熱中症対策のドリンクは「スポーツドリンク」「経口補水液」どちらがいい? 医師が解説

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暑さが本格化してきて、すでに熱中症対策している人が多いと思います。しかし、「熱中症予防の飲み物って結局どれがいいのかわからない」「熱中症になった時と予防するための飲み物は違うの?」「熱中症対策の飲み物って自分で作れる?」などと、疑問を抱いている人もいるのではないでしょうか。そこで、熱中症の飲み物や今からできる熱中症予防について「SUGAR」の佐藤先生に回答してもらいました。

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監修医師:
佐藤 将人(SUGAR LLC)

「健康的に豊かに生きる」を理念に人的資本経営コンサルティングを手がける企業SUGAR代表医師。宮城県仙台市を拠点に、社員の心身のメンテナンスや企業の組織運営などの経営を支援する事業を展開。医学の知見を生かし肉体改造してシックスパックを達成、精神心理的知見からメタ認知的活動に従事。東北大学医学部医学科卒業、日本医師会認定産業医、中小企業診断士、労働衛生コンサルタント、日本肝臓学会専門医、日本外科学会専門医、スポーツドクター、仙台市食育推進会議委員。

熱中症予防におすすめの飲み物は? 経口補水液は熱中症予防にはダメ?

編集部

はじめに、熱中症予防におすすめの飲み物について教えてください。

佐藤先生

熱中症予防対策の水分補給としておすすめなのが、「0.1~0.2%の塩分を含む飲み物」です。これは、汗で失われる塩分と水分の割合が同じ程度という理由からです(※汗の塩分の濃度は環境や個人によって大きく異なる場合があります)。暑い環境で体を動かして汗をかくような人は、水分と塩分を補給するために塩分の濃度がナトリウム40~80mg/100ml、または、0.1~0.2%の食塩水の成分で、スポーツドリンクに近い飲み物がおすすめとされています。

※厚生労働省熱中症予防情報サイト「職場の熱中症予防に努めましょう!」
https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/ic_rma/2301/mat05_3.pdf

編集部

あまり汗をかかないという人についてはどうでしょう?

佐藤先生

涼しい環境で汗をあまりかかないという人の場合には、そこまで塩分を失わず塩分補給が不要な場合が多いため、塩分をほとんど含まない水や麦茶などがおすすめです。また、最近では周知の事実になってきていますが、コーヒーや緑茶、紅茶などカフェインを含む飲み物は、利尿作用によって脱水になってしまうので水分補給としてはおすすめできません。

編集部

スポーツドリンクの成分に近い飲み物がおすすめとのことですが、熱中症予防として経口補水液はダメなのですか?

佐藤先生

熱中症予防の飲み物として経口補水液はダメではないのですが、一番におすすめというわけでもありません。理由としては、経口補水液は熱中症予防するために必要とされている濃度の1.5~2倍の塩分の濃度で少し濃いためです。高血圧の人は血圧が高くなってしまう可能性もあるため注意が必要です。熱中症予防として経口補水液を飲むなら水で半分に薄めて飲むとちょうどいい場合が多いですね。

編集部

経口補水液を原液のまま薄めずに飲むのはよくないのですか?

佐藤先生

熱中症の前兆や症状などがなく、元気な人の場合には薄めて飲んだほうがいいケースが多いと思います。しかし、熱中症になりかけだったり熱中症が疑われたりする時には、薄めず原液のまま飲むのがおすすめです。理由は、先ほどお伝えしたように経口補水液は塩分の濃度が高いため熱中症や脱水症が疑われる人の水分補給に適した塩分濃度のためです。ただ、経口補水液は飲むだけで熱中症や脱水症になりかけている症状が治る万能アイテムではないので、通気性と透湿性がよく涼しい環境で、脇や股関節などの血管が近い部分を冷やしながら、できれば横になってしっかり休むことも重要です。

熱中症対策の飲み物は自分で作れる? おすすめの作り方を産業医が紹介

編集部

熱中症予防のための飲み物はたくさんあって選べないのですが、いっそのこと自分で作ることもできるのでしょうか?

