タテ抱っこをするとなぜか顔をそむける赤ちゃん。

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筆者には、生後六カ月になる長男がいる。赤ちゃんとは、実に不思議な生き物。ナゾに満ちた生態を、いくつも持っている。その生態の真実を追い、読者の方々にご紹介させていただく“筆者の赤ちゃん長男シリーズ”を紹介させていただいた。さて、今回は……。

生後六カ月にもなると、いっしょに暮らしているパパやママのことはどうやらしっかりと認識しているようである(どんな存在なのかということまでは理解していないだろうけど)。視線が合うとニッコリうれしそうに笑う。遊んであげると、ケタケタと笑い声を出す。だが。

赤ちゃん長男を、寝そべった体勢のヨコ向きではなく、“立っち”のような姿勢でタテ向きに抱っこすると……。赤ちゃん長男は顔をそむけ、視線を外すではないか。その視線を追いかけると、今度は逆向きに顔をそむけて視線を外す。こちらも負けじと視線を追うと、またまた逆向きに顔をそむけて視線を外す。

ぬう……。これはいったいなんだ。
お父さんとは目も合わせられないというのか……。たしかにお父さん、赤ちゃん長男をコネタのネタとして度々使ってきた。ときには、然るべき団体から抗議を受けても仕方がないような実験すら課してきた。妻からも、幾度となく冷たい視線を投げかけられてきた。けれどすべて、仕事のためだったんだ。仕方がなかったんだよ。そんなお父さんの心の内も知らずに、赤ちゃん長男は怒っているのだろうか……。コネタのネタとして、使い倒してきたことを……。

なんだか悲しくて泣きたくなった筆者は、一度赤ちゃんを手放し、床の上に寝させた。するとどうだ。ニコ〜っと、なんともかわいい笑顔を見せてくれたではないか。嗚呼、この笑顔。憎らしい感情を抱く人間に対し、こんな天使の笑顔を見せられるものだろうか。フッ。なんだかんだいってやはり、この赤ちゃん長男は父を愛し、慕っているのではないか。

うひょ〜っ! かわいいっ〜! 好き好きっ! 大好きっ! 赤ちゃん長男ちゃんっ! うひょひょひょひょ〜っ! と、今度は両手で赤ちゃん長男を抱え、横向き抱っこで一心不乱に愛情を注いでみた。するとやはり、ニッコリと笑ってくれたのである。

赤ちゃん長男から憎悪の感情を抱かれているのではないかとキモを冷したが、どうやらそんなことはないようだ。安心して、再びタテ抱っこをしてみると。スイ〜っと、赤ちゃん長男がまたもや顔をそむけるではないか。あれ? また視線を外そうとしている? 横を向く赤ちゃん長男の顔をのぞき込み、視線を合わせようとすると、またもやスイ〜っと、顔と視線は逆方向へ……。 

思えばこの現象、筆者の上の子のときにも見られたような記憶がある。なんにせよ、ちゃんと人と視線を合わせられる子になってほしい。恥ずかしいのかなんなのか知らないが、人の目を見ようとせず、視線を逸らしているようではイカンではないか。そこで、赤ちゃん長男が生まれた病院の助産師さんに相談してみたところ、次のような答えが返ってきた。

「まだ自分で立っちできない赤ちゃんは、普段は仰向けやうつぶせで、横になっている姿勢でいますよね。だから、立っちの状態になるタテ抱っこだと、普段と視界も違って、いろいろなものが見える。その興味から、キョロキョロと視点を変えているのでしょう」

なるほど。目を逸らすというのではなく、キョロキョロしていただけってことか。じゃあ、あのう……。念のためなんですが……。筆者が赤ちゃん長男に嫌悪感を抱かれているわけではないってことで、いいですよね? 「まあ、たぶん大丈夫でしょう。ただ、今後もお父様の仕事の実験台に使われ続けていったら、嫌悪感を抱かれないとは限りませんよ」。……。赤ちゃん長男ネタに頼らないコネタ執筆に励みます。
(木村吉貴/studio woofoo)