ファミコンソフトの歴史に新たな1ページ FC版スパルタンXの後発版「KUNG FU」がニンテンドーミュージアムに展示される

写真拡大 (全5枚)

 ファミコンソフトの歴史に新たな1ページです。1985年に発売されたアクションゲーム「スパルタンX(エックス)」の版権切れの後にタイトル等を変えて発売されたもの、と長年ウワサされていた「KUNG FU」が、10月2日にオープンしたニンテンドーミュージアムに展示されていることがわかりました。

【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】

 これまでソフト自体は存在するものの、任天堂からは公式な発表が行われていなかったため、正式なファミコンソフトとしてカウントしていいのかが不明でした。しかし、この度の展示で正規品であることが判明。ファミコンコレクターたちからは驚きの声が上がっています。

 「KUNG FU」について今回話をうかがったのは、非売品ゲームコレクター「じろのすけ」さん。その肩書き通り、なかなか市場に出回らない珍しいソフトの収集を行うだけでなく、著書「非売品ゲームソフトガイドブック」「非売品ゲームソフトガイドブックGOLD」を発売するなど、活動の幅を広げています。

■ 果たして「KUNG FU」は正規品なのか?発売から40年近く経つも裏付けなし

 「スパルタンX」は同名の映画を題材としたゲームであることから、レトロゲームファンなら実際に遊んだことがある方もきっと多いことでしょう。

 版元である「ポニー」から許諾を得て発売され、その「後発品」として製造されたのが、今回話題になっていた「KUNG FU」である……と、いうウワサだけがまことしやかにささやかれていたものの、これが真実であると裏付ける情報はこれまで一切なし、という状態でした。

 それはレトロゲームに詳しいじろのすけさんにとっても同様で、「KUNG FU」の存在は30年以上も頭を悩ませてきた謎のひとつ。

 自称識者の「関係者から聞いた」や、自称裏事情通の「アジアで製造されていたパチモノだと聞いた」といった、確実性に欠ける証言しかなく、逆にレトロゲームのことをよく知らない方ほど自信満々に「再販版だよ」と断言していたりしているなど、情報が錯そうしていたようです。

 当然、これまで任天堂がその存在を公にしたことはなく、公式情報として確認できるのは「スパルタンX」のデータのみ。

 最初に発売された「スパルタンX」の箱の裏にはバーコードが無く、「KUNG FU」の箱の裏にはバーコードがあるので、「KUNG FU」のほうが後に出たと推察したじろのすけさんは、過去に任天堂に問い合わせを行ったこともあったそうですが、明確な回答は得られず。その真相は闇の中……という状況が長く続いていました。

■ ニンテンドーミュージアムへの展示で積年の謎に終止符

 そんな折、開業の運びとなったニンテンドーミュージアム。過去に発売されたソフトの展示が行われている、という一報を耳にした時から、「スパルタンXの展示箇所に、もしかするとKUNG FUが置かれているかも知れない」と予感めいたものを感じ、以前からポストを通して呼びかけを行っていました。

 そして迎えた10月2日のニンテンドーミュージアムオープン当日。じろのすけさんは直接会場に赴くことは叶わなかったものの、ブログ「ファミコンのネタ!!」管理人である「オロチ」さんのポストにより「KUNG FU」が展示されていることが判明。任天堂が初めて、その存在を公式に認めた瞬間であり、ファミコンソフトの歴史に新たなソフトが1本加えられることとなりました。

 その瞬間の心境を「まさに感無量です」と、感慨深げに語ったじろのすけさん。「もう真相が判明することはなく、このモヤモヤとした気持ちを抱えたまま死んでいくのか……ぐらいに思っていました」と半ば諦め気味だったようですが、発売からまもなく40年を迎える今になって、公式のミュージアムに展示されることになろうとは。とても想定していなかったことでしょう。

■ 入手困難なレアソフトが公式に一本追加 オークションサイトでは早速価値高騰

 ちなみに、「スパルタンX」と「KUNG FU」の違いはパッケージや説明書の一部表記やゲームのタイトル画面にとどまり、ゲーム内容には違いはありませんが「型番が異なる点が大きなポイント」と、じろのすけさんは語ります。

 「スパルタンX」は「HVC-SX」ですが、「KUNG FU」は「HVC-KF」でとなっており、ファミコンのコレクターの中には、型番にこだわって集めている方も多いそうなので、入手困難なレアソフトが公式に一本増えたことは、収集にも大きな影響が出ることは必至と言えるでしょう。

 じろのすけさん自身は20年ほど前に、箱・取扱説明書の揃った完品をすでに入手していたようで、当時の価格でも数万円はしたとのこと。念のため、オークションサイトで調べてみたところ、完品は大変希少なようで、近年では数十万円程度で取引されているようです。今後ますます貴重になっていくかもしれません。

 それにしても、約40年間伏せられていた新情報がここにきて明かされるなんて、実にロマンあふれる話ではありませんか。

 ニンテンドーミュージアムにはソフトが展示されているのみで、実際の発売時期や出荷本数についてはいまだ不明の状態となっていますので、もしも詳細なデータが残っているならば、任天堂から何らかのアナウンスが行われることに期待したいところです。

※掲載写真は、じろのすけ(非売品ゲームコレクター)さんが所持しているコレクションの写真です。

<記事化協力>
じろのすけ(非売品ゲームコレクター)さん(@jironosuke99)
オロチ(Famicom Archivist)さん(@oroti_famicom)

(山口弘剛)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛‌ | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2024101002.html