夫子は住居10階、妻だけ7階 殺人容疑の妻、不満募らせ事件か
東京都台東区で夫妻が父親ら親族3人に不凍液の成分「エチレングリコール」を摂取させて殺害したとされる事件で、妻が義父母らへの不満を示す内容のメッセージを夫に送るなどしていたことが捜査関係者への取材でわかった。
警視庁は、一方的に不満を募らせた妻に夫が同調し、夫妻がエチレングリコールによる殺害を共謀した疑いがあるとみて調べている。
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捜査1課によると、細谷健一(43)、妻の志保(38)両容疑者は25日、父親の勇さん(当時73)にエチレングリコールを摂取させて殺害したとして再逮捕された。両容疑者は黙秘しているという。
両容疑者は次女の美輝(よしき)ちゃん(当時4)、姉の美奈子さん(当時41)にも同様にエチレングリコールを摂取させるなどした殺人容疑で逮捕され、美奈子さんについては起訴されている。
警視庁が両容疑者のスマートフォンを解析したところ、2017年8月以降に通販サイトでエチレングリコールを購入する履歴があった。捜査関係者によると、志保容疑者は美輝ちゃん事件の逮捕前の任意の調べに、エチレングリコールなどについて「買ったとしたら私だと思う」と供述していたといい、勇さんらの事件での購入の詳しい経緯も調べる。購入は健一容疑者のクレジットカードで支払われており、同課は健一容疑者も購入を把握していたとみている。
両容疑者は16年10月、千葉県流山市から勇さんのビルの居住スペースに転居したが、健一容疑者と子どもは勇さん夫妻と10階に住み、志保容疑者だけが7階に住まわされていたという。志保容疑者はこうした待遇への不満を健一容疑者に通信アプリのメッセージで送っていたという。
メッセージでは、勇さんから健一容疑者に支払われる給与が「少ない」とし、「(勇さんが)早く引退しないかな」などとも訴えていたという。勇さん夫妻へ不満を示す内容のやり取りは多数あったが、多くは志保容疑者が健一容疑者に送っていたという。
18年1月には健一容疑者の母親(当時68)も死亡しており、警視庁は経緯を調べている。(遠藤美波、長妻昭明、藤田大道)
【事件を巡る経緯】
2005年11月 細谷健一容疑者が「ホソヤ産業」の取締役に就任
09年11月 健一、志保両容疑者が結婚
14年11月 健一容疑者が同社取締役を辞任
16年10月 両容疑者の住居が千葉県流山市から東京都台東区に戻る
17年3月以降 父・勇さんが入退院を繰り返すように
18年1月 健一容疑者の母親が死亡
4月 健一容疑者の姉・美奈子さんが死亡
6月 勇さん死亡、健一容疑者が「ホソヤ産業」代表取締役に就任
7月 志保容疑者が同社取締役に就任
19年1月 美輝ちゃん誕生
23年3月 美輝ちゃん死亡
24年2月 美輝ちゃんへの殺人容疑で警視庁が両容疑者を逮捕(処分保留)
3月 美奈子さんへの殺人容疑で両容疑者を再逮捕
9月 美奈子さんへの殺人罪で両容疑者を起訴
10月 勇さんへの殺人容疑で両容疑者を再逮捕