渋滞5割増?お盆の高速は「猛暑メシ」で乗り切れ
2024年のお盆期間中の「高速道路の混雑発生回数」は昨年の1.5倍が予測されているという(筆者撮影)
ひんやりVSピリ辛 猛暑メシ合戦――。
とどまることを知らない今年の暑さの中、こんな”猛暑メシ”の戦いが行われている。その”戦場”は、NEXCO東日本のSA/PA(サービスエリア/パ−キングエリア)だ。開催期間は、7月26日から8月18日。
そこで、その一端を覗いてみようと、東京近郊の高速道路にクルマを走らせ、合戦への”参戦”に出かけた。
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取材を行ったのは8月8日。お盆の最混雑期間より前とはいえ、NEXCO各社のお盆の渋滞予報はこの日から始まっており、一足早くレジャーや帰省に出かける個人のクルマと、お盆休みを前に仕事を片付ける商用車の両方が高速道路を利用するためか、発表された予報よりもおしなべて混雑はひどかった。
午前中の東京からの下りの東名高速・中央道は、どちらも30km程の渋滞が発生していたし、圏央道に至っては、中央道から内回り(青梅、入間方面)に伸びた渋滞が、一時は鶴ヶ島ジャンクション付近までおよそ50kmにまで伸びたというから驚いた。年間の渋滞のピークと変わらないほどの長さである。
ピリ辛で汗をかき、ひんやりでクールダウン
さて、この「猛暑メシ合戦」は、管内の一部のSA/PAで、冷菓などの「ひんやりグルメ」と、辛さを売りにした「ピリ辛グルメ」を用意して、実際に食べた人に投票(パネルにシールを貼る形式)してもらおうというイベントである。
猛暑メシ合戦の投票パネル(筆者撮影)
メニューは、今春に実施した「ハイウェイめし甲子園」というコンテストのように、このイベントのために開発した新メニューではなく、既存のメニューの中から、「ひんやり」や「ピリ辛」に合致したものをピックアップして行われるものだ。
まずは、中でもメニューのラインアップの多い関越道の高坂SA(下り)へ。
【写真】今回、筆者が選んだ「ひんやりグルメ」と「ピリ辛グルメ」
到着したのは午後1時半ごろだったが、小型車の駐車場はほぼ満杯。そして、フードコートもレストランも、すでにお盆休みに入ったかのような混雑であった。
実際に猛暑メシを食べてみようと、ピリ辛メニューから「深谷牛辛味噌バーガー」を注文。
深谷牛辛味噌バーガー(筆者撮影)
バンズからはみ出るほどの大きなハンバーガーを主役にしたメニューで、高坂SAより少し北に位置し、7月に新たに発行された新1万円札の肖像となった渋沢栄一の出身地、深谷市で生産される希少な牛肉を使っているのがウリである。
実はこのメニュー、今年の「ハイウェイめし」コンテストの出品作だ。ピリ辛の代表選手として、再びスポットが当たったのである。提供しているのは、「肉Lab万万」という、豚丼やカツカレーなどが主力の肉料理店だ。
混雑していたので、自販機で食券を買ってから料理の完成を知らせる端末が鳴るまで15分ほどかかった。
8月8日午後2時ごろの高坂SA(下り)フードコートは混雑していた(筆者撮影)
見ていると、売れているのはやはりカツカレーや丼物。このバーガーを注文した人は、筆者が見ていた30分ほどの間には皆無であった。
とはいえ、ハンバーガーの肉の旨味とそれほどは辛くない(筆者は辛い食べ物はどちらかというと苦手)味噌味のソースは、旅の満足感を満たすには十分だった。
高坂SAは「猛暑地帯の中心」でもある
ちなみに、高坂SAの周辺には、盛夏に連日発表される最高気温トップ10の常連ともいえる鳩山町や寄居町があり、まさに猛暑地帯の中心。この日も厳しい暑さだったので、ひんやりグルメには、キッチンカーで出店していたかき氷店で「ももミルク」を求めて、かぶりついた。
「合戦」という意味では、どちらか一方に票を投じるべきなのかもしれないが、筆者にとっては選びづらく「引き分け」とした。
キッチンカーで提供されるかき氷「ふわ雪」(筆者撮影)
なお、高坂SAでは、下りでは「麻婆豆腐定食」、上りでは「嵐げんこつバリ辛ラーメン」などがピリ辛グルメに、またひんやりグルメには、下りでは千本松ミルクソフト(栃木県の千本松牧場の牛乳を使ったソフトクリーム)、上りでは「水わらび餅」などがラインアップされていた。
コロナ明け以降最大の混雑になるか?
