太陽光発電のコストはどんどん下がり続けるのか?
技術の発展に伴って、太陽光パネルの価格は減少傾向にあります。太陽光発電に必要なコストが減少し続けるのかについて、作家のトーマス・プエヨ氏が解説しています。
Can Solar Costs Keep Shrinking? - by Tomas Pueyo
https://unchartedterritories.tomaspueyo.com/p/can-solar-costs-keep-shrinking
太陽光パネルの製造コスト低下の主な要因は、設置数の増加に伴う生産数の増加です。以下は設置された太陽光パネルの推移を年数ごとに示したグラフです。2022年には全世界で1000GW分の太陽光パネルが設置されており、そのうち400GW分が中国に設置されています。こうした太陽光パネルの普及も相まって、発電に必要なコストも大幅に下落しています。
一方でArnold Venturesで共同議長を務めるジョン・アーノルド氏によると、太陽光・風力発電ともに発電にかかるコストは2020年から増加傾向にあるとのこと。以下のグラフはアメリカで1MWhを発電するために必要な金額で、2020年第2四半期では1MWh当たり約27ドル(約3940円)でしたが、2024年の第2四半期では1MWh当たり53.68ドル(約7840円)に急騰しています。その理由についてプエヨ氏は「エネルギー消費量の増加が数十年にわたって停滞しているため」と分析しています。
1918年に提唱された「ヘンリー・アダムズ曲線」では、総エネルギー消費量が年間7%増加するという傾向が推測されました。しかし、アメリカにおける実際のエネルギー消費量とヘンリー・アダムズ曲線を比較すると、1970年代頃から乖離が進んでいることがわかります。
プエヨ氏によると、ヘンリー・アダムズ曲線が正しければ、今日では実際の2倍から5倍のエネルギーを消費しており、アメリカにおける一人あたりGDPは10万ドル(約1460万円)から20万ドル(約2920万円)に達していたとのこと。プエヨ氏は「エネルギーが消費されないことは私たちを貧しくします。もしも私たちがより豊かになりたいのであれば、より多くのエネルギーを消費しなければなりません。そのためには発電にお金がかからないエネルギーを使用することです」と主張しています。
以下は太陽光パネルの価格を示した「ユニットコスト」と検査費や相互接続料金、送電線の使用料、消費税などを示した「ソフトコスト」の推移を示したグラフです。2010年以降、ユニットコストは低下傾向にあるものの、ソフトコストには大きな変動がありません。太陽光発電のコストを削減するためには、この「ソフトコスト」を下げる必要がありますが、税金や検査費用、相互接続の料金などは大きく下がることはないとプエヨ氏は推測しています。そこでプエヨ氏はソフトコストを細分化して、どのコストを削減できるのか把握する必要があると主張しました。
太陽光発電モジュールそのもののコストは近年低下しているとはいえ、依然として1Wを発電するためのコストの39%を占めています。しかし、発電コストの10%から12%程度の安価な太陽光パネルも開発されており、今後ますますコストの低下が進むと見られています。
また、太陽光発電には「太陽の動きに合わせて回転させるためのラック」「ラックを設置するための大規模な土木工事費および人件費」「ラックを設置する土地の使用料」「設備を運ぶ輸送費」といったコストもかかります。プエヨ氏は「コストが極端に安く、地面に直接置くだけで設置完了する太陽光パネル」を開発することでこれらのコストを削減できると主張しています。
実際に、Erthosが開発した太陽光パネルは「必要な土地を約50%削減」「配線を70%削減」「工期を50%短縮」「寿命の長期化」といった効果を実現しており、コストを削減できるとアピールされています。
プエヨ氏は「太陽光発電の大きな利点の1つは、そのサイクルの速さです。ソーラーファームの建設にはそれほど時間がかからず、建設費も安いため、コスト削減は原子力や他の発電施設と比べてはるかに速く達成される可能性があります」と述べました。