女子野球指導も「アップデートを」 強制的練習に疑問…中学生の自発生む“1時間半”
今夏創部、野球が好きな女子中学生が集まった「広島ピースガールズ」
女子野球界に新風を吹きこむチームが、広島市に誕生した。「広島ピースガールズ」は、今年8月に結成された中学女子軟式野球チーム。野球を楽しみながら強くなることを掲げ、中学生世代の選手強化とともに、中学入学後も野球を続けたい女子小学生の受け皿としても期待されている。
指揮を執る小林祐哉監督は、甲子園出場経験もある元高校球児。チーム結成にあたり、時代に合った指導体制を整えることを第一に考えた。その背景にはアップデートされない指導法への疑問があった。時間が長い上に強制的な練習が多いことに疑問を感じ、「野球を嫌いになってほしくない。女子にもちゃんとした野球を体感させてあげたい」とチームを立ち上げた。
広島ピースガールズでは基礎練習を大切にしている。「基礎は飽きやすいので、飽きさせることなく、楽しく取り組んでもらうことが自分たちの課題です」。チームには初心者の選手もいる。だからこそ、小林監督は正しい技術を身に付ける練習に工夫を凝らしている。
その一環として、練習時間中は絶えず流行の曲が響いている。選手は音楽に合わせてウオーミングアップを行い、キャッチボールや守備練習に汗を流す。「楽しく前向きな気持ちで練習してもらいたい。また、音楽にはリズム感を養えるメリットがあります」と小林監督。リズム感を高めることで、運動能力を向上させるのも狙いだ。
大切なのは“考えること”…早くも選手たちに見えてきた変化
チーム練習は土日の週2回。午前9時から約8時間行うが、最後に1時間半の自主練習の時間を設けている。その理由について小林監督は「選手自身に何が課題かを考えてほしいのと、指導者を“使う”ことを覚えてほしい」と話す。自主練習時は、監督やコーチは選手を見守り、アドバイスを求められた時に対応する態勢にしている。
「高校時代、常に考えろと言われてきました。例えば守備の際には、投手が1球投げるごとに7つのことを想定しなさいと。最初はできませんでしたが、習慣化することで無意識にできるようになりました」。考えることの徹底は、小林監督にとって大きな財産になっているという。
自ら考える大切さを説き続けることで、選手自身にも変化が見えている。季節に合わせて音楽を変えたい、こんな練習をやってみたい、選手の誕生日をこんな風に祝いたいなど、選手が自発的に監督やコーチにアイデアを投げかけることが多くなったという。
「選手がやりたいことを率先して取り入れるようにしています。やってみれば、それが良いか悪いかに気づきやすいですし、駄目だったときに納得できると思います」。挨拶や礼儀、技術指導とともに、選手の思いを尊重し、1人1人の声にしっかりと耳を傾けている。
「野球が相当好きじゃないと、女の子が中学生になって野球チームに入ろうとは思わない。なので野球を嫌いになってほしくないですね。いろんなことを経験させてあげたいと思っています」と小林監督。野球を楽しむことが大前提、そのうえで選手の未来を考えた指導を続けている広島ピースガールズの取り組みは、女子野球の裾野拡大にもつながっていくはずだ。(真田一平 / Ippei Sanada)