【シャルケ×シュツットガルト】 内田篤人 初めてのフル出場
■ 第8節
ブンデスリーガの第8節。シャルケのDF内田篤人はホームのシュツットガルト戦に先発出場。ソウルで行われた日本代表の韓国戦から中3日での試合となった。ブンデスリーガでは2度目のスタメンとなる。昨シーズン2位でUEFAチャンピオンズ・リーグにも出場している強豪のシャルケであるが、今シーズンは絶不調。ここまで1勝5敗1分けで17位。ボルシア・ドルトムントとのダービーマッチにも敗れていて、フェリックス・マガト監督の立場も危うくなってきた。
ホームのシャルケは<4-2-2-2>。GKノイアー。DF内田、シュミッツ、メツェルダー、ヘヴェデス。MFモリッツ、マティプ、エドゥ、フラド。FWラウル・ゴンサレス、ヤン・フンテラール。オランダ代表のFWフンテラールは5試合で4ゴール。FWラウルは7試合で1ゴール。GKノイアーはドイツ代表の正GK。中国人MFハオ・ジュミンはベンチスタート。
一方の対戦相手のシュツットガルトは1勝6敗で18位。イタリア代表のMFマウロ・カモラネージ、ドイツ代表のFWカカウらを擁しながら低迷しており、クリスティアン・グロス監督は解任されて、この試合ではアシスタントコーチのイェンス・ケラー氏が暫定的に指揮を執る。
■ 2対2のドロー
下位に低迷する両チームの対戦は前半15分にシュツットガルトが先制する。前半15分に左サイドを崩すと、最後はゴール前に折り返したボールをMFゲプハルトが決めて先制する。しかし、シャルケは前半29分にコーナーキックを獲得すると、MFエドゥが左足で上手く合わせて同点に追いつく。前半は1対1で終了。
後半はシャルケがペースを握って何度もチャンスを作るが、FWラウルらが決定機に決めきれない。すると、後半29分にシュツットガルトがカウンターから右サイドを突いて途中出場のMFハルニクが決めて2対1と勝ち越しに成功する。しかし、後半35分にシャルケがセットプレーの流れからPKを獲得。これをFWフンテラールが決めて同点に追いつく。FWフンテラールは公式戦は6試合連続ゴール。リーグ戦は5ゴール目。
結局、試合は2対2で引き分け。DF内田は初のフル出場を果たした。
■ 勝てない両チーム
昨シーズン2位のシャルケと、昨シーズン6位のシュツットガルトの対戦という好カードだったが、今シーズンの低調ぶりを感じさせる質の低い試合となった。シャルケは前線にオランダ代表のストライカーFWフンテラールを擁しているが、FWフンテラールまでボールを運ぶ仕事を担うはずの中盤がミスを連発。連携不足は顕著で安易にボールを失うシーンが目立った。
一方のシュツットガルトもシャルケのDFの甘さを突いて2ゴールを奪ったが、守備陣の不安定さはシャルケと同レベルで、リードを奪った直後に2度の失点を喫してドローに持ち込まれてしまった。今シーズンのブンデスリーガはマインツやドルトムントが好調なのに対して、ブレーメン、シュツットガルト、シャルケといった有力チームの調子が上がってきていないが、両チームの低迷ぶりがよく分かる試合となった。
■ フル出場の内田篤人
ブラジル代表でジェノアに移籍したDFラフィーニャの後釜として期待されているDF内田であるが、怪我もあってなかなかスタメンの機会は巡って来ず、第8節にして2試合目のスタメンとなったが、自身の出来としては及第点以上だったといえる。
前半はやや消極的で、シャルケは左サイドが攻撃の主体となったこともあって、なかなか攻撃参加するタイミングがつかめずにいたが、後半になると逆にDF内田のいる右サイドが攻撃の起点になって、右サイドから何度もクロスを上げることが出来た。そのクロスが味方にピタリと合うシーンは少なかったが、つなぎのパスが正確でボールを持っても落ち着いてプレーすることができていたためか、時間が経つにつれて多くのパスが回ってくるようになった。結果として、2試合目のスタメンとは思えないほどパスが回ってきて、DF内田の右サイドからの攻撃はシャルケの武器となった。(悔やまれるのは試合終了間際のクロスが「あさっての方向」に飛んで行ったこと。ラストプレーで頭に残りやすいので、見ていた人の評価が悪くなってしまう可能性がある。)
また、この日はクロスだけでなく前線への楔のパスの精度が非常に高くチャレンジのパスも多かった。もともと、前線へ際どいパスを供給できることはDF内田の持ち味であるが、難易度の高いパスも通していて、この部分は、今後、ドイツでも高く評価されるはずである。
課題の守備は、1失点目はDF内田のサイドを崩されてゴールを許したが、このシーンでは周囲との連係が悪くてマイナス評価されても仕方がないが、それ以外では無難に守っていた。1対1で仕掛けられると弱さを見せることがあるが、対面した選手がそれほど仕掛けて来なかったので、その対応はそれほど大変ではなかった。
■ 改善したいこと
改善したいことは、とにかくチームメイトとの連携の部分である。
