山田祥平のニュース羅針盤 第455回 新iPhoneやCopilot+ PC、2024年はまさに「オンデバイスAI元年」
毎年恒例のiPhoneの新型が発表された。iPhone 16シリーズは、すでに予約が開始されていて、9月20日に各キャリアから発売される。もちろんアップル自身による直販もある。価格はキャリアごとにちょっとずつ違うし、キャリアからではなく、アップルストアで購入することもできる。
本体に「カメラコントロールボタン」を搭載したiPhone 16および16 Plusが登場。カラーはブラック、ホワイト、ピンク、ティール、ウルトラマリンの5色
高性能のiPhoneシリーズとなるiPhone 16 ProおよびiPhone 16 Pro Max。画面が大型化したほか、望遠カメラの性能もアップした
○Apple Intelligence、日本での利用は「今後1年にわたり開始」
今年(2024年)のトレンドといってもいいAIについて、アップルではApple Intelligenceと呼ばれるAI機能の搭載を高らかにアナウンス、そのために設計された史上初のiPhoneだとしている。
しかし実装についてはハードウェアの発売には間に合わず「Apple Intelligenceは、iPhone 16の全モデル、iPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Maxで、iOS 18のアップデートとして年内にベータ版で利用できるようになります。Siriとデバイスの言語を英語(米国)に設定する必要があります。一部の機能の公開と日本語、フランス語、スペイン語などの追加言語への対応は、今後1年にわたり開始される予定です」という注釈つきでの発売となる。
つまり、米国内の英語話者ユーザーにとってはベータ版であるにしても年内にはなんとか試せるようになるものの、日本語を使う日本人にとっては来年を待たなければならない。
1月とか2月くらいなら待てるが、今後1年ということで、来春以降になるようなら、次のiPhoneまではガマンするべきかという気がして、今年のiPhoneは見送るつもりという声もあちこちから聞こえてくる。
もちろんかつてのように、毎年買い替えというユーザーは少なくなっている。愛用スマホは壊れなければ買い換えないというのが普通にもなりつつあるし、なにしろ、iPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Maxのような上位機種のユーザーならアップデートで使えるようになる。
○プライバシーへの配慮で広がるオンデバイスAI
ここ2年くらいで急速に浸透し、認知度が高まったAIサービスの多くは、個々のデバイスの能力とはあまり関係のないところで使われていた。
なぜなら、ほとんどのサービスはクラウドサービスとして、デバイス側で音声やテキストで入力されたプロンプトと呼ばれる問いかけを、インターネット経由でいったんサービス側に送り、雲の向こうで処理した結果が送り返されてくる仕組みだったからだ。ChatGPTなどを普通に使う分には数世代前のハードウェアと最新のハードウェアで使い勝手はそう変わらないはずだ。
ところが、プライバシーや機密保護といった観点から見ると、これでは安心して使えないという声が高まってきた。だから、この1年ほどで、ある程度のAI処理は端末の中だけで完結しようという方向に流れていったのだ。いわゆるオンデバイスAIとか、ローカルAIと呼ばれるものだ。
たとえば、Google翻訳などを使う場合、オンラインで各国語の翻訳ができるのはもちろん、データをダウンロードしておけばオフライン、すなわちインターネットにつながっていない状態でも翻訳ができる。
機密情報がやりとりされる対面の会議で、翻訳アプリを使ったら、その会話の内容が外部に送られ、翻訳されて戻ってくるというのでは、絶対に外部には情報が流れないと宣言されていたとしても不安だろうし、企業同士の取引にかかわるどころか、ある人物と会って話をしていたことやその内容が外に漏洩するとまずいというのは、プライベートでもありがちなシチュエーションだ。
翻訳程度のことではデバイスの処理能力にはそれほどの負荷はないようだが、長文の要約や、自然語によるあらゆる質問に答えてもらったり、テキストやグラフィックスを生成したりするような高度なAI処理となると、それなりのAI処理を想定したデバイスであることが求められる。
仮に、多少時間がかかってオンデバイスで処理ができたとしても、多大な電力を消費し、バッテリ運用でのインパクトが大きすぎて実用にならないとか、半端でない発熱などでの支障も出てくる可能性がある。
○Intelの最新Core Ultra シリーズ2プロセッサもAI強化
実用レベルでオンデバイスAI処理ができるようにするには、あらかじめ、その使い方を想定したハードウェアが必要だ。今後のモバイルデバイスは、iPhoneに限らず、Androidスマートフォンでも、また、モバイルノートPCなどでもオンデバイスAI処理ができることが求められるようになるだろう。
先行しているQualcommやAMDのあとを追うように、インテルもローカルAI対応の新プロセッサとしてCore Ultraプロセッサー(シリーズ2)を発表、OEM各社は9月末から順次Copilot+ PCの出荷を開始する。ローカルでAI処理ができるWindows PC用のハードウェアで、今後はそれに対応した新たなAIサービスがたくさん登場することになるだろう。
つまり、2024年という年は、まさにオンデバイスAI元年であり、その使い方を想定したハードウェアが一気に登場した、あるいはする年でもある。つまりパーソナルコンピューターのユーセージモデルに少なからぬ変化が起こる。
iPhoneの新型発売は毎年9月。この時期は絶対で、変えるのは不可能といっていいくらいなスケールのエコシステムになっている。
