「疲労骨折」とは?症状・治療法・治療期間も併せて解説!【医師監修】

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監修医師:
松繁 治(医師)

経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定脊椎内視鏡下手術・技術認定医

鵞足炎(鵞足滑液包炎)の概要

鵞足炎(がそくえん)とは、膝の内側のやや下側に位置する鵞足や鵞足滑液包(がそくかつえきほう)に炎症を起こす症状です。鵞足は、縫工筋、半腱様筋、薄筋という3つの筋肉の腱が脛骨に付着する部位で、その形状がガチョウの足に似ていることからこの名前が付けられました。
鵞足炎は、膝の内側に負担がかかる動作を繰り返すことで発症しやすく、特にスポーツや階段の上り下りなど膝の屈伸を繰り返す運動が原因で発症します。主な症状は、膝の内側の痛みや腫れ、突っ張り感があり、初期では運動を始めると違和感があるものの、ウォーミングアップで身体が温まると楽になることが多いです。一方、症状が進行すると運動中や安静時にも痛みが続くことがあります。

鵞足炎(鵞足滑液包炎)の原因

鵞足炎の主な原因は、膝の過度な使用や不適切な動作です。具体的な内容を以下で解説します。

膝の過度な使用

スポーツにより過度に膝を使うことで鵞足の摩擦が増えて炎症を起こしやすくなります。その結果、鵞足炎を引き起こしやすいです。特に、膝の屈曲や内旋動作が鵞足への負担となり、炎症を引き起こすことが多いです。また、膝の使い過ぎは、鵞足に付着する筋肉の柔軟性低下につながり、鵞足炎のリスクが高まります。さらに、変形性膝関節症や内側半月板損傷などの既往がある場合も、鵞足炎の発症リスクが高まります。

鵞足炎(鵞足滑液包炎)の前兆や初期症状について

鵞足炎の前兆や初期症状は、膝の内側に感じる違和感や軽い痛みから始まります。特に、運動を始めた時に膝の内側に鋭い痛みを感じますが、ウォーミングアップで身体が温まると痛みが和らぐことが多いです。しかし、運動を続けると再び痛みが現れ、次第に痛みが強くなっていきます。

鵞足炎の初期症状である膝内側の痛みや違和感を感じた場合には、早めに対処することが重要です。特に、運動を続けることで痛みが悪化する場合には、運動を中止し膝を安静に保つことが必要です。また、膝の内側に腫れや突っ張り感を感じた場合には、アイシングや湿布を行い、炎症を抑えることが推奨されます。

以上の症状が見られる場合、整形外科を受診して、適切な検査・治療を受けることがおすすめです。

鵞足炎(鵞足滑液包炎)の検査・診断

鵞足炎の検査・診断は、主に問診・視診・触診と画像検査が行われます。

問診・視診・触診

問診・視診・触診では、患者さんの症状を詳しく聞き取り、膝の内側に圧痛や腫れがあるかどうかを確認します。膝の内側に圧痛がある場合や、膝の曲げ伸ばしで引っかかるような違和感を感じる場合には、鵞足炎の可能性が高いです。

画像検査

画像検査では、超音波やMRI検査が一般的に用いられます。超音波検査では、鵞足の腫大や血流増加を確認し、MRI検査では、鵞足の腫大や周囲脂肪の浮腫性変化などの所見を観察可能です。これらの画像検査を元に鵞足炎であるか診断が確定されます。

また、鵞足炎の診断には、他の膝障害との鑑別も重要です。例えば、骨や靭帯、半月板損傷の疑いがある場合には、レントゲンやMRI検査を行い、他の疾患が併発していないか確認します。鵞足炎は、疲労骨折の症状と似ているため、診断には画像検査が必須です。

鵞足炎(鵞足滑液包炎)の治療

鵞足炎の治療は、保存療法・薬物療法・理学療法があり、症状の重症度や患者さんの生活スタイルに応じて異なります。以下に各治療法と対象となる患者の症状を紹介します。

保存療法

軽度の鵞足炎では、安静やアイシング、湿布などの保存療法が行われます。運動を中止し、膝を安静に保つことで炎症を抑え、痛みを軽減します。また、運動後にはアイシングを行い、炎症を抑えることが必要です。

薬物療法

中等度の鵞足炎の場合には、薬物治療が行われます。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の投与が一般的で、これにより炎症を抑え、痛みを軽減します。また、ステロイド注射はNSAIDsより強い抗炎症作用があり、効果が早期に現れることが多いです。しかし、繰り返し投与すると感染のリスクが高まり、腱が切れることもあるため、注意が必要です。

理学療法

重度の鵞足炎の場合には、理学療法が必要となることがあります。理学療法では、膝や股関節周囲の筋肉を強化し、柔軟性を高めるためのトレーニングが行われます。殿筋や膝周囲筋を鍛え、下腿が外旋することを防ぐことが鵞足炎の予防策です。

鵞足炎(鵞足滑液包炎)になりやすい人・予防方法

鵞足炎になりやすい人は、特にスポーツをしている人です。ランニングやジャンプ動作、サッカーボールのキックなど、膝の屈伸を繰り返す運動を行うことで発症しやすくなります。また、膝が内側に入るニーインと呼ばれる姿勢や、X脚の人もリスクが高いです。さらに、中高年でも変形性膝関節症や内側半月板損傷などの既往がある場合も、鵞足炎の発症リスクが高まります。

鵞足炎の予防には、適切なトレーニング、最適なシューズやランニング環境の選択、膝関節・股関節周囲の筋力強化の3つが重要です。

適切なトレーニング

膝の内側に負担がかかる動作を改善し、適切な動作を習得するのが大切です。股関節周囲や膝関節周囲の筋肉を鍛えることで膝への負担を減らします。また、筋肉の柔軟性を保つためのストレッチや運動前後にはウォーミングアップとクールダウンを行い、特に大腿の前面・後面・内側の筋肉の柔軟性を維持します。

適切なシューズやランニング環境

適切なシューズの選択やランニング環境の改善も重要です。ランニングシューズを選ぶ際には、足の形やランニングフォームに合ったものを選ぶことが推奨されます。特に、膝が内側にぶれる動きを防ぐためには、インソールの使用やサポーターの活用がよいです。また、ランニングのトレーニングを行う際には、できるだけ柔らかい地面で膝への衝撃を減らしながら行いましょう。

膝関節・股関節周囲の筋力強化

膝関節・股関節周囲の筋肉を強化することで、膝の内側にかかる負担を軽減し、鵞足炎の発症リスクを低減することができます。また、内側ハムストリングス(半膜様筋と半腱様筋)と内転筋(薄筋)の強化により下腿が外旋することを防ぐことが鵞足炎の予防策となります。


関連する病気

疲労骨折

参考文献

内側型変形性膝関節症に合併した鵞足炎の発生機序