中国・BYDや韓国・ヒョンデがEVメーカーとして日本に上陸

自動車大国といえば以前はアメリカ、日本、ドイツの3カ国が国別の生産台数でトップ3を占めていましたが、現在はそこに中国が加わり、さらに圧倒的な差でこの3カ国を上回るようになりました。

中国が生産台数を急激に伸ばした理由には、バッテリーEVの存在があります。その主要なメーカーは、2023年から日本でもEV販売を開始したBYDです。現在はテスラに次ぐ世界2位のEVメーカーとなり、トヨタも協業を発表するなどトピックが絶えません。

また、中国だけでなくインドや韓国といったアジアの自動車メーカーもすでに生産台数でドイツを上回るようになり、特に韓国の自動車メーカーであるヒュンダイあらためヒョンデは、日本からは一度撤退したものの、新型EVでふたたび日本市場へ参入。

BYDは日本市場へ「ATTO 3」「ドルフィン」の2モデルを投入しており、セダンタイプの「シール」も発売を予定済み。ヒョンデも「アイオニック」シリーズを中心に、「コナ」「ネクソ(FCEV)」を日本で展開しています。

印象的なブランディングや価格・実用性で普及狙うが販売台数は?

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BYD、ヒョンデともに日本参入時には自動車ジャーナリスト等などから「黒船」とも称され、日本の自動車メーカーにとって大きな脅威になるとも言われていました。しかし、2023年の両社の販売台数は、BYDが1,446台、ヒョンデが487台。トヨタ ヤリス(シリーズ)が1日で平均約530台販売されているため、この数値はとても低いように見えます。

しかし、日本は、新車販売される車のうち、輸入車のシェアは10%未満、さらにバッテリーEVのシェアは1%台であるため、主にバッテリーEVを展開するBYD、ヒョンデの2社が狙う日本の市場規模は大きくなく、両社の日本法人は日本参入初年度の結果について良い感触があったという見解を示しています。

また、BYDは普通車のバッテリーEVを実質200円台という低価格で販売し、広告にも人気女優の長澤まさみさんを起用。全国に正規ディーラー店舗も続々とオープンさせており、着実に日本での販売網を築こうとしていることがわかります。

ヒョンデもアイオニック5のハイパフォーマンスモデルである「アイオニック5 N」のプロモーションに“ドリキン”こと土屋圭市氏を起用し、そのパフォーマンスをアピールするなど、実用性や経済性だけではなく“走り”の面でも訴求。

狭い市場ながら、その中で確実にシェアを取り、市場を成長させていくために取り組んでいることがうかがい知れます。

ネットでは「走る棺桶」「走る火葬場」などの声…

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日本のニュースサイトやSNSではこれらの2社に関してユーザーからの否定的な意見などがつくことが珍しくありません。中国や韓国はいずれも日本への対立的姿勢が強いとされており、ときには「反日活動」などとして日本製品の不買や破壊が行われることもあったため、そのような国の製品を利用することに不快感や不安感を抱く人が多いとみられています。

また、国と国の関係性ではなく、車としての安全性等に不安を持っている人も、SNS等では多いようです。中国のメーカーの製品については「燃える」「爆発する」「スパイに使われる」といった印象を持つ人が一定数いることは事実ですが、これがそのまま車の印象にも反映されているようです。

実際に中国ではBYDのショールームや工場での火災が報じられており、車が原因ではないとしながらも疑惑の目が向けられているなど、前述の印象を持った人の不安を拭い去るにはさらなる安全性のアピールが必要となるかもしれません。

ヒョンデも同様に、韓国国内の高速道路で発生したアイオニック5の炎上事故が「バッテリーの熱暴走が原因」と推測されており、加えて料金所の側壁に衝突後、3秒で車が炎に包まれたというセンセーショナルさから、「走る棺桶」「動く火葬場」といった批判が寄せられるように。

こうした車に対する不安感と、国と国の関係性が組み合わさり、SNS等ではこうした中国・韓国のメーカーの車は“叩かれる”傾向にあります。

実際の購入者は不安を感じていない?

しかし、中国・韓国メーカーのバッテリーEVをすべての人が否定的に思っているわけではなく、実際にはすでに国内の道路でも走っている姿が見られるようになりました。

日本国内で購入することができるバッテリーEVは現在20メーカー以上、40モデル以上。バッテリーEVはガソリンエンジン搭載モデルに比べ価格が高い傾向にあるのですが、その中でヒョンデやBYDのバッテリーEVは比較的リーズナブルな価格帯であり、特にBYDは実質販売価格は魅力のひとつとなっています。

実際にバッテリーEVの購入を検討している人の中には、BYDやヒョンデのバッテリーEVが候補に含まれているという人も少なくなく、前述の懸念点についてはいずれも現在は生産台数が多いメーカーとなったことから信頼性に問題はないという声も聞こえました。心配に思う点についてはリセールバリューを挙げる人が多かったものの、これはバッテリーEV全体の課題だと言えます。

バッテリーEVにはさまざまな課題や問題がまだあると言える状況ではあるものの、それらが解決しバッテリーEVが普及すれば、こうした中国・韓国メーカーのバッテリーEVが走る姿も日本の道路では当たり前に見られる光景になるのかもしれません。