スポニチ

写真拡大

 阪神・藤川球児監督(44)が25日、京都府久御山町のNTT淀総合運動場を訪れ、前日24日のドラフト会議で1位指名したNTT西日本・伊原陵人投手(24)に指名あいさつをした。1メートル70の体を大きく見せられる「ギャップのあるフォーム」と、野球頭脳を絶賛。早くもプロでの活躍に太鼓判を押した。

 約15分の初対面で、藤川新監督は伊原が兼ね備えていたプロとしての適性を見抜いた。自分の言葉でしっかりと話ができる。向こうっ気の強さも十分。身体能力だけでは成功しない、厳しい世界を勝ち抜ける力があると感じ取った。

 「(活躍をするには)頭の中で、思考とともに物事を進められることが重要。間違いなくクレバーなタイプだと思う。ウチの1軍は、明らかにそういう選手が多い。早い段階で羽ばたいてくれるんじゃないかと思う」

 テレビやインターネットで活躍した元野球評論家らしく、本人に質問をぶつけた。1メートル70の小兵が、大商大で143キロ止まりだった球速を、社会人でいかにして149キロまで伸ばしたのか。尋ねた後の応対に感心させられた。

 「彼の口から出たスピードの上げ方が凄く理解できた。ただただトレーニングをして速くなったわけじゃない。技術に取り組んで、それが根拠になっている。答えをちゃんと持っていた。珍しいというか、僕はなかなか会えたタイプじゃないので。さすがドラフト1位と思いましたね」

 なぜ、どうすればいいかを「言語化」できる能力は、一流アスリートに共通する要素だという。「(カブスの)今永とかはできますけど」。成功者の条件を備えていることがわかり、自然とうれしくなった。

 褒めたのは野球頭脳だけではない。プロの打者を欺けるフォームが魅力だと訴えた。

 「体が小さいように見えるけど、投げる時は大きく見せられる。それはベストなところ。今永投手だったり、素晴らしい左投手の条件を備えている。バッターの目に映る威圧感があると思う」

 体格に似合わぬ剛球に“ギャップ萌え”。頭と技術の両面で、身長1メートル78で今季はメジャーで15勝を挙げた今永に、姿を重ね合わせていた。 (倉世古 洋平)

 ◇伊原 陵人(いはら・たかと)2000年(平12)8月7日生まれ、奈良県橿原市出身の24歳。小1から晩成フレンズで野球を始め、主に投手。八木中では軟式野球部。智弁学園では2年春から背番号11でベンチ入りして2年秋から背番号1、3年春に甲子園出場。大商大では2年秋に最優秀投手、3年春に最多勝、最優秀防御率でベストナインを受賞。NTT西日本では2年連続で都市対抗出場。1メートル70、77キロ。左投げ左打ち。

 【伊原に聞く】

 ――藤川監督と初対面した。

 「やっぱり体も非常に大きいですし、ちょっと圧倒されるというか、オーラみたいなものは感じました」

 ――どんな印象を受けた?

 「やっぱり自分のことをよく見てくださっているなという印象が一番。(僕が投げている)動画を見ていただいていた。今後、自分がどういうことをしていけばいいか、というところも明確におっしゃっていただきました」

 ――社会人の2年間があったからこその指名。

 「NTT西日本に来ていなかったら、こういう結果を生んでなかったかもしれない。大学の指名漏れというのも経験していなかったら、こういう投手にはなれなかったのかもしれない。今まで経験したこと全てが今につながっているんじゃないかなと思います」

 ――目標とする高校の先輩・村上は新人王を獲得。

 「憧れているだけじゃダメだと思うので。同じところに並ぶのか、超えるのか。そこは一つ鍵になるのかなと思います」

 ≪村上が後輩イジり「身長盛ってます」≫村上が智弁学園の2学年後輩でもあるドラフト1位・伊原に早くも“先制口撃”した。甲子園球場での秋季練習後、報道陣の前に姿を現した昨年の新人王は不敵な笑みを浮かべた。「(伊原が1位で)びっくりしましたね。成長もしましたし、球も速くなっていますけど…。身長170センチはたぶんないと思う。たぶん盛っています」とキッパリ。その先輩の言葉を伝え聞いた伊原本人は「ちゃんと身体測定したので(笑い)。会社での測定で170.4センチでした」と完全否定。遠隔で絶妙な掛け合いを見せた智弁学園コンビが来季はともに先発ローテーションを支えるはずだ。