朝ドラ“恋のスポーツ対決”を振り返る 『おむすび』は菅生新樹×佐野勇斗の野球対決に?
放送中の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)の第6週では、ヒロイン・米田結(橋本環奈)と姉の歩(仲里依紗)のわだかまりが溶解。結は両親の前で「ギャルやりたい」と本音を打ち明けた。本作は平成元年生まれのヒロインが栄養士として、人の心と未来を結んでいく青春模様を描く作品である。
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物語の舞台は平成中期の福岡県糸島ーー。第6週目のタイトルは「うち、ギャル、やめるけん」だった。つまり最終的に結はこのタイトルに込められた自身の想いを覆したことになる。そして彼女の人生が、いよいよ動き出そうとしているのである。
これまでの結は自分の気持ちを我慢することも多く、周囲の人々のことばかりに気を配ってきた。「博多ギャル連合(ハギャレン)」のメンバーと交流するうち、彼女たちからさまざまな影響を受けたものだが、それは結自身の人生にまで影響を与えるものではなかった。1995年に起こった阪神・淡路大震災で被災した日から、米田家は少しずつバランスを崩し、結の心は固くなっていたのだ。
誰もがうまく向き合えないまま、今日まできてしまった。けれども結と歩が互いに自らの心の内を打ち明けたことで、ふたりは和解。失った日々は戻ることはないが、いまこの瞬間に彼女らは生きているのだし、ふたりには未来がある。こうして結は主体的に、自らの意志で、これからの人生を歩んでいこうとしているところなのだ。
第7週「おむすび、恋をする」は、これまでとは一転したトーンの物語が展開することになりそうである。予告を観るかぎり、全体的に「アゲアゲ↑↑」な調子。実際に結は私たちがまだ見たことのないようなはちきれんばかりの笑顔で、「アゲアゲ!」などと声を張り上げている。そしてタイトルから分かるように、どうやら結は恋をするらしい。
朝ドラが必ずといっていいほど恋愛模様を描くことに関しては、「無理に恋愛をさせなくてもいいのではないか……」というのが筆者の立場であることは記しておきたい。しかしそれがヒロインの生活のハリになるのであれば応援する所存。いや、そうだ。結は自分の人生を歩み出したのだから、これは応援するよりほかにない。もちろん、「アゲアゲ↑↑」な調子で。
これまでにも結を中心に、幼なじみの古賀陽太(菅生新樹)と四ツ木翔也(佐野勇斗)の関係がそれぞれ描かれてきた。陽太と翔也は高校は違うが、ともに野球部に所属している。これから三角関係が生まれるのだろうか。するとやはり野球で対決するだろうか。たぶん、そうなのだろう。
思い返せば、近年の朝ドラでも“恋のスポーツ対決”というものはいくつか描かれ、そのたびに盛り上がりを見せてきた。
たとえば、『なつぞら』(2019年度前期)では、ヒロイン・なつ(広瀬すず)をめぐって幼なじみみの天陽(吉沢亮)と、兄妹のように育った照男(清原翔)のスキー対決が描かれ、『ちむどんどん』(2022年度前期)では、ヒロインの妹である歌子(上白石萌歌)をめぐり、和彦(宮沢氷魚)と智(前田公輝)というふたりの男性が沖縄角力で対決した。どちらの対決の背景にも複雑な事情があるのだが、ここでは割愛しておこう。とにかく、“恋のスポーツ対決”が起きれば、作品には大きな盛り上がりが生まれるのだ。
いまのところ陽太と翔也が結をめぐって対立するような瞬間は描かれていない。しかし互いに高校球児ということもあり、さすがに意識はしているのだろうが。それにふたりはすでに一度、試合をしている。そのときにも応援席に結の姿があったが、いまとは違う結だった。正直なところ、積極的にギャルとして生きていく結の姿は想像がつかない。これまで自分のことよりも他人のことばかり彼女が気にしてきたのは誰もが知るとおりである。だがここから、彼女の人生がはじまる。私たちは新しい結に出会うことになるのだろう。“恋の野球対決”は、これから続いていく『おむすび』の世界や結の人生において、“ハイライト”となるのではないだろうか。(文=折田侑駿)