Image: PeopleImages.com - Yuri A / Shutterstock

知ってた…けど、科学的に証明するのは大事。

長らく一部の人によって大声でささやかれてきた「携帯電話の使用と頭部がんに関連性がある」という根拠のないうわさが、広範にわたる科学文献の検証によって「ない」と結論づけられました。

携帯電話と頭部がんに関連性なし

科学誌Environment Internationalに掲載された論文は、新たな研究や検証を行なったものではありません。研究者らは、携帯電話が放出する非電離放射線の一種である無線周波数電磁界(RF-EMF)と一般的な頭部がんとの関連性について、1994年から2022年の間に発表された63件の科学文献の系統的レビューを実施しました。論文はオープンアクセスのため、誰でも無料で読めます。

検証された一般的な頭部がんには、脳と保護膜、下垂体、唾液腺で発見されたものと、小児性の脳腫瘍と白血病が含まれています。研究費の一部を負担した世界保健機関(WHO)の委託を受けた国際的な医師および医学研究者のチームによると、携帯電話が発する無線周波数電磁界への暴露は、先に挙げた種類のがんのリスク上昇にはつながっておらず、小児脳腫瘍や小児白血病との関連性も認められませんでした。

研究は22カ国を対象に実施され、人の頭部に近い場所や、携帯電話の基地局、携帯型トランシーバーや職場の機器から発生する放射線など、さまざまな無線周波数電磁界が検証対象になりました。また、研究では放射線に暴露する時間との関連性についても検証しています。

その結果、携帯電話をほぼ1日中肌身離さず持っているケースでも放射線とがんリスク上昇との関連性は実質的に認められませんでした。ただ、ひとつだけ例外だったのは、放射線を浴びてしまう職業に就いている人たちにおける、脳腫瘍または脊髄腫瘍の一種である神経膠腫でした。しかし、その神経膠腫も「リスクの著しい上昇」があったわけではなく、累積被ばく線量が増えてもリスクは上昇しないそうです。

限定的な研究を利用して広まった陰謀論

携帯電話ががんを引き起こすという考えは、多くの人にとって「もしかするとあるかも」と思ってしまう説ではあります。数分であれ数時間であれ、日常生活の中で私たちは放射線発信装置を頭に当てたり頭の横に置いていますしね…。おまけに、これまでに提示されてきたデータがよくわからないものだから、混乱を招きはしても、ハッキリした結論へと導かれるような状況ではありませんでした。

米国がん協会の公式サイトでは、携帯電話とさまざまながんの関連性について「諸説入り乱れている」としながらも、それらの研究の多くには制限が存在すると補足しています。

携帯電話と頭部がんの発生率上昇に関する研究結果は、これまで陰謀論者や不誠実な人たち、または誤情報を信じてしまった人たちが、文脈を無視する形で誇張して広げてきました。

あまりにもデマが広がってしまったため、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストが13年の時をかけて「携帯電話は脳腫瘍を引き起こすのか?」というタイトルの記事を掲載したほどです。

このデマは、弁護士でもあり、一時は無党派から大統領候補として立候補したものの断念、現在はトランプ前大統領を支持しているロバート・ケネディ・ジュニア氏が拡散してきました。彼は他にも非科学的なデマを広げています。

国際がん研究機関(IARC)は、2011年に無線周波数電磁界を「人間にとって発がん性がある可能性がある」と分類しています。しかし、今回の研究を主導したオーストラリア放射線防護・原子力安全庁(ARPANSA)の健康影響評価担当副長官であるKen Karipidis氏は、結論について「主に、ごく限られた人々を対象とした観察研究による証拠に基づいている」と声明で述べています。

同氏は今回のレビュー結果について、次のように付け加えています。

今回の観察研究の系統的レビューは、IARCの調査と比較して、はるかに大規模なデータセットと、より直近でより包括的な研究結果に基づいているため、無線技術による電波への暴露が人間の健康被害につながらないという結論により確信を持てます。

科学的事実を前にしても人は信じたいことを根拠なく信じるので難しいかもですが、そろそろナンセンスで非科学的な陰謀論を終わりにしたいところです。

それでも心配な人にはコレ。スマートフォン 電磁波 防止 シール WAVESAFE
2,178円
Amazonで購入する
PR