「記念すべき初満席のとき、お客さんに『ウェイティングボードに名前を書いて外で待っていてください』と、スタッフである母がお願いしたところ、『ラーメン屋のくせに、なんで待たないかんとや』と言われたそうです。また、コロナ禍の感染対策で『端から座ってもらえると助かります』と伝えたところ、『なんでお前に指図されんといかんと。好きに座らせろ』と言われたこともあります」

 三浦氏によれば、「あなたの心を鷲掴み」がある筑後エリアには「ずっと行列ができているという店もなかったので、並んでまで食べるという習慣がない」とも語る。

「週末や混む時間帯に“待ち”ができるお店はたくさんありますが、普段から並ぶという感覚がないので、ウェイティングボードにも人数を書かず、名前しか書かない。そのため順番が来た途端、行列に並んでいなかった人たちが当たり前のように割り込んでくる。いわゆる代表待ちです。注意すると、『何分待ったと思っとるんや』と文句を言われる。スタッフは嫌な気持ちになりますし、モチベーションも下がります。しかも文句を言った人たちが並び直すことは、100%ありません。文句と言うより、私たち店側にとっては暴言です」

◆感覚の違いが生んだ迷惑客

 しかも、その文句は厨房でラーメンを作っている三浦氏にではなく、お客さんを誘導するスタッフの母や妹にぶつけられる。その場合は厨房の手を止めて事情を聞きに行くのだが、そうすると大人しくなる客がほとんど。

「僕が男性で、見た目が怖いということもあると思います。でもそれは、人を見て文句を言っているということ。女性や子供にしか強く言えないのは、情けないと思います。僕には店主として、そういう迷惑客からスタッフを守る義務がある。でも、厨房でラーメンも作らないといけない」

 苦肉の策として店舗前に貼り出したのが、冒頭の「代表待ち・割り込み禁止 見つけ次第即退場」「18歳未満入店お断り」の掲示物。入店前からハッキリと、お客さんにもルールを自覚してもらうためだ。しかし、18歳未満の入店を拒むのはどうしてだろうか。

◆「18歳未満入店お断り」の真相

「18歳未満入店お断りを掲げていますが、とんこつラーメンを提供する普通のお店です。それに、僕自身はお子様も大歓迎。最初はファミリーにも来てほしいという気持ちでした。ただ、代表待ちをする人の多くが、お子様連れのファミリーでした。

 さらにあるとき、並んでいたのは男性1人だったのに、2、3家族の7〜8人ぐらいがぞろぞろと集まってきた。妹が並び直すよう注意すると、いろいろ文句を言ってきたため、僕が外に出て状況を聞くことにしました。でも、何も答えません」

 どうしようもない状態が続き、さらにこのあと行列に並ぶお客さんも巻き込む騒動になったことから、「18歳未満入店お断り」を掲げる決意を固めたという。

◆Twitterで炎上したルールと今後

「中学生や高校生になれば、きちんと列に並ぶことができる。でも、並ばない。状況を聞かれても答えない。やりきれない気持ちのなか、法律上18歳未満は子供扱いになるから仕方ないのかなと、ふと思ったのです。だったら、法律が改正されて18歳以上は“大人”と決まったわけだし、きちんと行列に並ぶことができる大人の人にだけ来てもらおうと決意。『代表待ち・割り込み禁止 見つけ次第即退場』『18歳未満入店お断り』というルールを同日に掲げました」

 2つのルールを掲げたあと、Twitterなどでは批判の声も相次いだ。三浦氏を擁護するお客さんたちも暴言を書き込まれる対象となり、繰り返される攻撃と反撃。お客さんを巻き込んで炎上してしまったことに、いまでも心を痛めているという。

「今後は、前々から目標だった2店舗目を福岡市内に出店予定です。ただ、これからも方針を変える気はありません。ひとりひとりがルールを守って常識の範囲で行動してくれれば、こんなルールは作らなくてもいいんですけどね」

<取材・文/山内良子 画像提供/あなたの心を鷲掴み>

【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意