勤務時間外のメールや電話への応答を従業員が拒否する権利を認める「つながらない権利」法が、オーストラリアで2024年8月26日に施行されました。

Right to disconnect - Fair Work Ombudsman

https://www.fairwork.gov.au/about-us/workplace-laws/legislation-changes/closing-loopholes/right-to-disconnect



Australia grants workers 'right to disconnect' after hours : NPR

https://www.npr.org/2024/08/26/nx-s1-5089792/australia-right-to-disconnect-workers-respond-after-work

Australian employees now have the right to ignore work emails, calls after hours | Reuters

https://www.reuters.com/world/asia-pacific/australian-employees-now-have-right-ignore-work-emails-calls-after-hours-2024-08-25/

つながらない権利法は2024年2月に議会で可決されており、2024年8月26日より従業員数が15人以上の企業で適用が開始され、1年後の2025年8月26日より従業員数が15人未満の企業を含めた全ての企業で適用されます。ほぼ全ての従業員が権利の対象となるものの、一部の公務員など少数の例外もあるとのこと。

勤務時間外の上司のメールを無視する「つながらない権利」を従業員に認める法案をオーストラリア議会が可決 - GIGAZINE



つながらない権利が付与された従業員は、勤務時間外において雇用主などからの連絡の監視・閲覧・応答を拒否する事ができます。COVID-19のパンデミックにより仕事と私生活の区切りがあいまいになるなかで、「仕事上のメールやメッセージ、電話が継続的に私生活へ侵入してくることに立ち向かう自信を与えてくれる」とつながらない権利法の支持者は述べました。

ただし、つながらない権利法は全ての連絡を絶つ権利を与えるわけではなく、連絡の理由や方法、従業員への補償内容、家庭や介護など従業員の個人的な状況などを総合的に見て、場合によっては「応答すべき」と判断される事例もあるとのこと。



つながらない権利法の施行により、オーストラリアはつながらない権利を認めた世界で25番目の国・地域になりました。2017年に同様の規則が導入されたフランスでは、従業員に携帯電話を常にオンにしておくよう義務づけた会社に対し6万ユーロ(約1000万円)の罰金が科されています。オーストラリアでは企業に対し最大9万4000オーストラリアドル(約920万円)の罰金が認められているとのこと。

雇用主団体のオーストラリア産業グループは、つながらない権利法により雇用の柔軟性が低下し、結果として経済が減速すると懸念を表明。「実際の影響についてほとんど協議されることなく導入された」と法律を批判しています。

一方、オーストラリア労働組合評議会のミシェル・オニール会長は法律に盛り込まれている留保条項により、合理的な連絡を妨げないことを強調。「深夜にシフトを終えた労働者に対し、午前6時からのシフトに入るように連絡する」など経営陣の計画不足の代償を労働者が払うことを防げるというメリットをアピールしました。