今回の企画展では200点を超える収蔵品がルーヴル美術館から貸し出される。

写真拡大

7月20日から9月23日まで上野の東京都美術館で開かれる「ルーヴル美術館展」の前売り券販売が4月1日から始まった。これは「地中海」をテーマに、同美術館の全8美術部門から収蔵品が選ばれ展示される企画展だ。

地中海の歴史は大陸間の交流の歴史だ。この同展では紀元前から近代までの同地域の歴史と文化の流れを順に追いながら、ルーヴル美術館が収蔵する美術品の数々を体系的に鑑賞できる。じつは、ここに本場ルーヴルでは体験できない見所が詰まっている。

パリのルーヴル美術館において、収蔵品は「絵画」「古代エジプト」「古代ギリシア・エルトリア・ローマ美術」「古代オリエント美術」「彫刻」「工芸品」「イスラム美術」「素描・版画」と8部門に分けられ展示されている。もちろん館内での展示は地域や時代を追いながら各所でまとめられているものの、展示品の数が過ぎて、一度に古代から近代までの流れを捉えようとすると疲れてしまう。

しかし今回の企画展は地域を限定し、ルーヴルの8部門をまたぐように地中海地域各年代の収蔵品が貸し出されるので、本場ルーヴルとは違うくくりで収蔵品を見られる。地中海を媒体とした芸術・文化交流の流れがより分かりやすい仕組みになっているのだ。同地域を知る上で収蔵品のいいとこ取りと言っていい。

なぜルーヴルはそれほど巨大なのだろうか。同館の歩みはあふれる美術品と拡張の歴史だ。

その発端は、現在のように広くなかったパリの街の西方を守るため、1190年に仏国王フィリップ2世によりルーヴル城が築かれたことにより始まった。時代と共に増改築が加えられ砦から宮殿の機能を備えていったルーヴルだが、ルイ14世がパリ郊外にベルサイユ宮殿を建設するとともに、1678年に宮廷機能は同地へ移る。これが1つの転機になった。

国王がいなくなったルーヴルにアカデミー・フランセーズ(フランス語の保存と純化を目的とした団体)、碑文・文芸アカデミー、王立絵画・彫刻アカデミーの3団体が入居した。ここからルーヴルは学問・芸術の場所として性格を帯び始めることになる。そして1791年、フランス革命下の国民会議によってルーヴルは学問と芸術のあらゆる作品を集める場所として定められ、1793年に中央芸術博物館として一般公開された。当時、入場料は無料で芸術家を優先し開館していたが、週末には民衆も訪れることができたという。

その後、各時代の政権の興亡により収蔵品の増減はあるものの、時とともに収蔵品の数は増えていき、館内も改装・増築が行われた。拡大は現在も続いており、最近では2012年に仏北部ランスに分館が開館した。同分館は常設の収蔵品は持たないものの(パリ本館から貸し出され、毎年少しずつ展示が変わり5年間で完全に入れ替え)未公開のルーヴル250作品を展示している。
(加藤亨延)

関連リンク
■ ルーヴル美術館展(東京都美術館)
■ 地球の歩き方 フランス/パリ特派員ブログ 加藤亨延の最新記事