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 街の不動産屋さんといえば、地元の物件情報と同時に、地域の美味しいものに一番詳しい情報屋。そんな駅前不動産屋さんに聞いた、絶対ハズさない美味しいお店をご紹介します。今回の駅前不動産屋さんは西武池袋線・江古田駅前の不動産屋さん。そこに務める山田智昭さん(仮名)が激推しするお店に行ってきました。

 西武池袋線で池袋駅から3つ目の江古田駅。

「この駅には、日本大学芸術学部をはじめ、武蔵音楽大学、武蔵大学があるので、学生が多い街です。だから、一人暮らし向けのアパート、マンションがたくさんあります。同様に、飲食店も学生たちが入りやすい定食屋、ラーメン屋、居酒屋などが多く、しかもリーズナブルなお店が多いんです。そして安いだけじゃありません。学生たちは社会人になってもわざわざ江古田に食べに来る、そんな美味しい店がたくさんあるんですよ」(山田さん)

 今回はその中でも、山田さんご自身が週に何度も通っているという、とっておきのお店を紹介してくれました。

 それは、江古田駅から徒歩約10分の場所にある『福貫』という海鮮丼専門店。山田さん曰く、「海鮮というと高いイメージがありますが、福貫さんは比較的手頃なお値段で食べられる丼専門店。私はいつも一番安い1100円の『ぜっぴん丼』を食べています。めちゃくちゃ美味しいので、ぜひ食べに行ってみてください」とのこと。

 早速、とある平日の昼時に訪れてみると、江古田通りと目白通りの交差点近くに、行列ができているお店があり、まさにそれが目指す『福貫』さんでした。

都営大江戸線『新江古田』駅A2出口からすぐ

 漁港や市場の近くならいざ知らず、こんな街中に“海鮮丼専門店”というのは、ちょっと珍しいかもしれませんが、実はここのご主人、元水産仲卸の代表をされていた方なんだそうです。なんでも自ら海鮮丼を作って家族に振る舞うと喜ぶので、ぜひ街の方にも食べて欲しいと、ここを始められたんだとか。

 ではさっそくメニューを紹介しましょう。

『福貫』の海鮮丼のメニュー

 ここの基本メニューは「ぜっぴん丼」。この丼はネタによって「梅」(1100円)、「華」(1600円)、「桜」(2000円)の3種類があります。

 この他、ちらし風の贅沢丼(2000円)や日替わりの目利き丼(1600円、2500円)などもあります。今回は山田さんがお勧めしてくれた「ぜっぴん丼・梅」(1100円)を食べてみることに。

「ぜっぴん丼・梅」1100円。ネタ増量も可能で、その場合はプラス800円。またごはんの盛りも変更OK

「ぜっぴん丼・梅」のネタは9種類。まぐろ、中落ち、いくら、数の子、自家製玉子焼き、みる貝、釜揚げしらす、出汁漬けあさり、きゅうりです。

 見ただけで、これらのネタが超新鮮なことがわかります。マグロ、中落ちの美しい色あい。そして海風が吹き抜けるような爽やかな香り。食べてみれば、魚の脂の乗りといい、旨味といい、正直、醤油やワサビなしでも味わい深く、思わず唸ってしまいました。

 ネタの新鮮さだけではありません。出汁漬けのあさり、自家製の卵焼きなどの手のかかったネタもまさに絶品。1つ1つのネタを口に運ぶたびに、目を閉じたくなるほどの美味しさなのです。

 そして、ごはんが旨いのなんの! 米粒がつやつやと光り、みずみずしく、噛むたびに甘みと旨みが押し寄せてくる……もう、箸も感動も止まりません。

 ごはんとネタが美味しすぎて、あっという間に丼を空けてしまいそうになりますが、ここでグッと我慢しましょう。というのも、最初に丼が出されたときに、ご主人が「少し残しておいてください。あとで出汁茶漬けにします」と言っていたからです。そう、ここではまず海鮮丼を楽しみ、その後、海鮮出汁茶漬けにして楽しむのが流儀なのです。

卓上にある「出汁用自家製おかか」。お好みでふりかけて出汁茶漬けを楽しむ

 ごはんやネタを少し残しておいて、「お出汁をお願いします」とご主人にコールすると、ご主人が丼にお出汁を入れてくれます。受け取ったら、レンゲでそのままいただいてもいいですが、卓上にある「出汁用自家製おかか」を少し入れるとさらに美味しくなります。

「ぜっぴん丼・梅」を出汁茶漬けに

 この出汁茶漬けが、これまた絶品すぎるほどの絶品。出汁が滋味深く、サラサラになったご飯もいい。そして、残しておいた刺し身にほんのり熱が入るのがまた良いのです。変化した食感と味わいは最高のひと言。ほっこりして、心までぬくぬくと温まっていくような、そんな出汁茶漬けなのです。

 というわけで、『福貫』の「ぜっぴん丼」は、海鮮丼としても出汁茶漬けとしても絶品。まさに一度で二度美味しい絶品丼ぶりでした。

 ちなみに筆者は不動産屋さんにここを紹介されて以来、あまりの美味しさに3度も福貫さんを訪問しています。

「6種の日替わり目利き丼」。ネタはイカや真鯵、鯛などが載っています

 例えば、別の日は「6種の日替わり目利き丼」(1600円)を食べました。またある日には「8種の日替わり目利き丼」(2500円)を。

「8種の日替わり目利き丼」

 このように値段によってネタの種類、量が違ってきますが、どれを食べても確実に美味しい。そして、毎回訪れても感動が変わることがありませんでした。江古田を訪れる機会があれば、ぜひ味わってみてください。

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

店名:福貫

住:東京都練馬区豊玉北1-6-13
TEL:03-6914-5587
営:11:30~14:00、17:00~22:00(売り切れの場合は閉店)
休:不定休(お店に確認をしてください)