元自衛官の女性が定年後、“BL専門”の漫画喫茶を開業したワケ「男性どうしが自由に愛しあえる世の中に」
50歳を過ぎてからの転職は、強い勇気と決断力が必要だ。特に前職とはまるで異なる業種の場合、新しい世界へ飛び込むのを躊躇してしまう人も多いだろう。
今年(2024)1月に「ボーイズラブ(BL)専門」というユニークな漫画喫茶を開いたとぢこさん(55歳)は、元自衛官という異色の経歴を持つ。31年にわたり自衛隊を定年まで勤め上げ、退職金を元手に起業したのだ。自衛官からBLの世界への大胆なジョブチェンジをした彼女を待っていたのは、果たして薔薇色の日々だったのか。ウワサのお店を訪ねた。
◆6200冊ものBL漫画がぎっしり
メイドカフェや美少女フィギュアの店が軒を連ね、「西の秋葉原」の異名をとる大阪の日本橋(にっぽんばし)。メインストリートは「オタロード」と呼ばれ、春には日本最大級のコスプレイベントも開催される。
そんなオタクの聖地にそびえる年季が入ったマンションに1月29日、『BL漫画喫茶 ぢゅあん』がオープンした。40平米の部屋に現在6,200冊強のBL漫画がぎっしりと並んでいる。
「定期的に東京へ行って、書店や同人誌即売会で一度に200冊は購入するので、まだまだ増えますよ」
ぢゅあん店長のとぢこさんは、そう語る。これらの蔵書はなんと、すべてが「私のコレクション」だというから恐れ入る。彼女の目利きの確かさにはファンも多く、遠く宮城県から訪れるBLオタクもいるのだそうだ。
◆人気は「男性が妊娠するオメガバース系」
冊数の多さのみならず、カテゴリーの多彩さも目を見張る。BLに門外漢な筆者は、男性どうしが背徳の恋愛をする物語ばかりだと色眼鏡で見ていたのである。
「BLって実はジャンルが豊富なんです。異世界転生ものや、しっぽが生えている獣人ものなどファンタジー要素を含んだ作品もあるし、アニメ化された『ただいま、おかえり』のようにハートフルなホームドラマもあります。最近人気なのは男性が妊娠して子育てをする“オメガバース”系。漫画喫茶を開くことで、BLといえば性的な漫画だという先入観を払拭したかった気持ちはありますね」
◆性別関係なく読んでほしいから腐女子ではなく「腐民」
もう一つ、ぢゅあんの画期的な点は、性別による入店規制がないこと。現在日本に数店あるBL漫画喫茶は基本、女性のための店なのだ。
「女子と男子のカップルもいらっしゃいます。私、“腐女子”という言葉が好きじゃないんです。BLは女が読むものだと決めつけている気がして。私は異性の友人の8割がゲイですし、性別の区切りを設けたくないんです。それに、うちには18禁が一冊もないので年齢制限もありません。成人向けのハードな漫画は、私が一人で電子書籍を楽しんでいます(笑)」
年齢や性別の制限なく、誰もが楽しめる場所としてBL漫画喫茶を開いた彼女。つけたキャッチフレーズは「大阪腐民の森」だ。
◆「なぜ男どうしの恋愛は不幸にならなきゃいけないの?」
とぢこさんのBLへの目覚めは、小学生時代にまでさかのぼる。
「小学3年生から腐民でした。友達の家にあった竹宮恵子先生の『風と木の詩』と山岸涼子先生の『日出処(ひいづるところ)の天子』を読んで衝撃を受けたのがBLに興味を抱いたきっかけです。それ以来、“耽美派”(たんびは)と呼ばれた少年愛の要素がある漫画を読み漁るようになりました。“やおい”という言葉もまだない時代でしたね」
