(写真:Luce/PIXTA)

はげしい雨にもかかわらず、パリッとして清潔感のある方が、あなたの周りにもいませんか。

雨天という条件は同じはずなのに、こんなにも印象に差がつくのは、一体どうしてなのか。ここ数年ビジネスアイテムの多機能化から、撥水効果・速乾性など、これまで天然繊維では実現しづらい要素も加わりましたが、「化学繊維の生地感が安っぽい」ケースも見かけます。

「撥水だからOK」というわけにもいきませんので、雨の日も快適に過ごす「チープに見せない」工夫も大事。のべ5409人のビジネスマンの買い物に同行してきた服のコンサルタントがお伝えします。

晴雨どちらも活躍する「全天候型」シューズ

通勤スニーカーから革靴まで、撥水効果を売りにしたビジネスシューズが増えています。なかでも「全天候型」というネーミングのものは、ここ数年で取り扱うメーカーが倍増した印象です。雨が止んだタイミングで「チープに見えがちだった」ラバー素材のレインシューズにくらべ、雨天のみならず普段どおり使える革靴というもの。


どちらもアッパーはレザーの「全天候型」シューズ(写真:筆者撮影)

撥水加工を施したレザーのアッパーソールと、ライニングと呼ばれる裏地の間に、防水フィルムを貼っているタイプが多いのですが、なかには世界的に有名な防水透湿素材ゴアテックスを採用しているものを見かけます。これは湿気のみ透過させる効果もあるため、足の蒸れも気になりません。

とはいえ今年は、線状降水帯が発生する日も多くあります。また梅雨明けしても、ゲリラ豪雨や爆弾低気圧など、「雨脚が強い時間帯に外出せざるを得ない」というタイミングも出てくるでしょう。そこで跳ね返りの水滴による濡れを防ぐ「高機能スラックス」が役立ちます。

安っぽく見せない「高機能スラックス」活用のコツ

ビジネスファッションの新定番ともいえる機能生地は、防シワや接触冷感のみならず、最近では撥水効果のスラックスも、紳士服量販やセレクトショップで見かけます。たとえば帝人フロンティアの「MINOTECH」という素材は、表面張力を利用し、水滴を滑らせるように弾く効果がありますが、ここで注意したいポイントは、この手のスラックスに合わせる「サマージャケットの質感について」です。


(左)化学繊維の光沢ある機能スラックス(右)天然繊維の光沢あるサマーウールのスラックス(写真:筆者撮影)

化学繊維のスラックスは、サマーウールにくらべ、どうしてもスポーティーに見えやすく、ウール100%のサマージャケットでは「色合いの調和がとれていても、上下半身の質感が馴染みづらい」状態に陥るもの。そこで化学繊維のスラックスには、同じく化学繊維がブレンドされたサマージャケットを合わせてみてください。質感が馴染むことで、機能生地のチープさが目立ちづらくなるからです。

また印象面においては、濡れても「センタープレスが消えない」スラックスが役立ちます。パンツ裏に樹脂コーティングすることで折り目を形状記憶化しているスラックスは、撥水効果があるものとは限りませんが、「濡れることで消えやすい」パンツのラインをパリッと維持できるのです。一般的なサマーウールの場合、「アイロンでつけた折り目が、濡れて弱まる」こともありますが、その心配もありません。

雨天のコーディネートは「パンツから組み立てる」ことが最適解です。そして雨の日は、天然繊維よりも化学繊維の機能スラックスに軍配が上がります。サマーウールのみならずチノパンについても、水分を吸収しやすいコットン地のものは、雨で濡れてから乾くまでに時間がかかってしまうのです。

水滴を弾く!撥水効果の注目小物2選

また撥水効果のビジネスアイテムとして、「ビジネスリュック」と「折りたたみ傘」に注目しています。もはや定番と言えるビジネスリュックですが、傘の大きさ次第では、リュックが濡れてしまうこともあるでしょう。とくに雨脚の強さによっては、雨が荷物に染みてしまった経験もあるのでは。ところがラバー素材ならば、水滴を弾くため、リュック内部に雨が浸透する心配もありません。


水滴を弾くラバーのビジネスリュック(写真:筆者撮影)

印象面においても、ラバー素材のビジネスリュックを、天候にかかわらず私は推奨しています。というのもビジネスリュックは、その形状からも、化学繊維のテカテカした光沢が安っぽい印象に陥りやすく、ラバー特有のツヤがない質感の場合、リュックの形状と相まって洗練して見えるから。シューズにおけるラバーは安っぽいですが、リュックにおけるラバーは、天候にかかわらず候補に挙がるのです。

ところで、突然の雨に対応すべく折りたたみ傘を愛用されている方は、濡れてベタついた傘の収納にフラストレーションを感じませんか。そんな悩みを解消してくれる撥水効果の傘を見つけました。濡れない傘というコンセプトの「UNNURELLA (アンヌレラ)」は、最高等級の撥水生地にくわえ、水滴を弾く耐久も長期にわたるというもの。一振りで水滴が落ちれば、取引先の建物に入る前も一安心です。

「雨に濡れづらい」靴・パンツ・ビジネスリュック・傘について伝えてきましたが、湿度の高い時期は、メンテナンスにおいても印象に差がつく可能性を否めません。とくに独り暮らしの男性ビジネスマンは、洗濯の部屋干しに慣れていらっしゃらない方も多いのでは。

部屋干しによる生乾き臭の原因&対策を理解しよう

雨天が多い梅雨時期は、ワイシャツや肌着を、部屋干しせざるを得ない状況がありますが、このとき生じる生乾き臭は「モラクセラ菌が増殖するときに出す排泄物」が原因だそうです。2011年に花王と愛知学院大学の共同研究発表により注目され、それ以降、殺菌力が強い「部屋干し用の洗剤」も各社で見かけるようになりました。そして同時に、干し方についても理解しておきたいのです。

洗濯物に残った汚れや皮脂を栄養にして繁殖するこの菌は、「乾燥までに時間がかかってしまったときに活性化」するため、部屋干しの際には「洗濯もの同士の間隔を空けること」、「湿気がこもりやすいカーテンレールは避け、浴室乾燥機や扉の桟(さん)に引っ掛けること」も一案です。

また洗濯物の生乾き臭と同じく、革靴も濡れたままではニオイやカビの原因になることは周知のとおりですので、「濡れた革靴に丸めた新聞紙を入れる」というケアを実践しましょう。ただ最近では「そもそも新聞を取っていない」という世帯も多いので、代用品として吸水性のあるキッチンペーパーが活躍します。

「撥水効果のビジネスアイテム」と「メンテナンス」を駆使して、雨の日もパリッとした印象をキープしましょう。

(森井 良行 : ビジネスマンのためのスタイリスト)