「大腸ポリープ」切除後の「コーヒー」はいつから飲める?術後の注意点も解説!
大腸ポリープ切除術では一般的に大腸内視鏡を使用します。小さなポリープであれば日帰りでの治療が可能です。
手術に比べて体への負担が少ない治療法ですが、ポリープ切除後はどのようなことに注意が必要なのでしょうか。
ここでは、大腸ポリープ切除後の食事や日常生活上の注意点などを解説します。
また、コーヒーを習慣的に飲んでいる人も術後の生活に注意が必要です。大腸ポリープ切除術を受ける予定の方はぜひ参考にしてください。
監修医師:
松井 信平(医師)
慶應義塾大学医学部卒業、慶應大学関連病院での修練後、慶應大学のスタッフへ就任、2023年4月よりがん研有明病院スタッフ勤務。専門は消化器外科・大腸がん。
大腸ポリープとは
大腸ポリープとは大腸の粘膜がイボのように盛り上がってできたものを指し、腫瘍性と非腫瘍性の大きく2種類に分けられます。
1つ目の腫瘍性ポリープには、がん(悪性腫瘍)と腺腫(良性腫瘍)があります。腺腫は時間の経過とともにがん化する可能性があるため、初期段階での治療が必要です。
2つ目の非腫瘍性ポリープには炎症性ポリープと過形成性ポリープ、過誤腫性ポリープの3種類があります。非腫瘍性ポリープのがん化はまれで、一般的に治療の対象となるのは腫瘍性ポリープのみです。肛門の近くにポリープができた場合、便に血液や粘液が付着することがあります。
大腸ポリープ切除後のコーヒーはいつから?
大腸ポリープ切除後、1週間はコーヒーを飲むのを控えましょう。ポリープを切除した部分からの出血や腸穿孔(大腸の壁に穴が開くこと)などの合併症は、治療後1週間以内に起こるといわれています。そのため1週間は消化のよいものを食べ、コーヒーや香辛料などの刺激物は控えるようにしましょう。
また、腹痛や血便などの症状がみられた場合は早急にかかりつけの病院で受診しましょう。合併症を引き起こしている場合には追加の処置や手術が必要になります。
大腸ポリープ切除後の食事メニュー
大腸ポリープを切除した後1週間は、食事の内容に注意が必要です。ここでは、ポリープ切除術後の食事のポイントを5つご紹介します。
消化のよい物を摂取する
排便の際に強くいきむと、ポリープを切除した部分から出血する可能性があります。治療後1週間は消化のよい食事を心がけ、いきまなくても排便できるようにしましょう。
消化のよい食べものは、鶏肉(皮なし)・白身魚・豆腐・卵・ヨーグルトなどがあります。食事のメニューに悩んだ場合は、かかりつけの病院に相談してください。
アルコールは控える
アルコールの摂取によって血流が促進、かつ止血機能が低下するためポリープを切除した部分からの出血リスクが高まります。治療後1週間は飲酒を避けましょう。
下血などの症状がみられた場合には安静や止血処置が必要になります。出血がみられた場合、飲酒などの再開時期はあらためて主治医に確認しましょう。
辛い物・冷たい物は避ける
下痢を起こすと腸内の圧力が上がり、出血リスクが高まります。原因となりうる香辛料の使用は香りづけ程度にし、冷たいもの(アイスクリームなど)は極力避けることが必要です。
また、排便があるたびに便の性状(血液の付着の有無など)を確認しましょう。合併症の早期発見につながります。
脂っこいものは控える
脂肪の多い肉(ベーコンやバラ肉など)や魚(ブリやサバ、サンマなど)は消化に時間がかかるため、消化管に負担がかかります。治療後1週間は、脂肪の少ないささみやヒレ肉、白身魚(タイやカレイ、タラなど)がおすすめです。
なま物は避ける
大腸ポリープ切除後1週間はなまの食べ物を避けましょう。刺身などは消化に時間がかかり、大腸に負担がかかるためです。
また、加熱せずに食べるためウイルスや細菌に感染し、下痢を引き起こすリスクもあります。下痢を起こすと切除部位からの出血のリスクが高くなるため、なま物は控えましょう。
大腸ポリープの術後の注意点
大腸ポリープ切除後は、出血や腸穿孔の兆候に注意しながら生活を送る必要があります。具体的にはどのようなことに気を付ければよいのでしょうか。ここでは5つご紹介します。
旅行・出張は控える
治療の際にポリープの根元を深く切除することで、出血や腸穿孔などの合併症発生のリスクがあります。症状は下血や腹痛などです。
多くは治療の際に発見されますが、治療後数日経ってから症状がみられる場合があります。すぐに受診できるよう、治療後1週間は旅行や出張を控えましょう。飛行機移動による気圧の変化は出血のリスクにもつながります。
入浴・サウナは避ける
入浴やサウナによって血流がよくなると、ポリープを切除した部分から出血するリスクが高くなります。治療後1週間はシャワー浴のみとし、入浴やサウナは控えましょう。
血が止まりにくくなる薬を内服中であれば休薬について主治医と相談する
ほかの持病に対して内服治療を行っている場合は注意が必要です。
特に、血が止まりにくくなる薬はポリープ切除部位からの出血リスクにつながります。血が止まりにくくなる薬の代表例は抗凝固薬(ワーファリンやリクシアナなど)や抗血小板薬(プレタールやエパデール、オパルモンなど)です。
