お笑いタレント、大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月~金曜13:00~15:30) が7月8日に放送され、ちくまプリマー新書から発売中の『ネットはなぜいつも揉めているのか』を著した、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所教授の津田正太郎さんが登場。本の内容について伺った。

大竹「ネットはいつも揉めている…簡単に考えると、対面で喋ったりすると相手の表情とかが見えたりして、この人は思ってないことを言ってるな、ということも分かったりしますよね。ネットは表情がなくて言葉だけですよね。そこで齟齬が生まれているということですか?」

津田「それも一つ大きな要因としてあると思います。例えば対面でやり取りする時は相手の面子も多少考えますよね。あまり相手を貶めたり、それこそ論破したりすると、その場のムードがすごく悪くなっちゃいますよね。だから今話題の都知事選挙に出られた石丸伸二さんも、インタビューの雰囲気が悪いということで、ネットで叩かれてるわけですよね」

大竹「あ、そうなんですか」

壇蜜「いわゆる感じが悪いというよりも、「思ってたんと違う」というムードですよね」

津田「その原因の一つは、ああいうやり取りの場で相手のことを考えずにガンガン詰めると、普通は反発を呼ぶわけです。ところがXでのやりとりは、文字だけでしかも一方向的になりがちなので、相手をどれだけ罵倒しても、あまり雰囲気が悪くならない。それどころか他の人から応援されたりするので、相手の面子を潰すことに対して歯止めがきかないところがあるように思います」

大竹「その上、論破してやったみたいな事を言ったりする。日常会話で争っても、完膚なきまで叩いたりはしないですよね」

津田「対面だと相手と意見が違うなと思っても、「そうですよね」みたいな感じで済ませて流しちゃうんですけど、文字にすると自分がどういう主張してるのかがずっと残るので、意見の違いがはっきり見えちゃうんですよね。だから「お前、こう書いてんじゃないか」みたいな感じで詰められちゃう。意見の違いがはっきりしていることも問題です。石丸さんの場合、前職の時から相手を論破するような動画をいっぱい上げて熱心なファンが付いていました。見ているのがファンだけなら痛快な動画なんですけど、マスメディアに出てくると、みんなが石丸さんのファンではありません。それでみんなが見たら「なんだ、こいつは」と、モードが変わっちゃったんだろうなと思います」

壇蜜「『火事と喧嘩はネットの花』だと先生も著書に書かれてるけど、今回のことってまさにそれですよね。何が良いとか悪いとかじゃなくて、とにかく石丸さんのアクションが何をやっても盛り上がっちゃってるから、きっとこのフィーバーはしばらく鎮火しないですよね」

大竹「文字だけで対立すると「私が悪かった」みたいなことにはならないよね」

津田「X上のやり取りだと、お互いがすごく被害者意識を持つようになるんですね。例えば、ふたつのグループがやり合っていると、双方が自分たちは相手側から被害を受けている側だという意識を強く持つんですね。だから、相手側はとにかく加害者なんだという形で物事を捉えることがすごく多いわけです。なので話し合いにならない。だから相手側が謝るまで絶対許さないみたいな感じになっちゃうんです」

大竹「被害者意識があるってことは、自分はマジョリティじゃない、どっちかっていうとマイノリティの立場から発言してるんだって思ってるってこと?」

津田「それもあります。主観的には、自分たちは周囲からすごく虐げられてるとか、そういうふうに思ってるわけです。客観的に見ればそうじゃないかもしれないんですけど、みんなそういう立場になっているんです」