山地農民の知恵を集めた「イネ・魚・アヒル共生システム」 中国貴州省

貴州省丹寨県卡拉村で稲花魚を捕る村民。(9月5日撮影、丹寨=新華社配信/楊武魁)

 【新華社貴陽10月2日】中国貴州省南東部、苗嶺山脈の奥深くに位置する卡拉(カラ)村では秋を迎え、一帯が黄金色に染まり、棚田のあちこちで人々が魚を捕り、イネを刈る光景が見られる。

山地農民の知恵を集めた「イネ・魚・アヒル共生システム」 中国貴州省

貴州省丹寨県卡拉村で稲花魚を捕る村民。(9月5日撮影、丹寨=新華社配信/楊武魁)

 「稲花魚」は地元のコイの一種で、成長すると大人の手のひらほどの大きさになる。夏になるとイネの苗と一緒に水田に放され、水面に落ちたイネの花を食べながら成長し、ミャオ族の人々から「稲花魚」と呼ばれている。

山地農民の知恵を集めた「イネ・魚・アヒル共生システム」 中国貴州省

貴州省丹寨県卡拉村で稲花魚を捕る村民。(9月5日撮影、丹寨=新華社配信/楊武魁)

 同村のある黔東南(けんとうなん)ミャオ族トン族自治州丹寨県竜泉鎮は、貴州省のミャオ族主要集落の一つで、同鎮は今夏、地元住民の増収を後押しするため、425ムー(約28ヘクタール)の稲花漁産業プロジェクトを立ち上げ、累計4.25トンの稚魚を村民に支給した。試算では、同鎮の「稲花魚」の生産量は8.5トン、生産額は25万5千元(1元=約20円)に達する見込みという。

山地農民の知恵を集めた「イネ・魚・アヒル共生システム」 中国貴州省

貴州省丹寨県卡拉村で稲花魚を捕る村民。(9月5日撮影、丹寨=新華社配信/楊武魁)

 水田でイネを育て、魚を養殖し、アヒルを飼育するのは貴州省のミャオ族とトン族の村落で長く続いてきた習慣で、米を主食、魚をおかずとする昔の人々の「飯稲羹魚」と呼ばれる飲食習慣に由来する。その後、同省の黔東南ミャオ族トン族自治区従江県などで民族文化が融合すると、その他の地域に広がり、イネと魚、アヒルによる複合生産システムへ発展した。

山地農民の知恵を集めた「イネ・魚・アヒル共生システム」 中国貴州省

貴州省丹寨県卡拉村で捕った稲花魚を見せる村民。(9月5日撮影、丹寨=新華社配信/楊武魁)

 従江県のイネ・魚・アヒル共生システムは、豊かな生物多様性や独特な農業生産方式、素朴な民族文化の伝統により、国連食糧農業機関(FAO)から「世界農業遺産(GIAHS)」に認定された。

 同じく苗嶺山脈に位置する台江県は、高い山と河谷が入り組み、県全体の1人当たり耕地面積は1ムー(約670平方メートル)に満たないが、ミャオ族の人々はイネ・魚・アヒル共生システムにより、山間部の限られた農地資源を有効利用している。

山地農民の知恵を集めた「イネ・魚・アヒル共生システム」 中国貴州省

貴州省丹寨県卡拉村で捕った稲花魚を見せる村民。(9月5日撮影、丹寨=新華社配信/楊武魁)

 同省水産研究所の張顕波(ちょう・けんは)研究員は、同システムは複数の利益を生み出す複合農耕システムであり、人口が多く耕地が少ない開発上の問題を緩和し、農民の収入を増やし、イネ・魚・アヒルの互恵的な共生を促進し、生物多様性を効果的に保護することができるとの見解を示した。

 張氏はまた「魚のふんはイネの成長に必要な無機窒素やリンとなり、イネの花やもみは魚の餌になる。アヒルは水田の害虫を食べるほか、泥をかき混ぜる役割も果たす」と説明した。(記者/駱飛)