DF内田だけでなく、多くのポジション間で連携が取れていないシャルケであるが、最終ラインを任されているDF内田にとっては大きな問題であり、シャルケには能力のある選手がそろっているのに、うまくいっていないという状況はもったいない。サイドでボールを持った時、一人でガンガン仕掛けていくタイプではなくて、味方と連携して崩していくタイプなので、攻撃的な持ち味を発揮しようとしたらなおさらである。
期待が大きかった分、開幕から怪我等で出遅れてしまったので、DF内田を取り巻く状況はもっとネガティブなものかと思われたが、チーム状態も最悪なので、変わりに右サイドバックに入っていた何人かの選手も芳しい評価ではなく、現時点でDF内田に対する評価もマイナスにはなっていないようで、ここからの巻き返しは十分に可能である。
■ ラウルとフンテラール
シャルケの2トップは元レアル・マドリードのコンビ。オランダ代表のFWフンテラールと、元スペイン代表でスペインの至宝と言われたFWラウルの2トップは、ネームバリューだけを考えると欧州でもトップクラスのコンビとなるが、33歳のFWラウルはさすがに全盛期は程遠くてミスが多かった。
鳴り物入りでシャルケに移籍してきたFWラウルであるが、これで8試合で1ゴールのみ。チャンスはあるが決めきれない状況が続いており、スタメン固定というのは少し厳しそうな感じである。レアル・マドリードではアンタッチャブルな存在だったが、シャルケではそうもいかない。決断の時期が来ているかもしれない。
■ サイドバック目線の観戦
これまで日本人選手が海外に挑戦する場合、そのほとんどがFWかMFの選手であり、DFは稀だった。特にサイドバックが本職といえる選手はほとんどいなかったが、今回、日本代表のDF内田が新たな道を切り開いたことになる。そのDF内田の試合は日本でも放送されており、試合を観るときはDF内田中心で試合を観ることになるが、それが新鮮で面白い。
FWやMFとは違ってサイドバックの自由度は高くなくて、味方の助け無しでは活躍できないポジションであるが、いいタイミングで上がって行ってもパスが回ってこないことも多く、「なぜ、フリーなのにパスを出さないんだ。」とか、「あいつがボールを持っても取られる可能性が高いから、ここは、オーバーラップは控えた方がいいな。」とか、「せっかく上がっていったのに、変な奪われ方をするな。」とか、「いいタイミングでクロスを上げるので、ちゃんとゴール前に入って来い。とか、実際にサイドでプレーしている気持ちになって試合を観ることができる。
普通に試合を観るとき、サイドバックは脇役中の脇役であり、「サイドをアップダウンするのが当たり前」であり、「サイドを上がってきても囮で使われても文句を言わずに黙々とプレーするのが当たり前」と思いがちであるが、DF内田のプレーを通してサイドバックの気持ちになって試合を観ていると、その「つらさ」や「切なさ」や「偉大さ」も改めて感じる。
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一方の対戦相手のシュツットガルトは1勝6敗で18位。イタリア代表のMFマウロ・カモラネージ、ドイツ代表のFWカカウらを擁しながら低迷しており、クリスティアン・グロス監督は解任されて、この試合ではアシスタントコーチのイェンス・ケラー氏が暫定的に指揮を執る。
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下位に低迷する両チームの対戦は前半15分にシュツットガルトが先制する。前半15分に左サイドを崩すと、最後はゴール前に折り返したボールをMFゲプハルトが決めて先制する。しかし、シャルケは前半29分にコーナーキックを獲得すると、MFエドゥが左足で上手く合わせて同点に追いつく。前半は1対1で終了。
後半はシャルケがペースを握って何度もチャンスを作るが、FWラウルらが決定機に決めきれない。すると、後半29分にシュツットガルトがカウンターから右サイドを突いて途中出場のMFハルニクが決めて2対1と勝ち越しに成功する。しかし、後半35分にシャルケがセットプレーの流れからPKを獲得。これをFWフンテラールが決めて同点に追いつく。FWフンテラールは公式戦は6試合連続ゴール。リーグ戦は5ゴール目。
結局、試合は2対2で引き分け。DF内田は初のフル出場を果たした。
■ 勝てない両チーム
昨シーズン2位のシャルケと、昨シーズン6位のシュツットガルトの対戦という好カードだったが、今シーズンの低調ぶりを感じさせる質の低い試合となった。シャルケは前線にオランダ代表のストライカーFWフンテラールを擁しているが、FWフンテラールまでボールを運ぶ仕事を担うはずの中盤がミスを連発。連携不足は顕著で安易にボールを失うシーンが目立った。
一方のシュツットガルトもシャルケのDFの甘さを突いて2ゴールを奪ったが、守備陣の不安定さはシャルケと同レベルで、リードを奪った直後に2度の失点を喫してドローに持ち込まれてしまった。今シーズンのブンデスリーガはマインツやドルトムントが好調なのに対して、ブレーメン、シュツットガルト、シャルケといった有力チームの調子が上がってきていないが、両チームの低迷ぶりがよく分かる試合となった。
