ボストン・レッドソックスとの6年契約が満了し、今オフ、FAとなって他球団と交渉を続けている松坂大輔投手。現在、シカゴ・カブスやワシントン・ナショナルズなど、複数のチームが興味を示していると報じられています。しかし、その中でも一番有力であり、かつ松坂投手が輝きを取り戻せそうなチームは、ナ・リーグ西地区に所属するサンディエゴ・パドレスではないでしょうか。

 その理由を語る前に、まずはパドレスというチームについて現状を説明しましょう。2012年シーズン、パドレスは76勝86敗と大きく負け越し、首位のサンフランシスコ・ジャイアンツから18ゲームも離されてナ・リーグ西地区4位に終わりました。今季低迷した最大の要因は、投手陣の崩壊です。特に先発の柱となる投手を欠き、16試合以上に先発したのはクレイトン・リチャード(14勝14敗・防御率3.99)とエディソン・ボルケス(11勝11敗・防御率4.09)のふたりのみ。通常、メジャーの先発投手は1シーズンに30試合ほど登板するので、これは非常に少ない数字です。

 その影響もあり、2012年のチーム防御率は一気に下降しました。本来、パドレスのチーム防御率は良く、2010年はリーグ2位(防御率3.39)、2011年も同3位(防御率3.42)と、好成績を残しています。しかし、2012年はリーグ10位の防御率4.01。また、先発投手陣に至ってはリーグ13位の防御率4.44と不調に陥ったのです。

 そこでパドレスは、今オフの最重要課題として「先発投手陣の強化」を真っ先に掲げ、ジョシュ・バーンズGMも「FAで先発ふたりは欲しい」と語っていました。しかし近年、投手の年俸が高騰していることもあり、今オフのFA市場の目玉先発投手は次々と他球団に奪われてしまいました。ザック・グレインキーがロサンゼルス・ドジャースと6年総額1億4700万ドル(約120億円)、ライアン・デンプスターもレッドソックスと2年総額2650万ドル(約21億2000万円)で契約。アニバル・サンチェスもデトロイト・タイガースと5年総額8000万ドル(約66億8000万円)で再契約しました。さすがにパドレスの財力では、これほどの高額契約は結べません。

 現状、来季に向けて先発を補強できたのは、11月にオークランド・アスレチックスから獲得したタイソン・ロス(2勝11敗・防御率6.14)と、12月初めのウインターミーティングでジェイソン・マーキー(8勝11敗・防御率5.22)と再契約したのみ。ともに好成績を残せていないので、来季のローテーション入りが確実とは言えない面々です。よって、もし松坂投手がパドレスに入団することになれば、戦力になれるチャンスは十分にあります。

 また、パドレスを率いるバド・ブラック監督が『投手出身』という点も注目です。現在、メジャー30球団で投手出身監督は2名だけで(もうひとりはレッドソックスのジョン・ファレル新監督)、昔から「投手出身監督は成功しない」と言われているのですが、ブラック監督は2010年、ナ・リーグ最優秀監督にも輝きました。投手出身では、元ドジャースの名物監督だったトミー・ラソーダらに次ぐ史上3人目の快挙です。現役時代はメジャー通算121勝を記録するなど、投手としても一流だったブラック監督のもとなら、松坂投手も安心して頼れるのではないでしょうか。

 松坂投手が頼れるもうひとりの存在として、ピッチングコーチのダレン・ボルスリーの存在も見逃せません。1990年に当時25歳の若さでマイナーからコーチ経験を積み、2004年から本格的にパドレスの投手陣をまとめ上げている人物です。2004年から2011年までの計8年間で、メジャートップのチーム防御率3.91を残した実績があり、ボルスリーも松坂投手の『完全復活』を支えてくれることでしょう。