子ども同士のケンカ、実は「すぐ仲裁に入ってはいけない」!? 現役保育士が「まず様子を見る」納得の理由
わが子が「家」という限られた空間から一歩踏み出して、友達と関わり合う年齢になると、子ども同士のケンカも起こり得るもの。子どものケンカというと、周囲の大人や保護者としては「すぐに止めなきゃ!」と思いがちですが、保育士の白井麻依子さんは「まず様子を見る」ことも多いといいます。子ども同士のケンカに、大人はどのように関わるのが望ましいのか……実際に保育園で行っているという対応の仕方をもとに、コツやヒントを教えていただきました。
どちらがいい/悪いと決めつけない
Q.例えば、保育園で子ども同士のケンカが起こった場合、どのように対応しているのですか。
白井さん「まず前提として、ケンカという行為には社会性を育む側面もあるのです。ケンカは相手の気持ちを理解したり、受け止めたりする場でもありますから、大人がすぐに仲裁に入ってしまうと、子どもはそのチャンスを失ってしまいます。そのため、保育士としてはすぐに間に入らずに、まず様子を見ることも多いです。
その上で、ケンカをしたときはどちらがいい/悪いと決めつけるのではなく、両者の気持ちを受け止めることを大切にしています。『おもちゃを取ったらダメでしょ!』ではなく、『どうしておもちゃを取ってしまったのか』『おもちゃを取られたことでどう思ったのか』と、双方の気持ちに寄り添ってあげるとよいと思います。
また、4〜5歳ごろになると、2〜3歳ごろと比べて自分で何を言いたいのかが明確になってくる時期ですから、双方の気持ちを伝え合って解決できるように進めていきます。とはいっても、『強い意見を言う子のわがままが通る』『片方が我慢をして終わらせる』といったことにはならないように注意します」
Q.ケンカが起こったとき、子どもの意見はどこまで聞き入れているのでしょうか。
白井さん「2〜3歳ぐらいの子どもは、『おもちゃの貸し借り』などでケンカが起こることが多いです。基本的にはケンカが起こったとき、保育士はそばにいて、どんなことが起こったのか全て把握している状況にあります。そのため、『勝手に取っちゃダメだよ』などで終わらせず、双方の意見を聞いて『“あとで貸して”って言おうね』などをセットで伝えるようにします。
一方、4〜5歳の子たちは、自分たちの世界が形成される頃なので、保育士が全て把握できているわけではありません。そのため、状況を判断する上で話を聞くことはありますが、『その子たちが言ったことが全て』だとは思わないようにします。先述しましたが、基本的には自分たちで解決してほしいという思いもありますから、『こうしたらよかったかもしれないね』と解決策を考えられるように伝えるのも一つの方法だと思います」
Q.子どものケンカについて、親御さんにはどのように伝えていますか。
白井さん「一般的には、ケンカをしてしまった相手のことは伝えずに、『こういうことがありました』という事実を伝えるようにしている園が多いと思います。ケンカが起こったからといってそれを叱ってほしいわけではなく、子どもの気持ちに寄り添ったケアをおうちでもしていただくことが重要だと思っています。
特に4〜5歳ごろのお子さんは、自己形成が生まれる年齢でもありますし、大人の目が行き届かないところで悩みを抱えていることもあるかもしれません。おうちでしか見せない様子などもあると思いますから、保育士としてサポートしていく上では、普段と違う様子などがあれば先生に伝えていただくとよいと思います」
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「子どもがケンカをしてしまった」と聞くと、「すぐに止めなくちゃ!」と思いがちなもの。しかし、おうちから一歩踏み出して、より多くの人と関わり合うようになる幼児期のケンカには、「社会性を育む」という大事な役割もあるのですね。
とはいっても、大人が仲裁に入らないといけないケースもあるかもしれません。そんなときは、どちらか一方に対して「ダメ! やめなさい!」と頭ごなしに叱るのではなく、双方の気持ちをしっかりと受け止めてあげて、お互いの気持ちを尊重できるようにサポートできるといいですね。