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 国内FA権を今季取得した阪神の坂本誠志郎捕手(31)は権利を行使せず、4年4億円プラス出来高(推定)で残留した。

 あの光景を、まだまだ見続けたい。あの喜びをもう一度、味わいたい。宣言すれば争奪戦の可能性もあった中で、坂本が4年総額4億円プラス出来高の条件で残留を決めた2つの大きな理由は、チーム愛と今季の悔しさだった。

 「甲子園の捕手のポジションに座って、選手の中で一人だけ反対を向いてフィールドを見渡した時、たくさんの阪神ファンの前で野球ができる幸せを“こんなことはないな”と感じたし、その景色をこれからも見ていきたいという思いが出てきた。23年に優勝、日本一になって、今年はチームとしても、個人的にも悔しい思いをたくさんした。それをやっぱり、タイガースでもう一回、やり返したい。みんなでそこを目指していきたい」

 権利を行使する道を選んだ大山同様、悩みに悩んだ。「ここまでタイガースでやってきて、金本監督、矢野監督、岡田監督に使ってもらっていただいた権利だったんで」。他球団からの評価が気になるのは、FA権を取得するほどの野球選手なら当然のこと。それでも、世界一熱いファンがいる故郷の球団への「縁」と「恩」が、揺れ動いた気持ちを残留に傾けた。

 現役時代にバッテリーを組んだ藤川監督には電話で「責任を持ってやります」と報告し「良かった」と安どされた。そして「覚悟を持ってやっていこう」という指揮官からの信頼の厚さを感じさせる言葉を、しっかりと受け止めた。

 「これから一緒にやっていく中で、僕にも責任がある。そのつもりでいますし、それをみんなで優勝という形にしていくだけ」

 今季64試合で打率・223、0本塁打、12打点という成績は決して満足できない。選手のリーダー格として、扇の要として、新監督を胴上げすべく来季もタテジマに袖を通す。(山添 晴治)

 ◇坂本 誠志郎(さかもと・せいしろう)1993年(平5)11月10日生まれ、兵庫県出身の31歳。履正社では1年秋から正捕手を務め、2年夏と3年春に甲子園出場。明大では2年春と秋にベストナイン。15年ドラフト2位で阪神入団。23年は自己最多の84試合に出場し、日本一に貢献。ゴールデングラブ賞を初受賞した。1メートル76、80キロ。右投げ右打ち。