歩幅や速さなど歩き方は人によって異なりますが、実は歩き方は健康状態のバロメーターとしても機能します。そんな歩き方と健康状態の関係についてランカスター大学のアダム・テイラー教授が解説しています。

What your gait says about your health

https://theconversation.com/what-your-gait-says-about-your-health-233910

◆パーキンソン病などの神経変性疾患

テイラー教授によると、「歩くスピードの低下」や「歩く滑らかさの低下」はパーキンソン病に代表される神経変性疾患の初期兆候の可能性があるとのこと。パーキンソン病は脳から筋肉への命令系統に干渉し、筋肉の動きの低下や左右対称性を損なわせます。パーキンソン病患者の歩行の様子を記録した以下のムービーを見ると、初期段階のパーキンソン病でも左右の脚や腕の動くスピードに差が出ていることが分かります。

Gait impairments in Parkinson's disease - YouTube

◆認知機能の低下

認知機能が低下すると、歩幅が著しく短くなるという研究結果が報告されています。

◆糖尿病

糖尿病で神経が損傷すると、すねの前面の筋肉が機能しなくなり、足先を上方向に引き上げる動きが困難になります。これにより、自分の足につまづいて転倒するリスクが高まるとのこと。つまり、自分の足につまずくことが増えた場合は糖尿病が疑われるというわけです。

◆末梢動脈疾患

歩行中に「お尻」「足の後ろ側」「ふくらはぎ」に痛みを感じ、歩行を中断すると痛みが引くという場合は、末梢動脈疾患を患っている可能性があります。末梢動脈疾患は血管が細くなったり詰まったりして起こる病気で、脚に流れ込む血液の量が減って筋肉への酸素供給量も減少してしまいます。筋肉は動いている際に酸素を必要とするため、末梢動脈疾患を患っていると歩行中に筋肉が酸素不足となり乳酸が放出され痛みを引き起こします。歩行を中断すると筋肉が求める酸素の量が減り、痛みがなくなります。



◆ビタミン不足

歩行中にバランスを崩してよろめくことが多い場合は、ビタミンB12が不足している可能性があります。ただし、ビタミンB12は注射などの投薬で比較的簡単に治療できるほか、食事の改善でも治療可能だそうです。

◆内耳炎

内耳炎にかかった場合でも、歩行中のバランス感覚低下が発生するそうです。内耳炎の影響で内耳の体液の動きが変化すると耳から脳への信号伝達に支障をきたし、視覚情報と姿勢情報の統合が困難になってバランスをとることが難しくなるとのこと。

◆急激な変化に注意

歩行のスムーズさは加齢とともにゆるやかに損なわれますが、上記の異常は短期間で発生するとのこと。このため、テイラー教授は歩行の異常が急激に発生した場合は医師に相談することを推奨しています。