「結婚はデメリットだらけ」って本当?

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 未婚率が右肩上がりで増加していることは、すでに報道などを通じて知っている人も多いでしょう。収入格差の拡大や女性の社会進出などその要因はさまざまですが、「結婚はデメリットだらけ」と考える方も多いようです。
 では、この時代、本当に結婚はデメリットだらけといえるのでしょうか。

 コスト削減の専門家である坂口孝則さんが、てんとうむしコミックス版「ドラえもん」(藤子・F・不二雄/作、小学館/刊)のエピソードを引き合いに、家庭や人生の“お金の考え方”について説明をする『野比家の借金』(光文社/刊)では、現実的な視点から「結婚」のメリット・デメリットについて書きつらねられています。

 坂口さんによれば、未婚女性が求める結婚相手の年収はだいたい600万円。ところが、30歳未満の男性の平均年収は334万円、30〜39歳の男性でも425万円に過ぎません。(*1)。
 この値は平均値で、個々の年収は職業や業種などによって変わってくるものの、理想と現実は大きくかけ離れているといえます。
 また、今でこそ“スマート婚”が流行しているものの、結婚式をあげるための費用も普通は300万円ほどかかります。同じ調査によれば、30歳未満の男性の貯蓄高は平均で199万円、30歳〜39歳で平均451万円。それまで積み立ててきた資産の大半を費やしてしまうことになります。さらに、その後には子育てやマイホーム購入など、お金のかかるイベントが待ち構えているとすれば、多くの家庭が「家計が苦しい」状態にあるのは納得せざるを得ないでしょう。

■男女ともに生活費の観点から見れば「結婚はした方がいい」
 では、この結婚を妨げる「お金」。本当にネックなのでしょうか。
 坂口さん曰く、「豪奢な結婚生活ではなく、いまのレベルが維持できればいい」という考えであれば、男性と一緒に住み、家計を一つにしたほうがいいという結論に至るそうです。
 データによれば、月の生活費は全国平均で一人世帯12万円に対し、二人世帯では16万円(*2)。つまり、二人合わせて24万円かかるところが、16万円に削減できます。30歳で結婚するよりも、2年前の28歳で結婚したほうが削減額8万円×24ヶ月で192万円の節約が可能。ただ、これは単純計算であり、生活の中ではたくさんのイベントが発生します。それでも、中期的に見れば早めに結婚したほうがいいと坂口さんは言います。

■財産狙いでの「結婚」「離婚」には誤解が満載?
 また、年収が高い人やお金持ちの人であれば多少の欠点は目を瞑って結婚したいという女性の声を聞くことがあります。そして、どうしてもダメだったら離婚という手もある――。あまり聞きたくない話ですが、そういう考え方も中にはあります。
 しかし、坂口さんはこの結婚観は賛成できないそうです。
 まず、離婚は精神的な負担が大きく、厖大な時間がかかる、さらに社会的信頼を損なう要因にもなってしまうと指摘します。
 さらに、離婚というと財産の分配をイメージする人が多く、「夫の財産の半分を妻側はもらえる」なんていう声もあるようですが、ここに「誤謬があると坂口さんは述べます。
 例えば資産3000万円の男性と結婚し、離婚した場合、専業主婦の妻は1500万円がもらえるのでしょうか。実は、そんなにもらえません。そもそも、結婚前の夫の資産は財産分与の対象にはならないのです。もし、資産をすべて夫が管理していて、離婚する際に資産が3100万円に増えていた場合、その増加額である100万円が対象になり、妻がもらえる額は最大で50万円程度にしかなりません。
 また、そもそも財産の半分ももらえない、と坂口さん。50%はその最大値。離婚時にもらえる額を増やすには、家族の財産構築に妻がどれだけ寄与したかを説明できるようにすることが必要です。だいたい普通で30%程度だそうですから、財産狙いの結婚はあまりに非効率的といえます。
 
 坂口さんは本書の「結婚」についての章の冒頭で、映画化もされた名作名高い「のび太の結婚前夜」(てんとう虫コミックス「ドラえもん」25巻)のエピソードを引用しています。
 しずちゃんのパパが、「あたし、およめにいくのやめる!!」と言い出すしずちゃんに、「のび太くんを選んだきみの判断は正しかったと思うよ」と述べ、のび太は人のしあわせを願い、人の不幸を悲しむことができる人間だと伝えるシーンは、ファンならずとも多くの人が知っているはず。
 確かにお金も大事ですが、のび太のような、自分の愛する人を優先する心、人の幸せを願い、不幸を悲しむことができる心を持っている人と一緒になることが、二人が幸せになるために何よりも大事であると思わざるを得ません。
 『野比家の借金』では、この他にもひみつ道具「フエール銀行」を通して借金の仕組みを教えてくたりしていますから、「ドラえもん」を知っている人なら、小難しいお金の話も腑に落ちる形で理解できるはずです。
(新刊JP編集部)

*1 総務省統計局「全国単身世帯収支実態調査」(単身世帯のうち勤労者世帯に限る/2011年3月)。また、女性の平均年収は、30歳未満で284万円、30歳〜39歳で317万円。
*2 人事院発表「人事院調査標準生計費」