佐藤先生

はい。熱中症対策の飲料水は簡単に自家製できます!

編集部

熱中症対策の飲み物を自分で作る場合のレシピを教えてください。

佐藤先生

前述の通り、塩分を補給するなら0.1~0.2%の食塩水がおすすめなので、最初に0.1~0.2%の食塩水を作ります。0.1~0.2%の食塩水を作る手順は、水1リットルに対して食塩を1~2g入れるだけです。塩を計量するのが面倒な人は1gに包装されている塩などを使うと簡単に作れます。また、糖分を加える場合、糖質3%で調整するなら0.1~0.2%の食塩水1リットルに対してスティックシュガー10本分の30gの砂糖を入れるだけで簡単に作れます。

編集部

塩砂糖水という感じで物足りなそうな感じもしますね。味とか風味とかをもう少し工夫することはできますか?

佐藤先生

味や風味、フレーバーなどが欲しい人は麦茶やレモン水をベースに作るのも一つの手ですね。また、シュワシュワっとした喉ごし感が欲しい人は炭酸水を元に作るとさまざまなバリエーションができるので、好みに合わせてアレンジしてみてください。

糖尿病や血糖値が気になる人向けの熱中症対策にスポーツドリンクはダメ?

編集部

塩分濃度などについてはよくわかりました! では、熱中症対策としての飲み物の糖分についても目安や注意点などもあるのでしょうか?

佐藤先生

熱中症予防の飲料水に含まれる糖分の目安としては、腸が水分や塩分を吸収しやすいように糖質3~8%(3~8g/100ml)が良いと言われています。ちなみに、各メーカーのスポーツドリンクには約2~6%、経口補水液には約2%の糖質が含まれています。

※日本スポーツ振興センター「競技者のための暑熱対策ガイドブック」
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/resources/jiss/jigyou/pdf/shonetsu_2-23pp.pdf

編集部

糖尿病や血糖値が高い人、気になる人でも糖質3~8%くらいがいいのでしょうか?

佐藤先生

糖尿病や血糖値が高くて気になる人には、糖質3~8%だと糖分が多すぎて血糖値が高くなり、喉が渇いたり体がだるくなったり突然の昏睡状態になってしまったりすることもあるペットボトル症候群に陥るリスクがあります。そのため、血糖値が高めの人は熱中症予防の飲み物の糖質を控えめに1~3%、場合によっては糖質ゼロの飲み物で水分補給したほうがいい場合もあります。糖尿病の方は、前述の自家製熱中症予防ドリンクを作る時も、糖分を控える際は、食塩水1リットルに対してスティックシュガー1~7本、砂糖3~21gに減量して糖質0.3~2.1%に調整してみてください。

編集部

糖質が少なめの飲み物で熱中症予防するとなると、糖尿病や血糖値が高い人は水分や塩分の吸収が遅くなってしまうのではないでしょうか?

佐藤先生

その通りです。糖尿病の人は水分や塩分の補給に時間がかかる場合があるので熱中症になるリスクが高くなっています。その他、血糖値が高い状態そのものも熱中症や脱水症のリスクの一つなので、糖尿病の人はそもそも暑い環境下で作業しない、もしくは、暑熱下で連続した作業をしないように休憩頻度をより短くするなどの健康管理をすることも大切です。

編集部まとめ

熱中症予防対策の飲み物は、水1リットルに塩分1~2gと糖質30gを目安に調整すると手作りできるとのことでした。熱中症予防目的には、塩分0.1~0.2%と糖質3~8%の飲み物だと水分・塩分の補給に最適とされています。ただし、涼しく快適な環境で汗をあまりかかない方には、塩分やカフェインを含まない水や麦茶がおすすめです。また、糖尿病や血糖値が高めの人は暑熱下での作業時間短縮などの健康管理もおこない、糖質の取り過ぎに気を付けて水分補給し、熱中症を予防してください。

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