各方面が準備完了のステータスになるのを待つために、今年は暮れの発売というわけにはいかない。それが大人の事情だ。やんちゃなイメージのあるアップルではあるが、業界と市場とテクノロジーの間に立ちすくむ今年の振る舞いには、ちょっと意外な印象も受けた。
著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら
本体に「カメラコントロールボタン」を搭載したiPhone 16および16 Plusが登場。カラーはブラック、ホワイト、ピンク、ティール、ウルトラマリンの5色
○Apple Intelligence、日本での利用は「今後1年にわたり開始」
今年(2024年)のトレンドといってもいいAIについて、アップルではApple Intelligenceと呼ばれるAI機能の搭載を高らかにアナウンス、そのために設計された史上初のiPhoneだとしている。
しかし実装についてはハードウェアの発売には間に合わず「Apple Intelligenceは、iPhone 16の全モデル、iPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Maxで、iOS 18のアップデートとして年内にベータ版で利用できるようになります。Siriとデバイスの言語を英語(米国)に設定する必要があります。一部の機能の公開と日本語、フランス語、スペイン語などの追加言語への対応は、今後1年にわたり開始される予定です」という注釈つきでの発売となる。
つまり、米国内の英語話者ユーザーにとってはベータ版であるにしても年内にはなんとか試せるようになるものの、日本語を使う日本人にとっては来年を待たなければならない。
1月とか2月くらいなら待てるが、今後1年ということで、来春以降になるようなら、次のiPhoneまではガマンするべきかという気がして、今年のiPhoneは見送るつもりという声もあちこちから聞こえてくる。
もちろんかつてのように、毎年買い替えというユーザーは少なくなっている。愛用スマホは壊れなければ買い換えないというのが普通にもなりつつあるし、なにしろ、iPhone 15 Pro、iPhone 15 Pro Maxのような上位機種のユーザーならアップデートで使えるようになる。
○プライバシーへの配慮で広がるオンデバイスAI
ここ2年くらいで急速に浸透し、認知度が高まったAIサービスの多くは、個々のデバイスの能力とはあまり関係のないところで使われていた。
なぜなら、ほとんどのサービスはクラウドサービスとして、デバイス側で音声やテキストで入力されたプロンプトと呼ばれる問いかけを、インターネット経由でいったんサービス側に送り、雲の向こうで処理した結果が送り返されてくる仕組みだったからだ。ChatGPTなどを普通に使う分には数世代前のハードウェアと最新のハードウェアで使い勝手はそう変わらないはずだ。
ところが、プライバシーや機密保護といった観点から見ると、これでは安心して使えないという声が高まってきた。だから、この1年ほどで、ある程度のAI処理は端末の中だけで完結しようという方向に流れていったのだ。いわゆるオンデバイスAIとか、ローカルAIと呼ばれるものだ。
たとえば、Google翻訳などを使う場合、オンラインで各国語の翻訳ができるのはもちろん、データをダウンロードしておけばオフライン、すなわちインターネットにつながっていない状態でも翻訳ができる。
機密情報がやりとりされる対面の会議で、翻訳アプリを使ったら、その会話の内容が外部に送られ、翻訳されて戻ってくるというのでは、絶対に外部には情報が流れないと宣言されていたとしても不安だろうし、企業同士の取引にかかわるどころか、ある人物と会って話をしていたことやその内容が外に漏洩するとまずいというのは、プライベートでもありがちなシチュエーションだ。
翻訳程度のことではデバイスの処理能力にはそれほどの負荷はないようだが、長文の要約や、自然語によるあらゆる質問に答えてもらったり、テキストやグラフィックスを生成したりするような高度なAI処理となると、それなりのAI処理を想定したデバイスであることが求められる。
仮に、多少時間がかかってオンデバイスで処理ができたとしても、多大な電力を消費し、バッテリ運用でのインパクトが大きすぎて実用にならないとか、半端でない発熱などでの支障も出てくる可能性がある。
○Intelの最新Core Ultra シリーズ2プロセッサもAI強化
実用レベルでオンデバイスAI処理ができるようにするには、あらかじめ、その使い方を想定したハードウェアが必要だ。今後のモバイルデバイスは、iPhoneに限らず、Androidスマートフォンでも、また、モバイルノートPCなどでもオンデバイスAI処理ができることが求められるようになるだろう。
先行しているQualcommやAMDのあとを追うように、インテルもローカルAI対応の新プロセッサとしてCore Ultraプロセッサー(シリーズ2)を発表、OEM各社は9月末から順次Copilot+ PCの出荷を開始する。ローカルでAI処理ができるWindows PC用のハードウェアで、今後はそれに対応した新たなAIサービスがたくさん登場することになるだろう。
つまり、2024年という年は、まさにオンデバイスAI元年であり、その使い方を想定したハードウェアが一気に登場した、あるいはする年でもある。つまりパーソナルコンピューターのユーセージモデルに少なからぬ変化が起こる。
iPhoneの新型発売は毎年9月。この時期は絶対で、変えるのは不可能といっていいくらいなスケールのエコシステムになっている。
各方面が準備完了のステータスになるのを待つために、今年は暮れの発売というわけにはいかない。それが大人の事情だ。やんちゃなイメージのあるアップルではあるが、業界と市場とテクノロジーの間に立ちすくむ今年の振る舞いには、ちょっと意外な印象も受けた。
著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら