『おむすび』写真提供=NHK

写真拡大

 NHK連続テレビ小説『おむすび』が現在放送中。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。

参考:『おむすび』は野球ファン必見! CPがこだわった“投手”佐野勇斗とホークスファンの変遷

 これまで博多ギャル連合(通称:ハギャレン)と距離を取ってきた結だが、第10話で「うちにパラパラ教えてもらえませんか?」と自ら志願。ここから彼女たちと向き合い、ギャルマインドを培っていくことになる。

 舞台となっている2004年は、まだまだパラパラが踊られていた時代。制作統括の宇佐川隆史は「物語でパラパラを扱うのは自然な流れだった」といい、「『ギャルと言えばパラパラ』というイメージもあり、スタッフで取材してみると、非常に奥深いことがわかったんです。これまでパラパラの外見しか見ていなかったけれど、実際の練習のことや、みなさんのパラパラにかける思いを聞くと、私たちが経験してきた青春となんら変わらない熱いものがあった。結の経験を通じて『そういう時代があったよね』と、みなさんの共感を得られるのではないかと思っています」と期待する。

 ハギャレンのキャストは有名無名関係なくオーディションで抜擢されたが、選ばれた4人は奇しくも全員がアイドル活動経験者だった。とはいえパラパラは、彼女たちが踊ってきたダンスとはまるで別物。宇佐川は「シンプルに見えるけれど、どの角度で、どのタイミングで止めればまとまって見えるのか、ミリ単位、0コンマ何秒単位で調整しなくてはいけない。みなさん2カ月ほどみっちり練習されて、個人でも仕事以外の時間はずっと踊っていたと聞いています」とストイックな役作りに感嘆する。

 そして、主演の橋本もまたアイドルグループ・Rev.from DVLの元メンバー。宇佐川は「最初は1時間ほどレッスンで、先生とは一番のサビまで覚えられたら十分ではと話していたら、最後まで行ったんです」と、飲み込みの早さに驚かされたそう。

「橋本さん自身、新しいものに対する興味がものすごくあって、楽しいという思いが練習からすごく伝わってくるんです。“真剣に楽しむ”ということが自然とできる。それこそが、橋本環奈さんが橋本環奈さんであるゆえんなんだろうと思いました」

 第2週には、ギャル文化の一つとして“ギャル文字”も登場。宇佐川は「ギャル文字はある意味、彼女たちが『ギャルである』という宣言のようなものでは」とし、「自分の好きなものを貫く、というマインドにも共通すると思いますが、本当に独特の世界なんですよね。この世のすべてを楽しもうとする、彼女たちらしさの一つなのではないでしょうか」と分析する。

 視聴者にも、「なんじゃこりゃ」と驚いた結と同じ経験をしてほしいというが、ギャル文字を初めて見る人にとって、短時間で解読するのは至難の業。宇佐川は「ギャル文字を映す秒数は迷いました」と吐露し、「理解できるまで映し続けると、15分の尺が足りなくなってしまう(笑)。少し長めに映しているつもりですが、今は再放送やNHKプラスもあるので、いろいろな楽しみ方をしてもらえたら」と呼びかけた。

 また、第6話で「ギャルの掟」として紹介されたのが、【その1:仲間が呼んだらすぐ駆けつける】【その2:他人の目は気にしない。自分が好きなことは貫け】【その3:ダサいことだけは死んでもするな】という三カ条。

 宇佐川は「この3つの掟は決して特殊なものではなく、取材をした多くの方が、同じ様なことを口にした」と振り返り、「すごく羨ましいな、こうやって生きていきたいな、と感じました」と彼女たちの考えに刺激を受けたと打ち明ける。

「私自身、人の目を気にしてしまうし、『自分が本当に好きなものは何?』と聞かれたときに、ポンと答えられるのかなと。最初は、【自分の好きなことを貫け】ってわがままなのかと思ったんです。でも、自分の好きがわかるというのは、自分のことをちゃんと考えられていて、自分を大切にできているということ。だからこそ、目の前にいる相手も、また自分と同じくらい大切なものを抱えてる存在なんだと気づくことができる。それがわかった瞬間に、鳥肌が立ちました」

 ギャルたちを取材する中で生まれた、「年齢差や風貌に関係なく、人としていいなと思える、尊敬できる」という新たな感情。宇佐川は「その思いを、無理に美化せずなんとか物語を通して伝えられたら」と力を込める。

「今を大切に、自分の好きなものが見つかったら、それを大事にしようよと。そんな彼女たちの掟が、視聴者の方にとっても、楽しく今を生きることや、自分を見つめなおすことに、少しでもつながればと思っています」

 次週は、いよいよ本格的にパラパラの練習がスタート。ハギャレンと深く関わることで、結の思いがどう変化していくのか。今後の展開を見守りたい。(文=石井達也)