その代表例が、イングランドだ。
「せっかくルーニーが相手のDFを外して、いくらでもパスをもらえる状況を作っているのに、まわりの選手たちがその動きに気づいていなかった。ボールが来るのは、味方がドカーンと蹴ったときだけ。あれで点を取れというのは酷。ルーニーがイライラするのも仕方がありません」
  ルーニーは無得点のまま、決勝トーナメント1回戦でドイツに敗れ、南アフリカを去ることになる。同じく期待外れに終わったイタリアも、サイドからばかり攻める時代遅れのチームだった。
  今サッカー界では、イングランドやイタリアのようなサッカー大国でも苦しんでいるのだから、まだプロリーグができて約20年しか経っていない日本に、「スペインのような攻撃的なサッカーをしてほしい」と願うのは酷な話なのかもしれない。今大会を見る限り、日本がスペインに追いつくには20、30年単位の年月が必要に思えてしまう。
  ところが、風間はまったく逆のことを考えていた。
「日本の選手には、言われたことを認識して、プレーを変える能力が高い。だからこそ南アフリカ・ワールドカップでは、大会直前にやり方が変わっても対応できた。技術的にもかなり高いものがある。あとは発想の問題なんです。少し発想を切り替えれば、もっと日本のサッカーは楽しくなるし、必ず強くなる」
  日本人選手はすでに技術があり、新しいことを吸収しようとする意欲もある。
  あとは "発想の転換"――。これさえできれば、日本サッカーは驚くほどの進化を遂げられると、風間氏考えているのだ。
  では、いったいどうすれば発想を変えられるのか?
  それを実行するには、日本サッカー界が常識だと思い込んでいる「誤解」を、一つひとつ解きほぐしていく作業が必要になってくるだろう。スペインがワールドカップ初優勝を決めた約1ヶ月後、あらためて風間に時間を取ってもらい、筑波大学でインタビューを行った。
  すると、8つの「日本サッカーの誤解」が浮き上がってきた。


[1]サイド攻撃は本当に効果的なのか?
[2]攻撃にスペースは必要なのか?
[3]足元へのパスはダメなのか?
[4]日本式ドリブルの間違い
[5]首を振っていても、大切なものが見えているとは限らない
[6]マグネット式布陣論の落とし穴
[7]本当の組織力とは何か?
[8]簡単な答えをほしがってはいけない

 思い込みや先入観を打ち砕き、非常識を新たな常識に変え、日本サッカーの次なる扉を開けることに挑戦したい。



※『革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする』P14-49より一部抜粋


 「なぜ人はサッカーすらも思い込みにとらわれてしまうのか? すべての常識を疑い見えているものを劇的に変え天才の視点を手に入れる」という言葉が、表紙の1枚めくった袖に記されている。思い込みや先入観を取り払えば、サッカーの本質が見えてくる。『革命前夜 すべての人をサッカーの天才にする』では、天才を育て、読者も天才の視点を持てるサッカー理論が散りばめている。
 
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