全新車をバイオ燃料対応に、経産省が30年代に導入目標…脱炭素化を後押し

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 経済産業省は、乗用車の燃料としてガソリンに混ぜるバイオ燃料の導入目標を初めて策定する方針だ。

 2030年度までに給油所で供給を始め、自動車メーカーには30年代の早期にエンジン車で全ての新車をバイオ燃料対応車とすることを求める。関連法の改正による義務化も視野に入れ、バイオ燃料の普及で脱炭素化を後押しする。

 経産省が11日の有識者会議で方針を示す見通し。50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」の達成に向け、年度内に策定する新たなエネルギー基本計画に盛り込む。

 方針案では、石油元売りが30年度までにバイオ燃料を最大10%混ぜた燃料の供給を始める。自動車メーカーには30年代早期に、乗用車の新車販売で同20%混ぜた燃料対応車の比率を100%とすることを求める。対応車の普及を見極め、40年度から同20%混ぜた燃料の供給も始める予定だ。

 当初は強制力のない官民の目標とする。バイオ燃料に対応するのに必要な給油所の改修費用などを支援する方針で、支援策などを盛り込んだ行動計画を25年6月までにまとめる。

 バイオ燃料の普及を図るのは、カーボンニュートラルを実現する上で乗用車の二酸化炭素(CO2)削減が不可欠だからだ。国内のCO2排出量の2割近くが運輸部門で、うち45%を自家用乗用車が占めている。

 政府は35年に乗用車の新車販売の全てをハイブリッド車(HV)を含む電動車とする目標を掲げている。ただ電気自動車(EV)の普及は遅れ、HV車やガソリン車の脱炭素化が課題だ。政府は30年代前半までにCO2と水素で作る合成燃料(イーフューエル)の商用化を目指しており、将来的にバイオ燃料と合わせた燃料の脱炭素化を目指す。

 バイオ燃料の活用は世界的に広がっており、世界最大級の生産国であるブラジルが27%、英国やインドネシアは10%の混合を義務化している。日本はバイオ燃料をブラジルのほか、米国や東南アジアから調達する方針。原油の輸入が中東に偏る現状を踏まえ、資源調達の多様化にもつなげる。

 ◆バイオ燃料=トウモロコシやサトウキビなど生物資源を原料とする燃料。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出するが、原料の植物が生育過程で大気中のCO2を吸収するため、脱炭素化につながる燃料とされる。