2024年9月28日の南極大陸上空におけるオゾンホールの状態 (c) NASA Earth Observatory

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 20世紀には、冷蔵庫やエアコンの冷却媒体ガスとしてフロンガスが多用されていた。だがこれが大気中に放出されると、地球大気のオゾン層を破壊。その結果、紫外線が直接地表に降り注ぎ、皮膚がんや白内障を誘発することが指摘され、1987年にはモントリオール議定書による国際条約により、オゾン層破壊につながるフロンガスなどの有害物質の放出制限が始まった。

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 それ以降オゾンホールの拡大には歯止めがかかったと考えられている。NASAは、直近のオゾンホールの状態について観測結果を示すとともに、2066年までには、オゾンホールが元の良い状態に修復できる可能性があることを公表した。

 10月31日にNASAは、アメリカ海洋大気庁(NOAA)と共同で各種気象衛星ならびに気象気球による南極上空のオゾン濃度観測を通じて、最新のオゾンホールの状態について調査結果をまとめ、公表した。

 1年のうちでオゾンホールが最も拡大するのは9月から10月にかけてで、2024年に観測されたオゾンホールの大きさは、1992年に回復が始まって以来、7番目に小さい値であったという。今年オゾンホールが最大になったのは9月28日で、2240万平方キロメートルだった。

 モントリオール議定書では、各国が2010年までに、フロンガスなどの放出をやめ、環境にやさしい代替ガスへの置き換えを進めることが定められている。以降、オゾンホールを拡大させるガスの大気中濃度は減少しつつあるが、NASAによるとそれまでに放出されたガスの悪影響はまだ残っており、過去の良い状態に戻るのは2066年ごろと予測している。

 NASAでは、厚さ0.01mmのオゾン層生成に必要なオゾン分子数の指標として、ドブソンユニットを用いている。1979年に225ドブソンユニットだったものが、2024年10月5日には109ドブソンユニットと2倍以上に数値が改善されていることが判明している。

 我々の文明が20世紀に地球環境を破壊してきたことに気づき、抜本的な対策を取り始めた結果、その効果が目に見える形で現れてきたことは大変喜ばしいことだ。だが元の状態に戻るのに、21世紀後半まで時間がかかってしまう現実も重く受け止めなければならないだろう。