日出処の天子を愛するあまり、法隆寺に何度も通っては男性どうしのランデブーに想い巡らせた。おかげで飛鳥時代限定だが、日本の歴史にとても詳しくなったという。さらに女性向けの男性同性愛専門誌『ALLAN』(アラン)や『JUNE』(ジュネ)にも触手を伸ばしているから早熟である。
今年(2024)1月に「ボーイズラブ(BL)専門」というユニークな漫画喫茶を開いたとぢこさん(55歳)は、元自衛官という異色の経歴を持つ。31年にわたり自衛隊を定年まで勤め上げ、退職金を元手に起業したのだ。自衛官からBLの世界への大胆なジョブチェンジをした彼女を待っていたのは、果たして薔薇色の日々だったのか。ウワサのお店を訪ねた。
メイドカフェや美少女フィギュアの店が軒を連ね、「西の秋葉原」の異名をとる大阪の日本橋(にっぽんばし)。メインストリートは「オタロード」と呼ばれ、春には日本最大級のコスプレイベントも開催される。
そんなオタクの聖地にそびえる年季が入ったマンションに1月29日、『BL漫画喫茶 ぢゅあん』がオープンした。40平米の部屋に現在6,200冊強のBL漫画がぎっしりと並んでいる。
「定期的に東京へ行って、書店や同人誌即売会で一度に200冊は購入するので、まだまだ増えますよ」
ぢゅあん店長のとぢこさんは、そう語る。これらの蔵書はなんと、すべてが「私のコレクション」だというから恐れ入る。彼女の目利きの確かさにはファンも多く、遠く宮城県から訪れるBLオタクもいるのだそうだ。
◆人気は「男性が妊娠するオメガバース系」
冊数の多さのみならず、カテゴリーの多彩さも目を見張る。BLに門外漢な筆者は、男性どうしが背徳の恋愛をする物語ばかりだと色眼鏡で見ていたのである。
「BLって実はジャンルが豊富なんです。異世界転生ものや、しっぽが生えている獣人ものなどファンタジー要素を含んだ作品もあるし、アニメ化された『ただいま、おかえり』のようにハートフルなホームドラマもあります。最近人気なのは男性が妊娠して子育てをする“オメガバース”系。漫画喫茶を開くことで、BLといえば性的な漫画だという先入観を払拭したかった気持ちはありますね」
◆性別関係なく読んでほしいから腐女子ではなく「腐民」
もう一つ、ぢゅあんの画期的な点は、性別による入店規制がないこと。現在日本に数店あるBL漫画喫茶は基本、女性のための店なのだ。
「女子と男子のカップルもいらっしゃいます。私、“腐女子”という言葉が好きじゃないんです。BLは女が読むものだと決めつけている気がして。私は異性の友人の8割がゲイですし、性別の区切りを設けたくないんです。それに、うちには18禁が一冊もないので年齢制限もありません。成人向けのハードな漫画は、私が一人で電子書籍を楽しんでいます(笑)」
年齢や性別の制限なく、誰もが楽しめる場所としてBL漫画喫茶を開いた彼女。つけたキャッチフレーズは「大阪腐民の森」だ。
◆「なぜ男どうしの恋愛は不幸にならなきゃいけないの?」
とぢこさんのBLへの目覚めは、小学生時代にまでさかのぼる。
「小学3年生から腐民でした。友達の家にあった竹宮恵子先生の『風と木の詩』と山岸涼子先生の『日出処(ひいづるところ)の天子』を読んで衝撃を受けたのがBLに興味を抱いたきっかけです。それ以来、“耽美派”(たんびは)と呼ばれた少年愛の要素がある漫画を読み漁るようになりました。“やおい”という言葉もまだない時代でしたね」
日出処の天子を愛するあまり、法隆寺に何度も通っては男性どうしのランデブーに想い巡らせた。おかげで飛鳥時代限定だが、日本の歴史にとても詳しくなったという。さらに女性向けの男性同性愛専門誌『ALLAN』(アラン)や『JUNE』(ジュネ)にも触手を伸ばしているから早熟である。