この日は、朝食も東北道羽生PA(下り)の「猛暑メシ」にしたのだが、こちらはまだ時間的に店舗が全部開いていないこともあって、ピリ辛のほうは、金沢市に本拠を持ち、石川県や東京都などにチェーン展開している「ゴーゴーカレー」のロースカツカレー(こちらもそれほどピリ辛ではない)、ひんやりのほうはコーヒーフロートと、ご当地感はほとんどないメニューを選んでいた。
羽生PA(下り)の猛暑メシ、ロースカツカレーとコーヒーフロート(筆者撮影)
NEXCO東日本の発表によると、2024年のお盆休み期間中に発生する、長さ10km以上の渋滞の回数は、昨年の1.5倍ほどに増加すると見込まれている。予想を上回る8日の混み具合を見ると、その渋滞予測は間違いではなさそうだ。
今年は、大手企業を中心に久しぶりの高い賃上げで財布の紐がやや緩み、遠出への追い風が少し吹いている一方、日本を上回る物価の上昇や円安基調もあって海外旅行を控える人が多く、国内旅行に切り替える人が少なくない。
関越道下り線、鶴ヶ島IC付近で撮影した1コマ(筆者撮影)
また、再び新型コロナウイルス等の感染が拡大し、飛行機や新幹線などから他人との接触が少ないマイカー移動に切り替える人も一定数いると推察できるなど、高速道路の混雑を助長する要素がいくつもありそうだ。
高速道路利用者にとって、ピリ辛グルメやひんやりグルメといった高速グルメは、例年以上に“旅の友”にしたくなる存在になっているだろう。
なお、8月9〜11日には、高坂SAで、「猛暑メシ合戦」への参加者を対象に、ひんやりジェットガンの噴射体験や、リラクゼーションドリンクのプレゼントなども予定されている。
関越道高坂SA(下り)の様子(筆者撮影)
猛暑の中のドライブ、まして渋滞や場合によっては激しい雷雨に遭遇するかもしれないドライブを少しでも楽しいものにするため、NEXCO各社の知恵の絞り合いが注目される。
渋滞の苦痛を緩和する一助に
このほか、夏のイベントとして、NEXCO中日本で北陸道全線開通30周年を記念した「丼DON食べて!キャンペーン」が、8月末まで行われている。
滋賀県の賤ヶ岳SAから富山県の有磯海SAまでにある、10カ所のSA/PAで対象の丼を注文すると、オリジナルグッズがプレゼントされるなどの特典があるという。「つぶ貝のパエリア(有磯海SA下り)」「白えび天丼(小矢部川SA下り)」など、おすすめしたいメニューがたくさんあるため、ぜひ足を運んでみてほしい。
また、NEXCO西日本では、人気キャラクター「すみっコぐらし」とコラボして、管内のSA/PAにフォトスポットを設置するなどの「ネクすみっコ」キャンペーンを7月20日から2025年1月まで実施している。対象のSA/PAは、関西エリア9カ所、中国・四国エリア8カ所、九州・沖縄エリア9カ所だ。
対象SAのひとつ、名神高速道路「大津SA」(筆者撮影)
さらに、「猛暑メシ」に似たキャンペーンとしては、四国4県にあるSAで、スムージーやかき氷などの新商品を販売する「暑い夏にぴったり!ひんやり夏推しフェア」も実施している。
こちらの対象SA/PAは、高松自動車道の豊浜SA(上り/下り)、松山自動車道の石鎚山SA(上り/下り)、徳島自動車道の上板SA(上り/下り)、吉野川SA(上り)、高知自動車道の南国SA(上り/下り)の全9カ所だ。
お盆休み期間中の高速道路は渋滞が苦痛になりがちだが、こうしたさまざまな催しを目的のひとつとして加えることで、楽しいものになるのではないだろうか。
【写真】お盆直前8月8日の高速道路とSA/PAの様子
(佐滝 剛弘 : 城西国際大学教授)