第2次森保ジャパンにおいて欠かせない存在となりつつある。北中米W杯アジア2次予選と最終予選の全試合に出場しているただ1人の選手、日本代表MF堂安律(フライブルク)がオーストラリアとの大一番を翌日に控え、ほどよい緊張感と充実感を漂わせた。

「全試合は知らなかった。理由? 体が強いことですかね。両親に感謝します」。そう報道陣の指摘に笑みを浮かべ、「あとは監督がやりたいこと、求めていること、その雰囲気を感じながら、選手に伝えたりピッチに落とし込んだりしてプレーしている。フィットネス的に2次予選より上がっている」と自身が考える要因を挙げた。

 2次予選最後の6月シリーズから採用されている「攻撃的3バック」のシステムでは大半の試合に右ウイングバックで先発し、大量得点にも無失点にも貢献してきた。それに加えサウジアラビア戦では、右シャドーで先発したMF南野拓実が前半のうちに警告を受け、ハーフタイムに退いたのを境に、後半は堂安が右シャドーでプレーした。

「前半に(日本が)点を取れたので(交代選手が)変わったのもあるかもしれないし、所属チームで点を取れているからシャドーをやらせてもらったというのもあると思う」と語るように、まずは持久力面のタフネスと守備の強度で評価を上げていることを感じている様子を見せたうえで、このように続けた。

「守備はベースとしてのもので、攻撃の選手として数字を出していけることが僕の一番の歓び。そこが出てきている。アピールできるから(ピッチに)残してくれたのかな。どのポジションでもやれる自信がある」

 2022年カタールW杯。グループリーグ・ドイツ戦の起死回生ゴールなど2得点を挙げたものの、ベスト16の壁を破れずに敗退し、「エースになりたいとずっと言ってきたけど、リーダーにならなくてはいけない」と覚悟を決めた。以後は、自身のプレーだけでなくピッチ全体を俯瞰する姿勢が顕著になり、この1年はピッチ外の領域でもチームや日本サッカーを意識したコメントが増えた印象だ。

 オーストラリア戦前日のこの日はキャプテンのMF遠藤航が体調不良で練習を欠席。サウジ戦の出場が微妙になる中、「(遠藤は)偉大な選手だけど、どんな選手が出ても戦力を落とさずに出来るのが今の日本の良さ。痛いのは間違いないけど、そこまで選手は気にしていないと思う」と冷静な様子だ。

「航くんがいないからと言って気負うのは良くないと思う。僕は変わらず声をかけていく」という言葉にも“リーダーのひとり”としての気概が見える。

 9月の相手(バーレーン、中国)と比べて一段階上の相手だったサウジアラビアとの試合では、相手にボールを回させながらチームとして奪うポイントを見定めてチャンスをつくり、2-0の勝利を手にした。現在、日本の勝ち点は9。勝ち点4のオーストラリア、サウジ、バーレーンとの差を広げており、W杯予選突破の観点では優位に立っており、オーストラリア戦では今の日本の実力を存分に発揮するマインドでプレーできそうだ。

「対戦相手が強くなっても、攻撃的に行きながらも守備ができるのが僕らがもうひとつ上にいけている要因。あしたもチームとして成長できる試合になる」日本にたくましい10番がいる。

(取材・文 矢内由美子)