「宝島さんのところに出店すれば売れそうだなーって」《夫婦殺害事件から5ヵ月》テナント強制退去で苦境に...「宝島ロード」は今どうなっているのか

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今年4月に東京・上野の繁華街で飲食チェーンを多店舗展開していた「サンエイ商事」経営者の宝島龍太郎さん(当時55歳)と幸子さん(当時56歳)が殺害されて栃木県那須町の河川敷に遺棄された事件は、衝撃的な結末を迎えた。

警視庁と栃木県警の合同捜査本部は6月27日、夫妻の長女の宝島真奈美被告(31歳)を逮捕。東京地検は7月18日、すでに逮捕されていた長女の内縁の夫、関根誠端被告(32歳)を含めた計7人を殺人罪で起訴したのだ。

事件から5ヵ月経った今、宝島夫妻が手がける飲食店が17店舗ほど営業していたことで「宝島ロード」と呼ばれていた上野の繁華街はどうなっているのか。現場を改めて取材した。

宝島夫妻と経営を巡って対立していた

「ここら一帯は『宝島ロード』なんて呼ばれていたけど、それも過去の話だよ。事件以降、宝島さんの店は4店舗以外すべて休業してるし、最近はそこに別の飲食チェーンも入ってきてる。この通りにあった店も別の中国人オーナーの焼肉屋さんに変わったし、年末にかけて新しい飲食店も増えていくんじゃないかな」

かつて宝島夫妻が手がける飲食店が乱立していた「宝島ロード」を見つめながら、そう近隣店舗の店主はつぶやいたーー。

4月16日、栃木県那須町の河川敷で男女の遺体が燃えているのが見つかったことで事件は発覚した。遺体の身元は、東京・上野の繁華街で飲食チェーンを多店舗展開していた「サンエイ商事」経営者の宝島龍太郎さん(当時55歳)と幸子さん(当時56歳)。どちらも両手が結束バンドで縛れていて、顔に粘着テープが巻かれているという極めて残虐な犯行だった。

そんな猟奇的な殺人事件は、発生から3週間が経ち急展開を見せる。警視庁と栃木県警の合同捜査本部は「サンエイ商事」幹部社員の関根誠端被告(32歳)を死体損壊の疑いで逮捕、6月14日には殺人の疑いで再逮捕した。

「関根被告は事件の首謀者とみられていて、指示役と仲介役を通して、東京都品川区の空き家まで宝島夫妻を連れていき、実行役の姜光紀被告(21歳)、若山耀人被告(20歳)に殺害させたとみられています。

関根被告は宝島夫妻が経営する飲食店のマネージャーを務めていましたが、最近ではその経営を巡ってたびたび対立しており、店を思い通りに経営するために殺害を計画したとみられています」(全国紙社会部記者)

往時の盛り上がりが夢だったかのような「宝島ロード」の現在

関根被告は事件以前まで宝島夫妻の「番頭役」を担っており、その全身に刺青が入った派手な見た目から“上野界隈”では有名人だった。だが、事件はこれだけでは終わらない。警視庁は6月27日、宝島夫妻の長女で、先に逮捕された関根被告の内縁の妻でもある宝島真奈美被告(31歳)を殺人容疑で逮捕に踏み切ったのだ。

「事件の黒幕とされる関根被告が逮捕されたことで、当然のことながら真奈美被告は捜査線上に浮上していましたが、防犯カメラの映像などから現場に立ち会っていないと見られていました。

そこで彼女のスマホを慎重に解析したところ、事件発生前に関根被告が真奈美被告に対して『あいつら消してやる。ここで歩けなくさせてやる』とメッセージを送っていたことが判明し、事件に関与していたとみて逮捕に踏み切りました」(同上)

東京地検は7月18日、関根被告や真奈美被告を含む総勢7名を殺人罪で起訴。今後の裁判で真相は明らかになるが、事件から5カ月経った今、サンエイ商事の飲食店がひしめき合う「宝島ロード」はどうなっているのか。

9月中旬、小雨が降りしきる上野の繁華街を歩くと、そこは事件前とは大きく様変わりしていた。最盛期には17店舗もの系列店があったというが、現在も営業しているのはわずか4店舗だけ。さらに休業中の店舗に関しては、サンエイ商事とは関係ない居酒屋や焼肉屋などがオープンしており、外国人従業員が片言の日本語で「焼肉食べ放題1980円、イカガデスカー?」と元気に呼び込みしている。

それ以外にも、すでに看板が外されていたり清掃業者や改装業者が出入りしている店舗もあり、かつて複数の系列店が乱立していた「宝島ロード」は壊滅状態にあった。

「宝島さんのところに出店すれば売れそうだなーって」

事件以降、いったい何があったのか。サンエイ商事関係者は「現在では4店舗以外のテナントは借り手がつくまで待っている状況」だという。

「あの事件以降、従業員数も140人から40人にまで減ってアルバイトもギリギリの人数なので、店舗数を減らすためにテナントを手放しました。それと『ホルモン番長』が入ってた一部テナントに関しては、入居していたビルのオーナーに追い出された感じです。

とはいえ現在も営業中の4店舗に関しては、事件以降もお客さんが減ったわけではありません。年末の忘年会シーズンに向けて、これからまたお客さんは増えていくと思ってます」

夜の9時を超えるころには、サンエイ商事の飲食店跡地にオープンした居酒屋や焼肉屋には、会社帰りのサラリーマンや外国人観光客でかなりの賑わいを見せている。9月にオープンしたばかりの居酒屋の従業員もこう満足気だ。

「宝島さんのお店の跡地で商売することに不安はなかったですね。やはり場所がいいから『ここに(店を)出せば売れそうだなー』って思ってオープンしました。お客さんの中にはたまに『ここ以前までは宝島さんの店だったよ』とか言う人もいますが、客入りは順調です」

8月にオープンした焼肉屋の前で呼び込みをしていた外国人従業員もこう語る。

「ここは宝島さんと関係ないよ、まったく別の会社。ああいう事件があったけど、別に『お客さんくるのかな?』みたいな不安はなかったね。ここら辺は外国のお客さんがたくさん来るし、人が多いから店を出せば儲かる。オープンしてからすごい繁盛してるよ」

果たして宝島ロードの行き着く先とはーー。後編『「誠端さんの下に骨を埋める覚悟で働いてる」宝島ロード従業員が語る、全身タトゥー男”関根被告”の素顔…「やったことは悪いけど人としては好き」「将来また一緒に働きたい」《宝島さん夫妻殺害事件から5ヵ月》』では、苦難を強いられている「サンエイ商事」の現役従業員に今の素直な思いを聞いた。

「誠端さんの下に骨を埋める覚悟で働いてる」「愛情があり、尊敬できる人だった」《宝島さん夫妻殺害事件から5ヵ月》“宝島ロード”従業員が語る、関根被告の「意外な素顔」