【丹羽 宇一郎】定年後の生活を「満足度100%」にできる人と「不満しかない人」の違いは、意外なところにあった

写真拡大 (全2枚)

元伊藤忠商事会長、そして民間人初の中国大使を務めた丹羽宇一郎さん。仕事に生涯を捧げてきた名経営者も85歳を迎え、人生の佳境に差し掛かった。『老いた今だから』では、歳を重ねた今だからこそ見えてきた日々の楽しみ方が書かれている。

※本記事は丹羽宇一郎『老いた今だから』から抜粋・編集したものです。

なんでも調べてみる

私は毎日、午前中は新聞・雑誌やネットから情報を収集し、午後は集めた情報のうち詳しく知りたいことを調べ、その内容をレポート用紙に書き出すようにしています。ときには、その内容をZoomなどで仕事関係者に話したりすることもあります。

私が最近興味を持ったのは、「ヒトに近い知能を持っている頭のいい動物は何か」というテーマです。犬や猫は人間を理解できるようになるのか、その逆は可能なのか、という疑問が発端でした。ちなみに、私は犬や猫を飼ったことがありません。子供の頃、拾ってきた犬を親に内緒で飼おうとしましたが、すぐ父に見つかり、「親に隠しごとをするとは何事だ」と叱られました。

さて、有名大学の研究室の記録にもあったようですが、頭のいい動物のトップは、やはりゴリラやオランウータンなどの類人猿でした。かつてアメリカで行われた研究では、チンパンジーの仲間のボノボに人間の言葉(英語)を教えると、その意味を理解するようになり、人間の命令で薪を集めてマッチで火をつけたり、特殊なキーボードを使って人間と会話したりするようになったと報告されています。

二位は、クジラ・イルカ・シャチの類。イルカは、体重に占める脳の割合がヒトに次いで大きく、音を発して仲間とコミュニケーションをとることもできるという記録があります。

三位はゾウ。ゾウには、鏡に映った自分の姿を自分だと理解する「鏡像認知能力」があることがわかっています。

四位以下は順に、イヌ、カラス、ネズミ、タコ、アリ。タコがトップ七に入っているとは意外でした。単なる好奇心から調べたことですが、こうした意外性も面白いものです。

ヒトとバナナのあいだ

「ヒトと他の生物の遺伝子はどのくらい共通しているか」について調べたこともあります。

ヒトの全ゲノムが解読されたのは二〇〇三年のことでした。他の生物についてもゲノム解読が進み、両者に共通する遺伝子は非常に多いことがわかっています。

たとえば、ヒトとチンパンジーの遺伝子は約九六%が共通するという研究結果があります。ネコ(人間が飼っているアビシニアンでエチオピア原産。最古の品種)は約九〇%、家畜のウシは約八〇%。科学的に難しいことは私にはよくわかりませんが、人間と他の生物が遺伝子的にかなり近いというのは興味深い。なんと、バナナでさえ約六〇%の遺伝子がヒトの遺伝子と共通していると知り、驚きました。

さらに興味深いのは、ヒト同士の遺伝子の共通性です。ヒトゲノムは約三〇億個の塩基対のDNA(デオキシリボ核酸)からなり、そのうち九九・九%は誰でも同じ遺伝情報をもち、人間としての個体差はわずか〇・一%(三〇〇万個)であることが報告されています。九九・九%は同じ遺伝情報なのだから、人間の能力や適性にはほとんど差がない、と言えます。

他方で、〇・一%の差異は、特定の病気にかかりやすいかどうか、ある薬が効きやすいかどうかなどに関係してきます。このわずかな差異に着目し、個人の遺伝情報にあわせたテーラーメイド医療(個別化医療)を行おうという機運が盛んになってきています。ヒトと他の生物の遺伝子はどれくらい同じなのかという疑問が、個別化医療の話にまで発展していく。こんなところにも定年後の「大人の自由研究」の楽しさがあります。

さらに連載記事〈ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。

ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」