金正恩氏が北朝鮮軍戦車兵の対抗訓練競技を指導した(2024年3月14日付朝鮮中央通信)

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聯合ニュースなど韓国の複数のメディアは18日、情報機関・国家情報院(国情院)の消息筋の話として、「北朝鮮が特殊部隊など合わせて1万2000人ほどの兵士をウクライナとの戦闘に派遣すると決めたことが把握された」と伝えた。

報道を総合すると、国情院はその後にプレスリリースを出し、北朝鮮の特殊部隊の1500人が今月8日から13日にかけて、東海岸の咸興(ハムン)・清津(チョンジン)・舞水端(ムスダン)からロシア海軍太平洋艦隊の艦艇により、ウラジオストクに移動したと公式に明らかにした。

北朝鮮はかつて、ベトナム戦争や第4次中東戦争に空軍部隊を派兵したのをはじめ、アフリカのリビアやウガンダ、コンゴ、中東のシリアなどの友好国に軍事顧問団や小規模な部隊を派遣した歴史がある。ただ、地上部隊の大規模な派兵は今回が初めてだ。

それにしても、本当に1万2千人もの兵力が前線に投入されるのだろうか。この規模だと、通訳の数は少なくとも数百人が必要になると思われるが、北朝鮮にもロシアにも、戦場で通訳できる人材がそんなにいるとは思えない。

もっとも、最高指導者同士の強引な決定であれば、部下たちは従うしかないだろう。

兵員と弾薬不足に悩むロシアと、外貨と先端軍事技術の欲しい北朝鮮は利害が一致している。ロシアは最近、軍に入隊する兵士に、連邦政府と地方政府を合わせて数百万円の一時金を支給しているとされる。モスクワ地域であれば、日本円にして1人400万円だ。

(参考記事:【写真】「北朝鮮の不良弾薬が暴発し吹き飛ぶロシア兵」衝撃の瞬間

これと同等な基準で北朝鮮の派兵が価値判断されるとすれば、総額で数百億円になる計算だ。

一方、金正恩総書記が今月2日に特殊作戦部隊の訓練を視察したことに関する朝鮮中央通信の報道には、次のようなくだりがある。

「敬愛する金正恩総書記は、こんにち、軍隊の特殊作戦武力が共和国の戦争抑止力と戦争遂行能力において中枢的中核力量になることについて再び強調し、特殊作戦武力を最強の戦闘集団に絶え間なく拡大・強化していくことで、われわれの武力の発展により明確な進展をもたらすことに言及し、特殊作戦武力の建設方向に関連する新たな方針を示した」

金正恩氏は先月にも特殊作戦部隊の訓練を視察しているが、それに関する記事でも同様のことが言われている。

北朝鮮において、「戦争抑止力」という言葉は核戦力に対して用いられてきた表現だが、今後は実戦経験を積んだ特殊部隊をそれと同等の軍事手段として位置付けていくつもりなのだろうか。あるいは、そのように強調することで、戦場に向かう将兵を鼓舞したのかもしれない。