「キリンビール 晴れ風」

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 キリンビールが4月2日に新発売した17年ぶりのスタンダードビールの新ブランド「キリンビール 晴れ風」の販売数量が、発売から約3カ月(プレミアム・クラフト・販売先限定品・既存ブランド派生品を除く)で、同社過去15年のビール類新商品で最大の売り上げを達成したとのことです。年間販売目標の7割となる300万ケース(7月12日時点、大瓶換算)を突破し、好調に推移していることから、年間販売目標を当初予定の430万ケースから約1.3倍となる550万ケースへ上方修正しました。そこで、同社マーケティング部の向井優夏さんに、好調の要因などについて聞きました。

好調の要因となった“3つ”のポイント

 100年以上続くキリンのビールづくりに新しい発想を取り入れて誕生した「晴れ風」には、「大きく2つの特徴」があるということです。向井さんによると、「 1つ目は、現代のお客様の嗜好(しこう)を捉えた、『ビールとしてのうまみや飲みごたえ』がありながら“飲みやすい”、新しいおいしさという点があります。原料は麦芽100%で副原料不使用。麦芽とホップだけを使用し、麦芽100%ビールの麦のうまみを丁寧に引き出しつつ、仕込み・発酵工程の工夫により、非常に滑らかな口当たりを実現」しているということです。加えて、「爽やかな柑橘香が特徴の希少ホップ『IBUKI』を使用し、素材のよさを最大限に引き出した、晴れ風ならではの爽やかなうまみを楽しむことができます」といいます。

 2つ目の特徴として「 今この時代に発売するブランドだからこそ発想して行っている『晴れ風ACTION』」と挙げます。「晴れ風ACTION」について、「昔からビールを楽しむシーンを彩り、お客様の笑顔をつくってくれた、お花見や花火といった『日本の風物詩』を守る活動に、本商品の売上の一部を寄付し、未来へとつないでいく取り組みです。キリン 晴れ風の缶の裏にある二次元コードに印字された専用サイトで詳細を見ることができます」と話します。
 そして、好調の要因の一つとして、「『ビールのうまみや飲みごたえ』がありながら『飲みやすい』味わいが受け入れてもらえていると思います。一見、相反する味わいを両立させることに成功し、ビールを普段飲まれる方はもちろん、最近ビール類を飲んでいなかった方にも好評をいただいています」と説明してくれました。

 また、「晴れ風ACTION」への「共感」も要因として捉えているといい、「第一弾である桜への支援活動に対して、寄付総額は発売1ヵ月半で目標金額の4000万円に到達しました。『桜を守る活動を応援したい』『毎日楽しく参加している』など好意的な声を多数いただいいております。また、7月15日からは第二弾として『花火大会への支援』を行っています。ビールを飲む喜びを広げてくれた『日本の風物詩』を守り、そこに集まる人たちの笑顔を未来につなげていく活動に、自治体(市区町村)の皆様やお客様とともに継続して取り組んでいきます」と今後の活動についても話してくれました。

 同商品のCMには、お笑いコンビ「ウッチャンナンチャン」の内村光良さん、人気グループ「Snow Man」の目黒蓮さん、俳優の天海祐希さん、今田美桜さんを起用。発売前のCMでは“商品名”を明かさないという戦略を施すなどし、SNSなどで話題にもなりました。

 向井さんは、発売前の広告戦略について「『キリンビールから発売する、スタンダードビールとしては17年ぶりの新ブランド』。この商品に込めたキリンの思いと自信がどうすれば、お客様に伝わるか、を考え続けました」と述懐しつつ、「ビールとしては特徴的な名前だからこそ、あえてネーミングを隠すことで、名前を披露した時のインパクトを最大化できるのではないか、と考えました」と明かしてくれました。

 続けて、「具体的には発売2週間前に大々的なティザー広告を出稿するなど、CM、イベント、SNSを通じて、『晴れ風』という名前を覚えていただくような仕掛けを心掛けました。名前や缶を隠すクリエーティブな手法を通じて、商品にとって一生に一度しかない名前のお披露目を最大限、お客様に楽しんでいただきました」と振り返りながら、「『X』の投稿数が事前〜発売1週間で約280万件にのぼるなど、発売前から『発売が楽しみ』『早く飲みたい』というコメントを多数いただき、発売後も『おいしい』『今までビールが苦手だったけど、これなら飲める』などうれしいお声をいただきました」と反響についてもコメントしてくれました。

 これらの活動が、「新ブランドへの期待や、明るく爽やかな世界観が評価され、トライアル獲得につながっていると考えています」と好調の要因につながったということです。
 ビール業界全体で考えると、2023年10月に酒税法が改正され、各ビールメーカーがこぞって新ブランドを強化するなどしました。向井さんに、今回の「晴れ風」も同法を利用した戦略だったのか、直撃したところ、「ビール類市場が縮小する中、酒税改正の影響で唯一『狭義ビールカテゴリー』は伸長しており、非常に重要なカテゴリーだと捉えています。弊社のスタンダードビールには長年愛され続けている『キリンラガービール』や、30周年を超え支持され続けるフラッグシップブランドである『一番搾り』がありますが、消費者の嗜好や価値観が大きく急速に変化している中で、ラガーや一番搾りとは異なる価値を持った、これからの時代に求められるビールをつくりたいという思いで開発にいたりました」と明かしてくれました。

 そして、2026年には酒税法が統一されます。向井さんは「酒税統一にむけて、今後も『狭義のビール』カテゴリーは活性化していくと思われます。その中で、フラッグシップブランドである『一番搾り』はもちろんのこと、この『晴れ風』も一番搾りに次ぐ第2の柱・新定番ビールを目指して、もっとお客様から支持されるようなブランドに成長させていきたいと思います」と力強く、語ってくれました。