3月16日に参議院予算委員会で行なわれた、自民党・片山さつき議員の「生活保護費」に関する政府への追求は、現在もさまざまな場所で議論の対象となっている。

 要点をまとめると、「生活保護を受けている日本人は、国民の約1.6%。それに対し、外国人受給者は有資格者の5.5%。日本人よりも外国人のほうが保護率が高いのはどうしてか」というもの。金額にすると、仮試算で1200億円弱が外国人の生活保護に支払われているという。

 国民の税金で賄(まかな)われる生活保護だけに、一種の不公平感は拭えない。だが、全生活保護者のなかで外国人の占める割合は増加する一方だ。生活保護受給の相談を受ける機会の多い猪野亨弁護士は、こんな例を挙げる。

「2010年に中国人48名が入国と同時に生活保護を申請したことがあった。入国審査を通るには、生活費や学費を捻出できるのが第一条件。入国してから病気やケガをした場合は生活保護受給に問題ありませんが、先ほどの中国人のように、なかには意図的に生活保護を受けにくる外国人もいます。在留期間は1〜3年で、その間、生活保護を受け続ける場合もあるからたまりません」

 外国人ですら簡単に不正受給ができてしまう現在、日本人の不正受給も同様に増加している。これほど問題が多いのに歯止めがかからないのはなぜか。役所の姿勢にも問題があると、前出の猪野氏は指摘する。

「生活保護を担当する課は新人教育の場くらいにしか考えていない役所が多く、担当職員もモチベーションが低いので面倒事を嫌がるんですよ。一応は窓口の対応で不正受給を減らそうとしているのですが、申請に来た人が気弱なら、本当に保護が必要でも追い返してしまうこともあるし、逆に強面で強気でくる人には、すんなり受給させてしまうなんてことも現実にある」(猪野氏)

 2007年には、交通費を改竄し続けた暴力団組員が、計2億円もの生活保護費を不正受給したという事件が大きな話題になった。しかし、告訴にまで至るケースは稀(まれ)だ。

「不正受給が発覚すれば、不正受給分の返還はもちろん、意図的に行なえば詐欺罪にもなる。ただ、役所と警察が面倒くさがるから、めったに告訴されないんですよ。だから、不正受給は増え続ける。ペナルティがないに等しいから『バレたら返せばいいや』くらいに考えているのでしょう」(猪野氏)

 効果的な対策は無いのだろうか?

「不正を暴くには、まずは受給者の預貯金を役所が直接調べられるようにすること。ただ、銀行にとっては手間がかかるだけで、反対もしています。また、もし銀行の協力を得られたとしても、他人名義の預金など抜け穴もありますけどね」(猪野氏)

 役所、警察、銀行、そして何よりも政府が本気で不正受給防止に取り組めば、“税金ドロボー”たちを一掃できるはずだ。

(取材/尾崎 亮/A4 studio)

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