理由はわからないけれどイライラする、気持ちが上がらずうつうつする、とにかくだるくて動く気になれない。疲れや更年期など、様々な理由でメンタル面の不調を感じている方もいるかもしれません。そんなとき、薬に頼る前に、それぞれの症状を助けてくれる食材があるそう。SNSでも話題の漢方コンサルタント・櫻井大典さんにメンタルの症状別にオススメの食材を教えていただきました。

胃腸と心は密接な関係。メンタル不調も胃腸からアプローチを

「中医学の薬膳の考え方では、食材はそれぞれ、体にどんな作用をもたらすかという性質で分けられており、栄養素だけでなく、気や血(けつ)などを増やしたり働きを助けるという、中医学的な効能をそれぞれに持っています」と、櫻井さん。

その効能によって、胃腸やメンタルが弱っているときにオススメの食材があるのだそう。これは、中医学の基本中の基本の考え方のなかに、「胃腸と心は密接につながっている」という考え方があるからです。

「胃腸と心のつながりは、皆さんが想像している以上に密接で、お互いに影響し合っています。胃腸が元気なら心も元気な状態で過ごせます。反対に胃腸が疲弊すると、心も元気をなくし、うつうつ、イライラ、だるだる、くよくよなどの状態になりやすかったり、またその状態をコントロールするのが難しくなります。ですから、心は目に見えず触ることもできませんが、心が元気がないときは、胃腸の方を元気にするようアプローチすれば、それにつられて心の状態も自然に整っていくのです」(櫻井さん)。

つまり、常に胃腸が元気でいるよう心がければ、メンタル不調も起きにくいといえるのです。

食べたものを取り入れるには胃腸を冷やさないことが大切

櫻井さんによると、元気な胃腸を維持するために、とても大事なことがあると言います。

「“イライラ”などにオススメの食材を食べるにしても、“胃腸が元気で食べたものをきちんと体に取り入れることができる状態であること”、が大前提です。そうでないと、せっかくオススメ食材を食べても、消化吸収して体に取り入れることができません。

胃腸を常に元気に保つために最も大事なことは、“冷たい飲みもの、食べものをとり過ぎず、胃腸を冷やさずあたためること”です。

冷たいものを避けた方がよい理由は、中医学では、胃腸と同じ役割をしている脾(ひ)という場所が、“冷たいもの”“過剰な水分”“湿気が高いもの”を嫌うから。とり過ぎていると胃腸はどんどん弱ってしまいます」(櫻井さん)。

そのことを念頭に置いて、普段から冷たいものをとりすぎないようにしつつ、オススメの食材を食べるようにしましょう。

カッとなる、イラッとしやすいときは「緑茶」と「キュウリ」

ちょっとしたことでも「イライラ(ムカムカ、ピリピリも同様)」するのは、体を動かすエネルギーのような“気”の巡りが悪くなっている状態です。ですから、気を巡らせる働きのある食べものや、巡りが悪いせいで体内に生まれている熱を冷ます食べものをとりましょう。

オススメ食材の緑茶とキュウリは、どちらも熱を冷ます働きがあるので、「イラッ」としたときのクールダウンに。緑茶はペットボトルの冷たいものではなく、茶葉で入れた温かいものを飲みましょう。

イライラと落ち込みを繰り返すときは「そば」と「タマネギ」

どちらも気を巡らせて、情緒不安定な状態を落ち着かせる働きを持ちます。またどちらも、胃腸を元気に整える働きも持っています。緑茶とキュウリも並行して食べるのがオススメです。

うつうつしたときは「枝豆」と「タコ」

「布団から出られない」「とにかくなにもする気になれない」などの症状が見られるときは、体も心もエネルギー切れの状態です。エネルギー不足が最大の原因なので、気を補ってくれる食材をとることが急務。

こういうときにお菓子やジャンクフードばかり食べていると、エネルギーである気はつくれません。もし食べる気力もないなら、まず眠ることを優先し、明日から気を補う食材を少しずつでも食べていきましょう。

枝豆はエネルギーの素になる気を補い、胃腸を整えることで、疲労感や元気不足を回復させます。体内にこもった熱を冷ます働きもあり。アルコール分会を促す成分も含んでいるので、お酒を飲む際のおつまみとしても最適です。

タコは、中医学的には、エネルギーの素である気と、メンタルの安定に関わりの深い血の両方を補います。栄養学的には、タウリンという疲労回復に強力に役立つ成分を多く含み、元気の味方の食材。抗うつ効果を持つビタミンB12や亜鉛なども含んでいます。

だるくて、舌に黄色いコケがべったりしているときは「ハマグリ」「大根」

「なんかめんどくさい」「動きたくない」とだるさを感じるのは、体も心も重い状態。主な原因は、冷たいもの、甘いもの、油っこいものなどの食べ過ぎで、体の中にドロドロの不要物が溜まっていることです。

胃腸も弱っていて余分なものを排出できていないため、むくみ、めまい、吐き気、下痢、軟便などの症状が出ていることも多いです。

オススメの食材を摂るのと並行して、冷たいものをはじめとする、原因となった食べものなどをしばらく減らすことも必要です。

舌に黄色いコケがべったりついているなら、余分なドロドロと熱がこもってる証拠。「ハマグリ」と「大根」は、体の中に溜まっている、ドロドロの不要物を排出する働きを持ちます。ハマグリはこもった熱を取り除き、むくみやのぼせ、口臭対策にもオススメ。大根は消化の助けになり、胃もたれなどを改善する働きもしてくれます。

舌に白いコケがべったりついているなら「ニンニク」「春菊」

舌に白いコケがべったりなら、体の中に余分なドロドロが溜まっている状態。不要物を排出する働きを持つ「ニンニク」と「春菊」がオススメです。ニンニクは胃腸をあたためて消化力を高めてくれるので、体の中の水はけが悪く重だるい人向き。大量に食べ過ぎると熱がこもり過ぎるので、ほかの食材と一緒に食べましょう。春菊は多くの香り成分を持ち、自律神経を整える働きも持つので、メンタル不調にも働きかけます。

「どの食材も毎日そればかりを食べるのではなく、ほかの食材と組み合わせながら取り入れましょう。そして冷たいものをとりすぎないことも心がけていきましょう」(櫻井さん)。