【女性や喫煙者必見】くも膜下出血の前兆・前触れとは? 「死亡率高いが予防は可能」
脳卒中の一種であるくも膜下出血は致死率が高く、危険な疾患として知られています。くも膜下出血が起きるときにはどんな前兆があるのでしょうか? くも膜下出血の前兆や予防について、上田クリニックの上田先生に教えてもらいました。
≫【イラスト解説】「女性がくも膜下出血を発症する原因」監修医師:
上田 啓太(上田クリニック)
東邦大学医学部医学科卒業。その後、東邦大学医療センター 大森病院、東京蒲田医療センター、東邦大学医療センター佐倉病院などで脳神経外科医として勤務。2022年、神奈川県横浜市に位置する「上田クリニック」の院長に就任。難病指定医。日本脳神経外科学会専門医・指導医、日本脳卒中学会専門医・指導医、日本脳神経血管内治療学会専門医。日本頭痛学会、日本老年脳神経外科学会の各会員。
くも膜下出血とは?
編集部
くも膜下出血とはなんですか?
上田先生
くも膜下出血とは脳卒中の一種であり、文字通り、くも膜の下部で出血が起きることをいいます。「くも膜」とは脳を覆う膜のひとつで、くも膜と脳の空間をくも膜下腔といいます。その部分にある血管が切れて出血することを、くも膜下出血と呼びます。
編集部
脳卒中には、くも膜下出血のほかに何があるのですか?
上田先生
そのほかには脳梗塞、脳出血があります。そもそも脳卒中とは、急性期の脳血管障害のことをいい、突然脳の血管が詰まったり、破れたりする疾患の総称のことです。脳の血管が詰まってしまうタイプの脳卒中を脳梗塞といい、脳の血管が破れるタイプの脳卒中には、くも膜下出血と脳出血があります。
編集部
脳の血管が破れるタイプでも、くも膜下出血と脳出血は違うのですか?
上田先生
はい、脳出血は脳の内部にある比較的細い血管から出血する疾患のことをいいます。つまり、どちらも脳の血管が破れるのが原因となりますが、破れる場所が違うということです。脳卒中のうち最も多いのが脳梗塞であり、続いて脳出血、くも膜下出血となっています。
編集部
命のリスクなど、危険性はどれも同じですか?
上田先生
いいえ、もっとも死亡率が高いのはくも膜下出血と言われています。くも膜下出血は、脳の血管に異常があることが原因で起きることがほとんどです。その代表例に脳動脈瘤や脳動静脈奇形があり、これらは頭部MRI検査などで、事前に把握することができます。これらの存在を確認できれば、適切に対処することで命のリスクを軽減することができます。
くも膜下出血の初期症状
編集部
くも膜下出血にはどのような前兆があるのですか?
上田先生
基本的には、くも膜下出血は前兆がなく突然起きるとされています。以下は稀ではありますが、起きる可能性のある前兆の代表例です。血圧が激しく変動する
急に頭痛が起きる(警告頭痛)
視力が低下する(目の見え辛さを自覚する)
片側のまぶたが下がる
ものが二重に見える
めまいが起きる
繰り返す嘔吐と頭痛
意識が低下する
頭がモヤモヤしたり、ぼーっとしたりする
など
編集部
そのような前兆のあと、どれくらい経ったらくも膜下出血が起きるのですか?
上田先生
これらが前兆なのか、くも膜下出血の症状が軽度として現れているのかの判断は、症状からのみでは判断できません。先述の症状が出現した場合は、すぐに脳神経外科医のいる病院を受診するようにしてください。
編集部
とくに気をつけなければならない症状はなんですか?
上田先生
特徴的なのは、まぶたが下がったり、物が二重に見えたりする症状です。こういった症状は、動脈瘤のできる箇所や大きさによって、起こりうる可能性があります。ただし、このような典型的な症状が出現することは圧倒的に少ないのが実情です。そのほかの前兆は非典型的なものが多く、それだけで判断するのは難しいのです。
編集部
ほかに気をつけなければならないことはありますか?
上田先生
頭痛も注意が必要です。頭痛の程度は人それぞれで、まったく起こらない人もいますが、警告頭痛といって、くも膜下出血を起こす2週間以内に見られる頭痛があります。24時間以内がピークと言われています。
前兆が見られたらどうするのか?
編集部
前兆が起こったら、どうしたら良いのでしょうか?
上田先生
症状がすぐに治ったとしても、念のため、できるだけ早く受診することをお勧めします。くも膜下出血は死亡率が高く、一命を取り留めても後遺症が残ることもあります。前兆に気づき、その時点で対処すれば発症を防ぐことができるかもしれません。早めに医療機関を受診してください。
編集部
発症したらどうなるのですか?
上田先生
くも膜下出血の症状の特徴は、今まで経験したことがない激しい頭痛です。そのような頭痛が起きたら、迷わず救急車を呼んでください。
編集部
特にどのような人がくも膜下出血のリスクが高いのですか?
上田先生
最も強い因子として、家族歴があります。とくに両親や兄弟など血縁の近い方にくも膜下出血や脳動脈瘤が起こった患者さんは、検査をすることをお勧めします。そのほか、高血圧、喫煙が挙げられます。また男性に比べて、女性の方が発症率は高いこともわかっています。
編集部
いろいろなリスクファクターがあるのですね。
上田先生
はい。しかし、危険因子もなく、何も症状がない方でも定期的に脳ドックを受けるなど、予防に努めることが大切です。
編集部
くも膜下出血は、予防することができるのですか?
上田先生
はい。くも膜下出血はMRI検査で動脈瘤を発見し、破裂する前に治療できるという特徴があります。くも膜下出血は、脳梗塞や脳出血よりも死亡率が高い疾患ですが、「予防できる」という点でこれらの疾患とは大きく異なります。
編集部
発症前に発見することは、命を救うためにとても大切ですね。
上田先生
先述のように、くも膜下出血のリスクファクターは高血圧、喫煙、女性です。これらに当てはまる人は、できれば30代から、そうでない人も40代を超えたら、必ず一度は脳ドックを受けたり、脳神経外科を受診したりして、動脈瘤がないか見てもらいましょう。
編集部
最後にメッセージをお願いします。
上田先生
くも膜下出血は、動脈瘤が破裂することで起こります。裏返せば、動脈瘤があったとしても、破裂していない限り防げる、ということです。たとえば検査で進行がんが見つかった場合、すでに打つ手がなかったということもあるかもしれません。しかし、くも膜下出血の検査で「手遅れ」ということはありません。ぜひ、安心して脳神経外科を受診し、検査を受けてほしいと思います。
編集部まとめ
さまざまな前兆が起きるくも膜下出血。場合によっては頭痛がなかったり、軽度の場合もあったりしますが、おかしいなと思ったら、念のため脳神経外科を備えた病院を受診すると良いようです。
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