TSMC

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米国政府が世界最大のファウンドリー企業である台湾TSMCに高性能半導体の中国向け出荷中断を要求したという外信報道が出てきた。2020年に始まった対中制裁にもかかわらず、中国ファーウェイの先端人工知能(AI)チップセットにTSMCの半導体が使われているという事実が確認されたためだ。

ロイター通信は9日、消息筋の話として米商務省がAIアクセラレータやグラフィック処理装置(GPU)稼動に使われる7ナノメートル以下の先端半導体に対する中国向け輸出に制限を課す内容の公文書をTSMCに送ったと伝えた。情報提供書簡と呼ばれる商務省の公文書は、特定企業に新規許可条件を速やかに課す文書で、複雑な規定制定過程を迂回できる。

これと関連し前日にフィナンシャル・タイムズはTSMCが中国顧客に11日から7ナノメートル以下の半導体注文を受け付けないと通知したと報道した。

米商務省の今回の命令はTSMCがファーウェイ製品に自社半導体が使われたという事実を米国に知らせてから20日もたたない時点で出てきた。先月22日にカナダの半導体市場調査企業テックインサイトはTSMCに「2022年に発売したファーウェイの先端AIチップセットのアセンド910Bを分解した結果、TSMCのプロセッサが見つかった」という事実を伝え、TSMCはこれを米商務省に伝えた。

テックインサイトの分析結果は、米政府の対中制裁網に穴があけられたという懸念をもたらした。TSMCの独自調査の結果、中国の半導体設計企業である算能科技の注文により供給した7ナノ半導体がファーウェイに流れた事実が確認された。ファーウェイが制裁対象ではない中国企業を代理人としてTSMCに注文する方式で米国の制裁を回避したとの疑惑がふくらみ、TSMCは算能科技との取引を中断した。

フィナンシャル・タイムズはTSMCの今回の措置が5日の米大統領選挙でトランプ前大統領が当選した点と関連があるとみた。メディアはこれまでトランプ氏が台湾に対し「米国のチップ産業を盗んだ」と非難し、TSMCに対しては「米国に半導体製造工場を作る見返りとして途轍もない補助金を得た後、結局生産施設を自国に持っていくだろう」と批判してきた点を指摘した。

現在TSMCはトランプ氏に信頼されなかったり非協力的な会社と指摘されることを極度に警戒しているという。TSMCの内部事情をよく知る関係者は同紙に「TSMCの今回の措置はトランプ氏に向けたショーではなく、われわれが米国の国益に反する行動をしないという事実を強調するためのもの」と伝えた。