また、消炎鎮痛剤(痛み止めや解熱剤、かぜ薬など)にも抗血小板薬と同じはたらきをするものがあるため、注意が必要です。内服薬の種類によっては休薬が必要になるため、必ず治療を受ける前に担当の医師に確認しましょう。
運動・自転車の運転を控える
ポリープを切除した部分に圧がかかって出血を引き起こすリスクがあります。治療後1週間は激しい運動や自転車の運転を控えましょう。運動の内容によっては制限がない場合もあります。日常的に行っている運動習慣があれば、担当の医師に確認してみましょう。
出血がある場合は医師に相談する
ポリープを切除した部分から出血がみられた場合には、緊急で止血の処置や手術を行います。具体的には出血部位をクリップ留めたり、腸穿孔がみられる場合には手術が必要です。
便に血液が付着している、腹痛などの症状があればすぐに治療を受けた病院へ連絡してください。治療後は毎回便の性状を確認してから流すように心がけましょう。
大腸ポリープ切除後のコーヒーについてよくある質問
ここまで大腸ポリープ切除後の食事や日常生活の注意点などを紹介しました。ここでは「大腸ポリープ切除後のコーヒー」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸ポリープの原因・できやすい人を教えてください。
松井 信平 医師
大腸ポリープの原因は、生活習慣や遺伝子異常です。大腸の粘膜に遺伝子異常が生じることで細胞が増殖し、ポリープを形成します。家族のなかに大腸がん、もしくは家族性大腸腺腫症を患った方がいる場合、ご自身も発症リスクが高まります。また飲酒や喫煙、偏った食生活(高脂肪・低繊維質)は大腸がんの危険因子です。心当たりのある方は生活習慣を見直し、がんの予防に努めましょう。加齢によってがんやポリープ形成のリスクが上がるため、50歳以上の方は定期的に検査を受けることをおすすめします。
大腸ポリープ切除の流れを教えてください。
松井 信平 医師
前日の昼と夜は脂肪や繊維質の少ない食事を摂ります。前日の夜寝る前と、当日の朝に下剤を内服し排便を促します。大腸ポリープ切除術の種類は以下のとおりです。ポリペクトミー:根元のくびれた部分に金属製の輪をかけ、絞るもしくは電流を流して切り取る
EMR(内視鏡的粘膜切除術):平坦なポリープの根元に生理食塩水などを注入して持ち上げ、金属製の輪をかけて切り取る
ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術):ポリープの根元に生理食塩水などを注入して持ち上げた後、電気メスで周囲の粘膜を切開し、少しずつ剥がすようにして切除する
小さいポリープであれば日帰りで行えますが、大きさによっては前日に入院し、翌日出血がないことを確認してから退院となる場合もあります。また、大腸の粘膜を大きく・深く切除した場合は出血や腸穿孔のリスクが高いため、数日から1週間程入院して合併症の有無を確認する場合もあります。
編集部まとめ
腫瘍性ポリープは大腸がんのリスクがあるため、早期に治療を受けることが大切です。
大腸ポリープ切除術には3種類あり、ポリープの大きさによって切除方法や入院の必要性の有無も異なります。
ポリープを切除した後は、出血や腸穿孔の症状に注意しながら生活します。
治療後は便の性状や腹痛の有無や程度に気を付けて生活し、出血などの症状があれば早急に病院を受診しましょう。
腸穿孔を起こしている場合は手術が必要になります。
また、治療後1週間は消化のよい食事を心がけ、入浴や激しい運動、飲酒は控えましょう。
腸粘膜への刺激を避けるためにコーヒーや香辛料などの刺激物も避ける必要があります。
施設の方針や切除した方法によって制限の程度や期間は異なるため、担当の医師に確認してみましょう。
大腸ポリープと関連する病気
「大腸ポリープ」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
大腸がん家族性大腸腺腫症大腸ポリポーシス
潰瘍性大腸炎クローン病腺腫であっても時間の経過とともにがん化するリスクがあります。自覚症状がなくても、検診などで指摘を受けた場合は早期に治療を受けましょう。小さいポリープであれば日帰りで治療を受けることができ、合併症のリスクも低くなります。
大腸ポリープと関連する症状
「大腸ポリープ」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
便に血液が付着している
便に粘液のようなものが付着している
便が出にくい・出ない
便が細い
腹部膨満感(お腹が張る)
腹痛小さなポリープでは自覚症状がない場合が多く、検診などで発見されます。しかし便自体や便通に異常がみられる場合はポリープが大きくなっている、もしくはがん化している可能性があります。上記のような症状がみられた場合は早めに病院で検査を受けましょう。
参考文献
大腸ポリープとはどんな病気ですか?(日本消化器内視鏡学会)
3.2)大腸内視鏡検査と治療(日本消化器内視鏡学会)
大腸腫瘍の内視鏡治療(日本大腸肛門病学会)