158km高校2年生と投げ合った左腕は球速に「興味なし」 佐野日大・洲永俊輔が真逆の方法で追求する「打たれない直球」
健大高崎にコールド負け、来春の選抜出場は難しく…
第77回秋季関東高校野球大会は29日、川崎市の等々力球場で準々決勝1試合を行い、佐野日大(栃木)は3-10で健大高崎(群馬)に7回コールド負けを喫した。先発した左腕の洲永俊輔投手(2年)は6回0/3を投げて13安打10失点。選抜出場が濃厚となる4強にチームを導くことはできなかった。健大高崎の先発、石垣元気投手(2年)が2回、158キロという規格外の球速を記録したことに驚きつつも、洲永はスピードに興味がないのだという。この冬は「打たれない真っすぐ」を、真逆の方向から追い求める。
筋肉ムキムキ、強打者揃いの健大高崎打線を止められなかった。洲永は2回、安打と四球、さらに暴投もあり背負った2死二、三塁のピンチで、石垣に先制の2点適時打を許した。その裏打線が3点を奪い逆転したものの、3回には1死から秋山潤琉内野手(2年)に左越えの本塁打を浴びるなど3失点し、逆転を許す。6回にも3失点、7回に先頭から連続安打を浴びたところで、和田匠真投手(2年)にマウンドを譲った。
142球を投じる苦しいマウンドだったにもかかわらず、試合後の洲永は驚くほど冷静に自身の投球を分析した。「健大高崎さんに、自分のピッチングが全く通用しないということがはっきり出た試合だと思いました」。得意のスライダーを中心に組み立てたが見極められ、甘いストレートを痛打されることが続いた。本塁打を放った秋山が「低めのボールになる変化球には絶対に手を出さない」と攻略法を口にするほどだった。
洲永の直球は最速142キロだが、多くは130キロ台中盤。利き腕の違いもあり、投げ合った石垣とはまるで違ったタイプの投手だ。158キロには「すごい」と驚くものの、同じ道を歩く必要はないとわかっている。
「スピードにはこだわりがない。速いから抑えられるわけではないので」
求めるものは、スピードガンには出ない部分だという。「ノビとかキレとかで打たれない真っすぐを自分は求めているんです」。150キロ台後半を連発した石垣も3失点を喫したように、球速が必ずしも結果につながるわけではない。球速よりも、真っすぐの“質”にこだわっていく構えを見せる。
準々決勝敗退で、来春の選抜甲子園出場が厳しくなった。それでも洲永は下を向かず、すでに夏を見据えている。「打たれない真っすぐ、分かっていても空振りが取れる真っすぐを目指してこのひと冬、頑張っていきたい」。栃木県大会では、関東大会進出をかけた準決勝で、作新学院を相手に9回2失点完投。誰よりも信頼が厚い佐野日大のエースは、もうひと皮むけるために、真っすぐを一から見つめなおす。
(THE ANSWER編集部・戸田 湧大 / Yudai Toda)