【西田宗千佳連載】テレビのトップブランド「REGZA」の戦略から透けて見える、したたかなメーカー心理
Vol.140-4
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、国内メーカーから登場するテレビの違いについて。トップブランドになったREGZAは「ミニLEDも有機ELも」「大型化」を狙っている。その背景事情とは。
今月の注目アイテム
パナソニック
ビエラ Z95Aシリーズ
実売価格36万6300円(55V型)
TVS REGZA(以下REGZA)は好調だ。日本のテレビはトップ数社による寡占状態が続く。その中で長くトップにいたのはシャープなのだが、調査会社BCNのデータによると、2022年・2023年のテレビシェア(台数別)は連続してシャープが2位になり、トップがREGZAになった。4K以上のテレビでも、2023年にはトップとなっている。東芝時代からREGZAは“3位もしくは4位”が定位置と言われてきたのだが、明確に状況は変化した。
理由は「モデルのバリエーション」と「基本機能」だろう。今年のモデルでも、REGZAは他社に比べ偏りが少ない。ミニLED液晶と有機ELの両方をラインナップして、「どちらも本気」と、他社との違いを意識したアピールを行なっている。
有機ELでは、輝度を高める「マイクロレンズアレイ」技術はパナソニックしか導入していなかった。しかし今年はREGZAもフラッグシップの「X9900N」シリーズで導入、ピーク輝度を前モデルの2倍にあたる2000nitsまで高めている。ミニLEDモデルの「Z970N」も、ピーク輝度を2000nitsから3000nitsへと向上させている。
さらに、見ている映像のシーンの種類を「夜景」「花火/星空」「リング競技」「ゴルフ/サッカー」とAIが判別し、最適なコントロールをすることでより良い画質を実現する「AIシーン高画質PRO」も搭載している。REGZAは半導体+ソフトウェア処理への注力を長く続けているメーカーだが、そうした部分への信頼度やバランスの良い製品展開などが、結果的にシェアを押し上げる要因になっているのだろう。
そんなREGZAも、ことフラッグシップモデルについては、やはり「大型化」をかなり意識している。具体的には55型から75型にフォーカスし、“リビングでより迫力のあるサイズ”を訴求しようとしている。
その昔、テレビは「一部屋に一台」だった。だが2011年の地デジ移行から、スマートフォンやPCとの関係もあり、個室のテレビは売れづらくなった。だがリビング向けは一定のサイクルで売れている。劇的に増える要因もないが、同時に減る要因もない。
テレビを買い替える際、ほとんどの場合“前よりも大きなサイズ”がチョイスされる。そうすると、大型のテレビをいかに売っていくかが消費者のニーズにも合う……ということになるわけだ。
もちろん、そこにはメーカーの世知辛い事情もある。単価の低い小型の製品を売っても利益が上がりづらいのだ。市場が一定以上のサイズを求めるのであれば、満足度が高い大型を製品化し、単価アップも狙う。
REGZAの「全方位だが大型シフト」という戦略からは、そんな、ある部分でしたたかなメーカー心理も透けて見えてくる。
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