「天井から滴るみそ汁」「おじさんが悪い」…瑠奈被告の癇癪を咎めなかった、両親が犯した本当に重い罪《札幌・首切り事件》

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2023年7月、札幌・ススキノのラブホテルの一室から首のない男性の遺体が見つかった猟奇殺人事件。殺人や死体損壊の疑いで田村瑠奈被告が逮捕、起訴されたほか、その両親も幇助の疑いで逮捕、起訴されている。

10月1日、母親・浩子被告の第4回公判で証拠として流された音声データには、瑠奈被告が、父親の修被告を罵倒する錯乱ぶりが記録されていたが、傍聴したジャーナリストによると、その音声に「違和感」を覚えたという。

前編記事「『I want kill you every night!』『Fuck!』…法廷に響いた瑠奈被告の慟哭。7分間の悪夢の記録《札幌・首切り事件》」に引き続き、詳報していく。

サイレンのような叫び声

「前回、コロナ感染で出廷できなかった父親・修被告の証人尋問が行われました。弁護側の証拠として、裁判の冒頭で修被告をののしる瑠奈被告の音声が再生されました。瑠奈被告の声は少し甲高くて、普通の若い女性のものでした」(事件を傍聴したジャーナリスト、以下「」も)

初めて公開される瑠奈被告の肉声だった。その錯乱ぶりについは、前記事ですでに伝えている。

2023年1月22日の音声では修被告に対し、浩子被告を「熟女系風俗に売り飛ばせ」というニュアンスの内容を迫っていたことがうかがえた。英語を交えながら訴える瑠奈被告に対し、修被告は毅然として断っていた。

瑠奈被告に妹はいないのに…

「修被告が『それはしません』と答えると、瑠奈被告は『お前がさあ、妹を殺してさあ、唯一の、唯一の見方だった私が妹と一緒にいたのにさあ』『ちょっとでも力をつけて、てめえらを殺してやる。ずっとそう思って生き延びたんだよ!私の妹と私は!』 『あんたの責任は、あんたが私の首絞めて、腹刺して、あんたのresponsibility(責任)だよ。それもしないくせに。しろよ、腰抜け!』を叫び、その後クリニックへの受診を進める修被告の言葉にかぶせるかのごとく、サイレンのような悲鳴を上げていました」

何度も妹、と繰り返していたが、そもそも瑠奈被告に妹はいない。瑠奈被告は両親に対し、自分が「シンシア」や「ルルー」などであり、「瑠奈」ではないと主張していたことは、これまでの公判で明かされている。

「修被告いわく、シンシアは『人格というよりも魂』と瑠奈被告が言っており、死んだ瑠奈の身体にシンシアという人が借りているだけ。これが10年くらい続いていると第2回公判で説明していました。

年上を姉と呼び、年下だった瑠奈は妹になった。2人の間に血縁関係はなく、魂での姉妹関係だったことも述べていました」(修被告)

瑠奈被告が「シンシア」になったことで、両親は通常の親として振る舞うことが難しくなった。修被告のことを「ドライバーさん」、浩子被告を「彼女」、そして自分のことは「お嬢さん」とそれぞれ呼んでいたこともまた、すでに報じられている通りだ。

映画やドラマで自己学習した英語

「音声で流されたのは、浩子被告の初公判で弁護側が説明した瑠奈被告の『ゾンビ妄想』のうちのシンシアだったとみられます。瑠奈被告自身はすでに死んでおり、その身体(死体)の中には5〜6人の魂が入り込んでいる、主張したものにあたります」

傍聴した前出のジャーナリストは「気になることがあった」と明かす。

「シンシアとみられる人格の時は、英語で話すこともあったようですが、勉強をしていない瑠奈被告は難しい言葉は英語で話せない。だから途中から日本語になっていました」

さらに裁判では、修被告のスマートフォンなどで瑠奈被告が検索した履歴についても指摘された。

「loveとかam、meet、get、takeなどの英単語の過去形を調べていたこともあった。ただ、瑠奈被告は不登校で学校に通えていないため、英文法は得意ではないと修被告は述べていました。『(英語を)しゃべるのは得意だけど、文法と言われると難しい』とも説明しており、勉強方法を弁護側から尋ねられると、『動画やドラマを見たりして自己学習』と答えていました」

そのため、瑠奈被告が英語で訴えていた言葉は、何らかのドラマや映画のセリフだった可能性もある。

「6時間の音声、すべてを聞いていないため何とも言えませんが、ホラー作品のセリフのようなやり取りだと感じました。悪魔が憑依する作品にありがちな……。気に入った作品は繰り返し見ていて、感情が昂ったときにそのセリフが出てくるほど、世界観に入り込んでいたのではないでしょうか」

前出のジャーナリストによると、音声の瑠奈の言動はどことなく芝居がかっているようにも感じられた、という。

天井から滴るみそ汁。でも、両親は咎めず

「錯乱状態のどこまでが疾患によるものなのかはわかりません。ですが、生きづらさを感じていた瑠奈被告は、いつのころからか、ほかの誰かを演じることで心の安寧を図ってきたのではないでしょうか」

この日、浩子被告の兄の証人喚問も行われ、瑠奈被告の子どものころの様子について証言した

「3人を見たのは、瑠奈被告が幼稚園の時だったそうです。食事中、みそ汁が天井に着くくらい激しくみそ汁椀をぶちまけたり、ほかの子がゲームしているとき途中でやめたなど、当時の瑠奈被告の様子を説明。瑠奈被告の両親は咎めることはなく、兄は驚いたことを明かしていました」

浩子被告の兄の証言はさらにつづく。瑠奈被告が小学生くらいのときのことだ。浩子被告の自宅に電話をすると、瑠奈被告が電話に出た。当初は「おじさんだよ」「勉強をしているか」など他愛もない会話をしていたというが、そのうちに瑠奈被告は一方的に「おじさんが悪い」などと言いだし、浩子被告に電話を替わったこともあったという。

修被告らは瑠奈被告に対し、「子どものころはきちんとしつけをしてきた」と述べていたが、第三者からするとそうは見えなかったようだ。瑠奈被告の行動を咎めることはなく、幼少期から「瑠奈ファースト」を貫いてきた様子がうかがえた。

そうした生活をしていれば当然のことながら、周囲との軋轢が生じる。やがて世間とのズレが生きづらさになり、逃れるために「別の自分」を演じ始めたのではないか。

被害者への復讐も、映画の登場人物の一人になりきっていたからこそ、躊躇なく成し遂げれたのかもしれない。

むしろ、演じていたのは瑠奈被告だけではない。修被告も浩子被告も良き父、良き母を演じていた。その結果、異常ともいえるいびつな家族関係が作り出されたのだろう。両親が犯した罪は大きい。次回公判は11月5日に予定されている。

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