元・農林水産大臣、そして防衛大臣の石破茂が語るTPP問題と国防。2012年、日本はどこへ向かうのか。そしてその舵を取る政治家は? 若い世代へ「政治家のウソを見抜け」と語る

写真拡大

 日本の財政は破綻し、世界は大恐慌時代となるのか? 各地で紛争が勃発し、テロが繰り返されるのか。はたまた、「3・11」以上の巨大地震、津波に襲われ、日本列島が沈没する恐れはないのか。各分野をリードする3人の“達人”が2012年を大予想。ノホホンと正月など迎えてはいられない!

     *     *     *

 財政、福祉、安全保障、復興と問題山積の日本。2012年、政治・外交の動向を国民待望の“首相候補”、石破茂(いしば・しげる)衆議院議員が熱く語る。

■現政権は崩壊する

 民主党政権は、12年早々には崩壊の危機に直面するでしょう。消費税は上げない、子ども手当2万6000円など、公約はほとんど反故(ほご)にされ、沖縄の信頼も完全に失われた。国民は「だまされた!」と思っている。それでも、まともな政治をやってくれればいいが、やることなすこと大失敗の連続。前のふたりがひどすぎたので野田さんがマシに見えますが、これも何をしたいのかわからない。

 ならば、自民党はどうか。大阪府知事・市長のダブル選挙の結果は「民主党も自民党もノー」という民意で、「自民党よ、頑張れ!」という流れにはなっていない。自民党はハッキリものを言い、まっとうになれるか。問題はそこです。

■財政は危機的状況!

 消費税は行革と並行して一刻も早く上げるべきです。消費税と福祉の充実はセットなのに、日本は消費税を抑えたまま福祉の水準を上げてきたのだから、今日の財政状況はいわば当然の成り行きです。

 TPPに参加しても農業は潰れません。米価維持のために田んぼを潰して、なんで食料の自給力が向上するのか。クルマと同じで、付加価値を上げ、コストを下げれば、世界一おいしい日本のお米は世界に売れるんです。

 通常は、景気が悪ければ財政出動で公共事業をやり、金利を下げるのが常套(じょうとう)手段ですが、今はカネもなければ金利も最低でどちらも使えない。

 1980年代のバブル経済は、「土地の値段はいつまでも上がり続ける」という、本来あり得ないことを信じたからで、神話崩壊とともに大不況となった。翻って今、ギリシャより財政状況が悪い日本の国債の価格が高く、金利も低いのは、「日本は必ず財政を再建する」と市場が信じているからです。しかし、「日本にはそんな気がない」と思われたとたんに国債暴落、金利高騰という最悪のシナリオが現実化する。

「財政を絶対に破綻(はたん)させない」という意思を明確に示すためにも、財政再建には即刻取りかからなくてはならない。首都直下型地震が起きたときに財政が破綻していれば、日本は本当に終わりです。

■日本は海兵隊を持て

 ヨーロッパの通貨危機が深刻です。以前ならアメリカがなんとかしたでしょうけど、今のアメリカにその余裕はない。中国が台頭してきたとはいえ、世界の経済危機を救えるほどの力はない。結局、ドイツやフランス、日本といった国々が負担するしかありません。

 そして、中東情勢が不透明な今アメリカにはアジアにおける軍事プレゼンスを高める余裕もありません。中国の軍事力が急速に高まりつつあるなか、アジア・太平洋地域の安定を維持するために、日本は韓国やオーストラリアとともに役割分担をしていくしかない。防衛費も増やさなければならないでしょうが、まずは現在の中身を見直さないと。

 今回の福島原発事故で、自衛隊には原子力災害に対応する能力が相当限られていることもわかった。しかも、電源が壊れただけで大惨事になると世界中が知った。テロリストはあの事故を見てどう思ったでしょうか。原発警備や放射能除染の能力を高めなくては、核攻撃や原発攻撃に対応することはできません。「防衛の素人」なんて言っている人に任せておいてはならないのです。