■ フル出場の内田篤人
ブラジル代表でジェノアに移籍したDFラフィーニャの後釜として期待されているDF内田であるが、怪我もあってなかなかスタメンの機会は巡って来ず、第8節にして2試合目のスタメンとなったが、自身の出来としては及第点以上だったといえる。
前半はやや消極的で、シャルケは左サイドが攻撃の主体となったこともあって、なかなか攻撃参加するタイミングがつかめずにいたが、後半になると逆にDF内田のいる右サイドが攻撃の起点になって、右サイドから何度もクロスを上げることが出来た。そのクロスが味方にピタリと合うシーンは少なかったが、つなぎのパスが正確でボールを持っても落ち着いてプレーすることができていたためか、時間が経つにつれて多くのパスが回ってくるようになった。結果として、2試合目のスタメンとは思えないほどパスが回ってきて、DF内田の右サイドからの攻撃はシャルケの武器となった。(悔やまれるのは試合終了間際のクロスが「あさっての方向」に飛んで行ったこと。ラストプレーで頭に残りやすいので、見ていた人の評価が悪くなってしまう可能性がある。)
また、この日はクロスだけでなく前線への楔のパスの精度が非常に高くチャレンジのパスも多かった。もともと、前線へ際どいパスを供給できることはDF内田の持ち味であるが、難易度の高いパスも通していて、この部分は、今後、ドイツでも高く評価されるはずである。
課題の守備は、1失点目はDF内田のサイドを崩されてゴールを許したが、このシーンでは周囲との連係が悪くてマイナス評価されても仕方がないが、それ以外では無難に守っていた。1対1で仕掛けられると弱さを見せることがあるが、対面した選手がそれほど仕掛けて来なかったので、その対応はそれほど大変ではなかった。
■ 改善したいこと
改善したいことは、とにかくチームメイトとの連携の部分である。
DF内田だけでなく、多くのポジション間で連携が取れていないシャルケであるが、最終ラインを任されているDF内田にとっては大きな問題であり、シャルケには能力のある選手がそろっているのに、うまくいっていないという状況はもったいない。サイドでボールを持った時、一人でガンガン仕掛けていくタイプではなくて、味方と連携して崩していくタイプなので、攻撃的な持ち味を発揮しようとしたらなおさらである。
期待が大きかった分、開幕から怪我等で出遅れてしまったので、DF内田を取り巻く状況はもっとネガティブなものかと思われたが、チーム状態も最悪なので、変わりに右サイドバックに入っていた何人かの選手も芳しい評価ではなく、現時点でDF内田に対する評価もマイナスにはなっていないようで、ここからの巻き返しは十分に可能である。
■ ラウルとフンテラール
シャルケの2トップは元レアル・マドリードのコンビ。オランダ代表のFWフンテラールと、元スペイン代表でスペインの至宝と言われたFWラウルの2トップは、ネームバリューだけを考えると欧州でもトップクラスのコンビとなるが、33歳のFWラウルはさすがに全盛期は程遠くてミスが多かった。
鳴り物入りでシャルケに移籍してきたFWラウルであるが、これで8試合で1ゴールのみ。チャンスはあるが決めきれない状況が続いており、スタメン固定というのは少し厳しそうな感じである。レアル・マドリードではアンタッチャブルな存在だったが、シャルケではそうもいかない。決断の時期が来ているかもしれない。
■ サイドバック目線の観戦
これまで日本人選手が海外に挑戦する場合、そのほとんどがFWかMFの選手であり、DFは稀だった。特にサイドバックが本職といえる選手はほとんどいなかったが、今回、日本代表のDF内田が新たな道を切り開いたことになる。そのDF内田の試合は日本でも放送されており、試合を観るときはDF内田中心で試合を観ることになるが、それが新鮮で面白い。
FWやMFとは違ってサイドバックの自由度は高くなくて、味方の助け無しでは活躍できないポジションであるが、いいタイミングで上がって行ってもパスが回ってこないことも多く、「なぜ、フリーなのにパスを出さないんだ。」とか、「あいつがボールを持っても取られる可能性が高いから、ここは、オーバーラップは控えた方がいいな。」とか、「せっかく上がっていったのに、変な奪われ方をするな。」とか、「いいタイミングでクロスを上げるので、ちゃんとゴール前に入って来い。とか、実際にサイドでプレーしている気持ちになって試合を観ることができる。
普通に試合を観るとき、サイドバックは脇役中の脇役であり、「サイドをアップダウンするのが当たり前」であり、「サイドを上がってきても囮で使われても文句を言わずに黙々とプレーするのが当たり前」と思いがちであるが、DF内田のプレーを通してサイドバックの気持ちになって試合を観ていると、その「つらさ」や「切なさ」や「偉大さ」も改めて感じる。
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