男、ホントに気持ち悪い人がやったら、絶対、反感買いますから、勝地涼で大正解でした。
前髪クネ男、また出ないかなあ〜。

アキが現時点で一番好きな男性・種市先輩

アキの初めての一目惚れの相手であり、アキにとってはアイドルのような存在で、よって当然ながらアキのファーストキスの相手であるべき人物・種市(福士蒼汰)。
ところが何かとモタモタしている間に、TOSHIYAとのキスシーンの撮影日になってしまいます。
高校時代はこの上なくかっこ良かったのに、なかなかキスまでいかないというウブさを見せたかと思えば、アキのキスシーンの撮影に、寿司の差し入れを口実に訪れてアキの集中力を奪うなんてことまで。

渦巻く感情を抑えながら種市が切る寿司は「太巻」(お寿司の)って、クドカン先生、この場面のために太巻こと荒巻の名前をつけたのだとしたらすごいなあ。



その後も結局、ミズタク(松田龍平)や無頼鮨の梅頭(ピエール瀧)から「種」呼ばわりされて、からかわれてばかりで最近いいところなしの種市先輩ですが、アキのキスシーンの前に鈴鹿がアキに種市のつくった卵焼き(多分そうだと思うのですが)を食べさせる場面(火曜128回)や、ようやく板場の修行に入り、初めてのお造りをアキが食べるという場面(木曜130回)など、種市の愛情をアキが受け取っている感じがして、これぞ「キュン」な場面だと思います。
ユイの「(キスシーンの撮影が)終わったら優しくしてもらいなよ」という励ましも良かった。

そして、演技のキスシーンをなんとかカメラアングルで回避した後、ついに種市とホントのキスをするのですが、ですが! ですが! アキは「現時点で一番好きな男性に、無事ファーストキスを届けることができました」とナレーションで言うのです。現時点で、って意味深過ぎますよね。


アキのことが好きなのか? マネージャーのミズタク

目下、ミズタクこと水口琢磨(松田龍平)が大人気。
東京編から俄然、注目されて、21週でアキを抱きしめたことで沸騰しました。
念のためミズタクの説明をしますと、カリスマ芸能プロデューサー太巻の芸能プロダクション・オフィスハートフルのスカウトマンで、北三陸にユイとアキをスカウト(主にユイに注目していた)にやってきた(初登場は7週)。
琥珀に興味があると素性を偽り、勉さん(塩見三省)の弟子をしていたが、のちにバレて破門になる。東京に戻ってからはアキを売り出すために奮闘する。

マネージャーとはいえ、なぜか女子寮にひとり男なのに住み込んでいて、アキをムダにドキドキさせたことからはじまって、アキが自信をなくして北三陸に帰ると、留守電をたくさん入れた上に迎えに来たり、あんなに不義理をしていたにも関わらずやっぱり勉さんと師弟愛を結んでいたり、妙に種市にねちっこく厳しく当たったりと、クールな見た目、淡々としたセリフまわしなのに、徐々に意外な面が漏れ出していくミズタク。
ついにはアキが映画のオーディションに合格して喜びのあまり抱きしめるという感情だだ漏れ状態になってしまいます。内面を守る鎧に隙があり過ぎなところが愛らしいです。

美大出でバンドのベーシストだったという過去は少女漫画っぽい設定でくすぐりますし、太巻に対して「刑事物語」の武田鉄矢みたいにハンガーで対抗しようとするところは邦画ファンには溜まりません。

で、この水口。太巻が某プロデューサーをモデルにしているのでは? と囁かれていますが、水口にもモデルがいるのではないかと思うのです。
90年代、アイドルグループ・チェキっ娘をプロデュースしたミズタクと同じ苗字のプロデューサーです(この人も眼鏡キャラ)。
チェキっ娘は活動期間が非常に短期間でしたが00年代に再会コンサートをやっています。「あまちゃん」の今後を予想するとき、このへんの歴史的出来事も参考になるかもしれませんね。

以上、アキを巡る3人の男たちを振り返ってみましたが、
2011年以降、アキが好きな人は、アキを支えるのは誰になるのでしょうか。

アキをめぐってライバル関係のミズタクと種市。アキを演じる能年玲奈が広末涼子の再来と言われているとされている話は21週のおさらいで書きましたが、松田龍平は「恋愛寫眞」で広末涼子、福士は「スターマン・この星の恋」で広末凉子と恋人役を演じていて、因縁を感じざるを得ません。

今後の展開からの現実逃避のあまりアキの恋愛ネタを書いてしまいましたが、23週は「おら、みんなに会いでぇ!」、ただただ、北三陸の人々が心配です。
(木俣冬)

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