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「静かで控えめ」は賢者の戦略──。そう説くのは、台湾出身、超内向型でありながら超外向型社会アメリカで成功を収めたジル・チャンだ。同氏による世界的ベストセラー『「静かな人」の戦略書──騒がしすぎるこの世界で内向型が静かな力を発揮する法』は、聞く力、気配り、謙虚、冷静、観察眼など、内向的な人が持つ特有の能力の秘密を解き明かしている。騒がしい世の中で静かな人がその潜在能力を最大限に発揮する方法とは? 同書の著者に秘訣を教えてもらった。(構成/ダイヤモンド社・秋岡敬子)

Q.自分の軸を見極める方法はありますか?

――私は環境によって内向型と外向型が変わってしまいます。そういったときに、本当は自分がどっち側の人間なのかがわからず不安に感じます。本当の自分を見極めるにはどうすればいいのでしょうか?

「自分はこういう人間」と決めつけない

ジル・チャン氏(以下、チャン氏) まず前提として、内向型か外向型かというのは、1つの指標であって、必ずしもその人の人格を決定づけるものではありません。

 そして、状況に応じて自分のふるまいが変わるということは、社会を生き抜くうえでいい戦略だと思います。もし仮に、どちらかに定まらないとしても、あなたが心配する必要はまったくありません。

 自分を知ることができるのは自分ひとりしかいないので、無理に「自分はこういう人間なんだ」と決めなくてもいいと思います。

 むしろ、「私は外向型だ」「いや、内向型だ……」などと断定せずに、自分自身のことをゆっくりと観察してください。

 自分のことを知れば知るほど、新たな特性に気づいたときに、それも個性だと前向きに受け入れられるようになると思います。

「本当の自分」を探すには?

――ジルさんは、「自分探し」のようなことをされたことはありますか?

チャン氏 私は若いころ、自分探しの旅を一生懸命していました。そして年を重ねるうちに、「自分を模索することは、自分を知るためのひとつのプロセスなんだ」ということに気づきました。

 じつをいうと、それはとても長い旅でした。

 最初は「真似」から始まりました。

 学生のとき、クラスに憧れの人がいたんです。外向的でとても明るい、太陽みたいな友だちがいて、あんなふうになりたいなと思いました。それで真似をして、その人みたいになれるようにいつも努力をしていました。

 でも、そうしているうちに、なんだか疲れてきてしまいました。毎日がんばって真似をしても理想に全然近づけない自分にフラストレーションを感じるようになってしまって。

 それで今度は、本を読んでみることにしました。性格タイプの本や内向型についての本、職場でどういうタイプの人がどう活躍しているのかについての本などをたくさん読んで、自分という人間を客観視してみることにしたんです。

 そのうちに、無理に自分にないものを求めたり、他人みたいになろうとしなくても、自分のなかにもいい部分があるんだと思うようになりました。自分のままでもよくて、自分のなかのいちばんいい自分を出していけばいいんだと気づいたんです。

「もっといい自分」を探し続ける

チャン氏 もっとも、そうはいっても、いまだにすてきな人に会うと、「あんなふうになりたいな」「でも無理だな」みたいな、以前にひととおり経験したモヤモヤのサイクルをまた繰り返すこともあります。

 でも言いたいのは、そういったことも含めて大切なプロセスだということです。

 そのプロセスは、40代になったいまもまだ続いています。自分って案外こういうところがあるなと見つけたり、人の真似をして虚勢を張りながら仕事をするうちに新しい強みが身についていったり。

 そうして日々移り変わっていきながらも、前よりもいい自分を見つけ直していくことが大事なのかなと思っています。

 ※本記事は、『「静かな人」の戦略書』の著者に話をうかがったものです。